新車購入から35年。一生添い遂げるつもりで手に入れたRX-7(FC3S)との濃密なカーライフ

  • マツダ・RX-7(FC3S)

「このクルマは、僕がずっと乗り続けよう」

そう決意し、サバンナRX-7(FC3S)を新車で迎え入れてから、35年の歳月が過ぎたという金子さん。
購入以前から旧車やクラシックカーが大好きで、イベントに参加したり雑誌を読み漁ったりするうちに『1台のクルマに乗り続け、そのクルマと共に年を重ねていくオーナー』に憧れを抱くようになったそうだ。

  • マツダ・RX-7(FC3S)の左テールランプ
  • マツダ・RX-7(FC3S)の右テールランプ

「自分と同様に、愛車も一緒にクラシックカーになっていく。そういうカーライフがとても素敵だなと思ったんです。そう感じ始めた頃に、このFCに出会いました。

何が良かったって?
答えは単純で、“一目惚れ”です。

なぜFCなのか? どこがいいのか? 理由は色々ありますがすべては後付けになってしまうので『好きになってしまったから』としか言えないような…。恋に落ちてしまったという表現がいちばんしっくりくると思います(笑)。」

  • マツダ・RX-7(FC3S)の左サイド
  • マツダ・RX-7(FC3S)のリトラクタブルヘッドライト
  • マツダ・RX-7(FC3S)のフェンダーライン

現在のクルマには見られなくなったリトラクタブルヘッドランプ、グラマラスなブリスターフェンダー、前期型の特徴であるウエストライン。
加えて、ボディをぐるりと一周している黒いモールがキリリとした印象を与え、極上の味わいを醸し出しているという。

「スポーツカーを今から運転するぞ! というように、気持ちを高ぶらせてくれるステアリング、シフトノブ、ペダル、メーターなどの造形や配置、これがすごく良いんです。

そして特に気に入っているのがクラスタースイッチ。ウインカー、ヘッドランプ、ワイパー、ハザード、リアデフォッガーなどのスイッチ類が、すべてメータークラスターに設置されていて、とても使いやすいんです」

  • マツダ・RX-7(FC3S)の運転席
  • マツダ・RX-7(FC3S)のシフトノブ
  • マツダ・RX-7(FC3S)のドア内側

ちなみに金子さんがこれほど愛してやまないRX-7の存在を知ることになったのは、もともとポルシェが欲しいと思っていた金子さんに、知人が教えてくれたある情報がキッカケだったという。

マツダ車に乗っていた友人から、アメリカではRX-7が“プアマンズポルシェ”と呼ばれているのだと聞いたんです。それでRX-7に興味を持つようになって、さっそくFCの試乗に行って走らせてみると『自分が乗りたかったのはこういうクルマだ!』と、一気に魅了されてしまいました」

現代のスポーツカーと比べるとパワー的には物足りなさを感じてしまうところもあるというが、スムーズな吹け上がりの気持ちよさはロータリーエンジンならでは。高回転域もストレスなく回るので、うっかりレッドゾーンまで回してしまったということもあるそうだ。

また『走る、曲がる、止まる』のバランスが見事で、とくに“曲がる”ということに関しては、フロントミッドシップのレイアウトとも相まって、素晴らしい回頭性で狙ったラインをトレースしてくれると自慢げに話してくれた。

  • マツダ・RX-7(FC3S)のロータリーターボのロゴ
  • マツダ・RX-7(FC3S)のエンジンルーム

「かつてはスキーに行ったり、サーキットでの走行会にもよく参加したりしていたんです。初めて走行会で走った筑波サーキット コース2000のスタート直後に、第1コーナーでいきなりスピンしたのは今となっては良い思い出ですね。

だけど、ロータリーエンジンは走行距離が増えると圧縮が落ちたり、必要な部品の入手が難しくなるとのことだったので、最近は遠出や無茶な走り方は極力しないようにしています。

僕のFCは10年前に走行距離が10万キロになって、現在17万キロほど走っていますが、大きなトラブルやアクシデントもなく35年間過ごしています。個体に“当たり外れ”というものがあるとすれば、私のFCは“大当たり”といったところでしょうか(笑)」

と、和やかな雰囲気で取材が進んでいくなか、奥様だけはその言葉を聞き逃さなかった。
「でもあなた、今朝急にドアが開かなくなったじゃない。これは大きなトラブルよ」

出発するぞというタイミングで、ドアが中からは開くのに外からは開かないというトラブルに見舞われながらも、イベントでは抽選でこのたっぷり撮影の枠をみごと引き当てた金子さん。

実は1週間前の日曜日にはバッテリーが上がってしまうトラブルもあったそうだが、「イベント当日ではなく、ちゃんと1週間前に上がったから良しとする!」と胸を張る。

ほかにもしょっちゅうアチコチが故障しているのだと、ご夫婦で笑いながら話していた。

  • マツダ・RX-7(FC3S)の左リア

「まぁ、こういう些細な故障はあるんですけど、もう走れないかも…というような、大きな故障は無いです。僕は極力カスタムをせずに純正仕様を保ってきたので、トータルバランスを崩さなかったというのも良かったのかな?

デザインはすでに完成されていたし、走行性能も当時の標準より高いポテンシャルを持っていました。だから、そこに僕が手を加えることで、バランスを崩し、FCの魅力をスポイルしてしまうのも良くないと感じたんです。

ただ、やっぱりちょっと変えてみたいという気持ちがあったので、アンフィニ化はしています」

  • マツダ・RX-7(FC3S)のバケットシート
  • マツダ・RX-7(FC3S)を2シーター仕様に変更

RX-7にはGT-Xをベースにした、2シーターの特別限定車『∞(アンフィニ)』があり、4シリーズ(Ⅰ~Ⅳ)が販売されている。

金子さんの個体は、元は4シーターのGT-Xだったが、これをアンフィニIIの2シーター仕様へと変更し、シートについては「タイト感があって運転姿勢がしっかり保持されるフルバケットシートにしたかった」ということでアンフィニⅢ純正を流用しているという。

アフターパーツを組み込むようなチューニングやカスタムはあえて施しておらず「ありのままで年齢を重ねて欲しい」と噛み締めるように呟いた金子さんの横顔がとても印象的だった。

  • マツダ・RX-7(FC3S)とオーナーの金子さんご夫婦

「あとは、FCを長く所有することで、多くの素晴らしい友人と出会うことができました。こういう出会いがあったから、ずっと乗り続けたい! という最初の僕の思いは間違っていなかったと思います。

仕事をリタイアしたら“クルマ道楽”がしたいと思っていたので、まさにいま実践しているところなんですよ。だから、FCは“道楽仲間”といったところですね(笑)」

今後はお互いに無理をせず、とはいえ運動不足にはならないように動かしながらメンテナンスをしていくそうだ。これまでと同じように一緒に歳を重ね、どちらもが遊び走り尽くした頃、トヨタ博物館に寄付するなどして動態保存できたらと考えているのだとか。

とはいえ、2人のクルマ道楽はまだまだこれからが楽しみどころだ。

取材協力:フェスティバルウォーク蘇我

(⽂: 矢田部明子 / 撮影: 平野 陽)

[GAZOO編集部]

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