【試乗記】レクサスRX350h“バージョンL”(4WD/CVT)
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レクサスRX350h“バージョンL”(4WD/CVT)
この燃費は骨身にしみる
大本命がついに登場!
いろいろなところで報じられているとおり、RX350hそのものは、北米などでは現行RXの導入当初からラインナップされている。ただ、新しいRXが2022年6月にグローバル発表された当時は、半導体や部品の不足による新車供給難の真っただ中。市場の混乱を避ける意味もあって、日本ではあえて導入を遅らせた……というのが真相のようだ。
振り返ってみれば、このRX350hの直接的に前身といえるモデルは、先代RXには存在しない。それもあって、日本市場では車格をイメージしやすい「RX500h」(先代では「RX450h」相当)と「RX350」(同じく「RX300」)、そして新時代を象徴するプラグインハイブリッド車(PHEV)の「RX450h+」を優先したのだろう。
しかし、このRX350hは新しいRXでは純エンジンのRX350とならぶエントリーモデルの位置づけであり、FFなら20km/リッターの大台を超えるWLTCモード燃費は現行RXで最良。ガソリン価格高騰の昨今は、この燃費はとくに骨身にしみる。というわけで、このRX350hには「RXの大本命、ついに登場!」と銘打ちたくなるところである。
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2022年11月に発表された最新型「レクサスRX」。グローバルでは5世代目にあたる。今回は2023年7月に追加設定された2.5リッター直4ハイブリッド「RX350h」を郊外に連れ出した。
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2.5リッター直4ハイブリッドを搭載する「RX350h」は、ラグジュアリー志向の基準グレードともいえる“バージョンL”のみのラインナップ。車両本体価格が758万円のFWD車と796万円の4WD車が設定され、後者に試乗した。
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スピンドルグリル改め「スピンドルボディー」と呼ばれる、塊造形のフロントまわりが新型「RX」の特徴。“バージョンL”ではシームレスグリルの処理がひし形のドット柄となり、“Fスポーツ”系グレードと差異化されている。
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写真の外板色は「ソニッククロム」と呼ばれるガンメタリック系のカラー。これを含め「RX350h“バージョンL”」では全9色からボディーカラーを選択できる。
半テンポ遅れるドッコイショ感
トヨタ製2.5リッターシリーズパラレルハイブリッドの実力はもはやおなじみだ。これまでの経験からしても、このRX350hも“必要十分プラスアルファ”の動力性能を披露することは容易に想像ができた。実際、このクルマは日本の交通環境では普通に走る。さすが入念な静粛対策もあってか、エンジンのオンオフによるショックも気にならないし、ロードノイズも十二分に抑えられている。
……のだが、今回のRX350hの走行感覚は、記憶のなかにある2.5リッターシリーズパラレルハイブリッドの爽やかなそれとは、ちょっと異なっていた。電動パワートレインらしく、本来は中低速域でのレスポンスやトルク感も得意分野のはずだが、今回のRX350hでは、加速も減速もどことなく半テンポ遅れるドッコイショ感があるのは否めない。
その原因はなにか……と想像をめぐらせると、試乗車の車検証重量で2050kgというウェイトにいきついた。同様のパワートレインを積むレクサス/トヨタでRXの次に重いのは、「NX350h」と「クラウン クロスオーバー」だが、それでも車両重量は4WDで1.8t前後。今回の試乗車はそれらより200kg以上重い。さらにFFでも1.9t台に達している。実際のところ、同じ「3.5リッター級」をうたうRXなら、2.4リッターターボの純エンジン車であるRX350のほうが、エンジンサウンドは少し耳につくものの、より小気味よく走ってくれるのは事実である。
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「RX350h“バージョンL”」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4890×1920×1700mm、ホイールベースは2850mm。「ポルシェ・カイエン」や「BMW X5」より少しだけコンパクトで取り回しがしやすいサイズ感だ。
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2.5リッター4気筒エンジン(最高出力190PS/最大トルク243N・m)と駆動用モーター(同182PS/同270N・m)を組み合わせたハイブリッドパワートレインを搭載する。WLTCモード計測による燃費値はFWD車が20.2km/リッターで4WD車が18.7km/リッター。
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5種類のインテリアカラーが用意される車内では、Aピラーを後退させることで得られた視界の良さや開放感に加えて、「Tazuna Concept」をもとにデザインされたコックピットが見どころとされる。ダッシュボード中央に置かれた14インチサイズの大型タッチ式ディスプレイが目を引く。
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「e-ラッチシステム」と呼ばれる電気制御ドアラッチ/アンラッチ機構を標準装備。ブラインドスポットモニターの機能を活用した、後方からの接近車両などを検知する安全機構も採用されている。
足まわりに熟成の余地あり
正確なステアリング、いかにも鉄のカタマリを思わせる剛性感は、最新の「GA-K」プラットフォームに共通する美点だ。ステアリングから伝わってくる接地感もそれなりに濃厚で、ロール感が自然なのも同様といっていい。
それは基本的にひとつ下のNXと似た味わいなのだが、NXよりは明らかにゆったりとした重厚感=上級感が演出できている。ドライブモードを「ノーマル」か「エコ」にしておけば、たしかに乗り心地も柔らかめで、路面からの突き上げもほどよく丸い。最近のレクサスは総じて正確で俊敏な身のこなしを強調するタイプが多いが、さすがは長らくレクサスの屋台骨を支えてきたRXだけに、落としこむべき世界観も明確に見えているのだろう。
ただ、全体には細かい上下動が抑えきれていないところが、このRX350hには少しある。高速でも直進性そのものは良好なのだが、前後左右ともに“動いてはグイッと戻される”といった細かいユラユラがおさまらない。伸び側の減衰が足りていない感触といえばいいか。
減衰が引き締まる「スポーツ」モードにすると上下動は少し減るものの、そのぶんコツコツとした路面のアタリは強まるし、気になるユラユラも完全に解消されるわけではない。こうしたクセはこれまで乗ったRXにも多かれ少なかれあったのだが、このRX350hではそれが強調されてしまっている。これなら上下動の大きさはもっと許容しても、ゆったりバウンスさせるほうが“らしい”し、味つけの方向性を見れば、開発陣もそれを分かっているように思える。しかし、今のところは“熟成の余地あり”と申し上げたい。
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TNGA思想を取り入れた「GA-K」プラットフォームを採用。主要骨格部材の最適配置や、フロントフェンダーのアルミ化、Bピラー部への2GPa(ギガパスカル)級ホットスタンプ材の採用などにより、車両重量は先代比で90kg軽量化された。重心高の低下と操縦安定性の向上がうたわれる。
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「ノーマル」「スポーツ」「エコ」、そして「カスタム」の4種類の走行モードをセンターディスプレイのタッチスイッチで切り替えられる。カスタムモードでは、パワートレインのレスポンスやサスペンションの減衰力などを任意に設定可能だ。
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先進運転支援システムの充実も「RX」の自慢だ。アダプティブクルーズコントロールや車線維持支援機能などの操作スイッチをステアリングホイールの右スポーク部に集中配置。“バージョンL”グレードには、リモート機能付きの駐車支援システム「レクサスチームメイトアドバンストパーク」が標準で装備される。
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「RX350h“バージョンL”」には、21インチアルミホイールが標準装備となる。ダークプレミアムメタリック塗装(写真)もしくはダークグレーメタリック塗装が選択できる。試乗車は、235/50R21サイズの「ブリヂストン・アレンザ001」タイヤを組み合わせていた。
コスパで選ぶか走りで選ぶか
もちろん、そんな単純なコスパだけでレクサスを買う向きはいないだろう。ということは、動力性能は少し控えめでも、ハイブリッドならではの静粛性や滑らかな走行感覚、あるいはガソリンスタンドで漏れてしまうタメ息の度合いが少しでも減じられることに90万円前後の価値を見いだせるか……が、RX350hを選ぶかどうかの分かれめになる。
……というのが、RX選びの一応の基本路線なのだが、現実はそう簡単ではない。この原稿を書いている2023年10月中旬現在、レクサスRX公式ウェブサイト内の「工場出荷めどのご案内」によると、RX350hのそれは注文から3.5〜4.0カ月で、じつはRXで最短納期となっている。それに続くのがRX450h+の4.0〜4.5カ月。RX350とRX500hにいたっては「詳しくは販売店にお問い合わせください」とあり、実質的にはいまだに受注停止中と思われる。
つまり、今すぐRXを注文したくて、しかもPHEVのメリットを生かせる環境にないなら、現状ではRX350h一択にならざるをえない。ただ、個人的には、条件が整えば、動力性能や乗り心地面でもRX450h+のほうが好ましい。あるいは、どうしても2.5リッターハイブリッドのレクサスSUVに乗りたいのなら、ひとつ下のNX350hが走りは爽快だし、納期もさらに短い。ただし、このご時世である。RX350hを決定版と呼ぶにはもうひとがんばり……と思いつつも、この体躯でこの燃費を見せられると、無視するのはむずかしい。
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荷室は5人乗車時で612リッターの積載容量を確保。9.5インチのゴルフバッグであれば4つ収納可能となっている。「ハンズフリーパワーバックドア(停止位置メモリー機能・挟み込み防止機能付き)」が標準で装備される。
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ラゲッジルーム内のスイッチ(写真)および後席下部のスイッチ、センターディスプレイ内のタッチスイッチで、リアシートのバックレストを格納/展開できる。
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「RX350h“バージョンL”」のフロントシート。オートエアコンと連動し、シートヒーターやシートベンチレーション、ステアリングヒーターを自動制御する「レクサスクライメイトコンシェルジュ」が標準装備となる。
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前席と同じくセミアニリン加工された本革表皮で仕立てられる「RX350h“バージョンL”」のリアシート。電動リクライニングと電動格納機能、ヒーター/ベンチレーション、40:20:40の分割可倒機構が備わっている。
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サスペンションはフロントがストラット式、リアは新開発されたマルチリンク式を採用。静粛性や快適性を含め、ダイナミクス性能が大きく進化したとうたわれる。
テスト車のデータ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4890×1920×1700mm
ホイールベース:2850mm
車重:2010kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:190PS(140kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:243N・m(24.8kgf・m)/4300-4500rpm
フロントモーター最高出力:182PS(134kW)
フロントモーター最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)
リアモーター最高出力:54PS(40kW)
リアモーター最大トルク:121N・m(12.3kgf・m)
システム最高出力:250PS(184kW)
タイヤ:(前)235/50R21 101W/(後)235/50R21 101W(ブリヂストン・アレンザ001)
燃費:18.7km/リッター(WLTCモード)
価格:796万円/テスト車=866万9500円
オプション装備:ルーフレール+パノラマルーフ<チルト&アウタースライド式>(20万9000円)/デジタルインナーミラー(4万4000円)/デジタルキー(3万3000円)/置くだけ充電(1万3200円)/輻射ヒーター<運転席、助手席>(2万2000円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(27万9400円)/アクセサリーコンセント(4万5100円)/寒冷地仕様(2万0900円)/ドライブレコーダー<前・後方>(4万2900円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:1009km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:365.2km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:15.6km/リッター(車載燃費計計測値)
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