新型「日産フェアレディZ」実際に乗ってみて初めてわかった、その意外な性格とは?

フェアレディZ」に強い思い入れのあるモータージャーナリスト山田弘樹が、話題の新型に試乗。ステアリングを握って初めてわかる、走りの特徴についてリポートする。

新型フェアレディZは、ジキルとハイド。前編ではその“ジキル性”について話したが、今回は“ハイドな一面”について語ってみよう。

「RZ34」という型式名称が示すとおり、新型フェアレディZはフルモデルチェンジではない。先代「Z34」型の骨格をベースにそれをさらに磨き上げた“Refine(リファイン)型”といえる。

日産が新型プラットフォームを導入しなかったことには、いくつか理由がある。ひとつは、型式認証取得のプロセスを省くことによって、衝突安全テストをはじめとする膨大な開発コストを抑えるため。

もうひとつは、現時点でのフェアレディZの電動化に対して、明確な方向性を持っていなかったからだと思う。もっと言えば、日産にとって先に“EVスポーツカー”を表現する対象は、やはり「GT-R」だからだろう。

だとすれば、Zで今やるべきことは何か?

それは既存の素材を使って、これを徹底して磨き上げることだ。だから開発陣は、この慣れ親しんだシャシーに対して8割近くのパーツを刷新し、ボディー剛性を高めた。そしてこのフロントコンパートメントに、「スカイライン400R」のV6ツインターボをブチ込んだわけだ。

だが真正面から物を言えば、その仕上がりには少し気になるところもある。このシャシーで、しかも後輪だけで路面に伝えるには、405PSというパワーはあまりにも強烈だと感じるのだ。

もちろん日産はそのために、上級モデルには19インチのホイール&タイヤだけでなく、機械式LSDまで用意した。その足まわりにはレスポンスに優れるモノチューブダンパーを採用し、極めてしなやかな路面追従性を持たせた。

それでも、そのアクセル開度を深めるほどに、ターボパワーの強烈さには圧倒される。シャシー剛性の“ちょっと足りない感じ”に、どことなくヒヤリとする。これが「ハイドな一面」であり、この二面性こそが新型フェアレディZのキャラクターだと筆者は思うのである。

もしドイツメーカーがこのパワーユニットを使ったら、間違いなくもっと屈強なボディーを用意しただろう。少なくとも駆動方式は、4WDも選べるようにしたと思う。

筆者は決して、日産を非難しているわけではない。安全性の担保としてはVDC(ビークルダイナミクスコントロール)を標準装備しているし、肝心のスタビリティーも、ギリギリのところで上手に均衡を保っている。むしろ「やっちゃったなぁ」と、ひそかに感心しているのだ。

普段は極めて快適なGTである新型フェアレディZが、しかるべき領域では牙をむく。そのときの“身もだえ感”には、なぜか昭和のにおいを感じる。そして「ナイフは、切れるものですよ」と言われているような気持ちになる。

言ってみれば新型フェアレディZは、開発陣が最後にくれたクルマバカへのプレゼントだ。Z33時代から培われたノウハウを使ってこれを自分好みに仕上げなよ。その下準備はしましたよ。というのが、開発陣がZに込めた“隠れメッセージ”なのだ。

ノスタルジックなのは、見た目だけじゃない。とことんガソリンくさいのも、新型フェアレディZの一面なのである。

(文:モータージャーナリスト・山田弘樹)

[GAZOO編集部]

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