~お客様の喜び、笑顔のために~「安心・快適・使い勝手No.1」 [ポルテ/スペイド 鈴木敏夫 主査](3/3)

お客様にとって、お気に入りのオンリーワン・クルマを提供したい

お客様に、装備・オプションを選択していただきやすいようにセレクトパッケージを設定

また、このクルマには約99%の紫外線をブロックするスーパーUVカットフロントドアガラスや雨の日も安心な撥水ガラス、日差しが強いときのお肌の刺激や室温上昇を抑え、遮音性の高いIRカット機能付ウインドシールドガラス、さらには設定温度をキープするオートエアコンや、匂いや菌、花粉を抑制し、髪や肌に潤いを与えてくれるナノイーを発生させる機能などを付けることができます。
女性の方々にクルマで欲しい装備は何かと尋ねたところ、年代を問わず一番人気が高かったのが、日焼けしないガラス、二番目がナノイーでした。スーパーUVカットガラスについては私が旭硝子さんの知多工場に何度も足を運び、お願いして開発してもらったものです。「女性にとって間違いなく喜んで頂けるものなので」という理由で、先行してヴィッツが世界で初めて採用しましたが、元々はこのクルマのために開発されたものなのです。
また、同様に発売時期の関係でアクアが先行となりましたが、どのグレードからも自分の欲しいパッケージ装備(オプション)を選ぶことができる「セレクトパッケージ」という「クルマの新しい買い方」を最初に考案したのもこのクルマです。この実現にあたっては、当初は販売仕様が通常の何十倍にもなり、生産管理が煩雑になるのではないかという理由でなかなか受け入れてもらえませんでしたが、開発・営業メンバーが一体となり、「お客様に喜んでいただくためには必要」と熱意をもって生産管理や工場のメンバーを説得し、理解してもらい実現しました。
ただ出来上がったものを買っていただき満足してもらうだけではなく、選ぶ段階から楽しんでいただきたい。4つのシートタイプと6つのセレクトパッケージの選択と2つの内装色を自由に選べるようにした結果、お気に入りのオンリーワンのクルマを買うことができる。きっと、お客様はどれにしようか悩まれると思いますが、悩みながら自分で選択することによって、その分、満足度が上がり、愛着も強くなるはずです。とくに若い人や女性はその傾向が高いと思っています。(これまで女性に何度もお叱りを頂いてきた点です…笑)

お客様に、装備・オプションを選択していただきやすいようにセレクトパッケージを設定

お客様と確認・検証・会話しながら開発する

私は愛知県の岡崎で生まれ、子供の頃、岡多線(現 愛知環状鉄道)を使ってトヨタの完成車両が列車で運ばれて行く姿を見て、育ちました。それ故に、自ずとクルマに興味を持ち、大学・大学院では内燃機関の燃焼を研究し、トヨタに入社しました。
当初の希望はエンジンの開発部門でしたが、やはりクルマ全体の開発をしてみたいと思うようになり、希望して、製品企画部門に異動しました。以来、主にコンパクトカーの企画・開発を手がけてきました。
しかし、本当に開発したかったクルマは"走り重視のクルマ"、スポーツカーです。そして、自分が好きなクルマも走るクルマ。現在の愛車はMR-S。新型ポルテ/スペイドとは真逆の、収納スペースが殆どない車高の低いクルマです。でも、面白いもので、真逆のクルマに乗っているからこそ、収納スペースでの工夫など思いついた開発アイディアもありました。人生、何が幸いするかわかりません(笑)
新型ポルテ/スペイドの開発で実施したお客様の声を徹底的にヒアリングして開発していくという手法は、元を正せば、製品企画部門に異動して早々に担当した商用車プロボックス/サクシードの開発のときに用いた手法です。商用車というのは購入する人とそれを使う人が違う。さらに、乗る人は自分のクルマ、自分の燃料代という認識はないので結構かっ飛ばしていたりするのです。(昼間、高速で一番早いのはこのクルマなんです!皆さんもよく見かけるでしょ:笑)そんなクルマを開発するにあたり、どういう使われ方をするのか?どんな性能や装備があったら嬉しいのか皆目検討がつかない。だったら、とにかく聞いてみよう。そう考えて、地元の法人ユーザーや東京のリース会社を訪ね、徹底的に使い方や要望のヒアリングを行いました。たぶん、自分が乗りたいクルマ、造りたいクルマだったらこんな手法は取らなかったと思います。だからこそ、いいクルマを開発できたと思っております(笑)
当時、この開発手法を「ユーザーとの対話型開発」と呼んでいましたが、以来、自分がクルマを開発するときは必ず、実際に使用する人の生の声を聞く、お客様と確認・検証・会話しながら開発するという、この手法を取り入れてきました。これは自分の仕事の流儀とまではいいませんが、自分が開発を行う際に、「信じられる、安心できる、腹に落ちる」やり方がこの手法なのでずっと続けています。
とくに新型ポルテ/スペイドは幅広い層のお客様に満足し、喜んでいただきたいクルマですから、つねに「これでいいのか?」と半信半疑になることが多くありました。だからこそ、いろいろな角度から検証し、何度も確認する。そして、確信が持てたら一気に開発する。それを繰り返してきました。

そして、このクルマが完成して気づいたことは、自分が造りたいクルマは、本当はスポーツカーではなくて、「みんなに喜んでもらえるクルマ」なのではないかということです。これまで開発してきたクルマを振り返ってみても、どうやらそれに間違いはないようです。
そういう意味も含めて、今回、本当に自分が造りたかったクルマ、多くの皆さんに乗っていただき喜んでいただけるクルマが完成しました。私の自信作です。是非、実車をご確認ください。

( 文:宮崎秀敏 (株式会社ネクスト・ワン) )

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