シトロエンDS3、現役続行!「愛車に乗り続ける」ということとは?…山田弘樹連載コラム
みなさん、ゴキゲンよう!
突然ですがワタクシ、時計専門誌である「クロノス日本版」に、機械式時計のインプレッションを執筆しました!
自動車雑誌「GENROQ」でも交流のあった時計ジャーナリストであり、クロノス日本版の編集長も務める広田雅将(ひろた・まさゆき)さんの推薦で、「スピードマスター'57」というクロノグラフについて書かせて頂いたんです。
生まれて初めての時計のインプレッションはドキドキしました。そして、とっても楽しかった!
それはまるで、スポーツカーをサーキットで走らせて評価するような楽しさでした。また書かせて頂けるといいな。
ちょっと宣伝でした。
クロノス日本版11月号と「スピードマスター'57」。でもなんで、モータージャーナリストが時計の記事を? なぜなら時計って、クルマとすごく似ているんです。
原稿では機械的な特徴を説明するのはもちろん、文字盤やケースの作り込み、その着け心地だけでなく操作性にも触れました。実際に時計を腕に着けて、イナーシャ(慣性重量、つまり腕の振りですね!)まで真面目に書きましたよ。
さてさて肝心なクルマのコラムはというと、今回は我が家の偉大なる足グルマ、11年式シトロエンDS3 スポーツシック(6MT)のお話。通称セバスチャン(ローブから命名)のブレーキ周りを、思い切ってリフレッシュしました。
おぉ、それはいい話じゃないか。
物を大切にするのは、よいことだ!
確かにそうなんですが、そこには葛藤がありました。
セブは私の奥さんが10年ほど乗り続けている愛車で、その走行距離は10万kmに届かんとしています。年式的に考えればそろそろ、アチコチ消耗パーツをリフレッシュするべきお年頃で、実際ブレーキローターとパッドは交換するべきタイミングでした。
となればフルードも当然換えるべきだし、走行距離を考えたらキャリパーだって点検したい。サーキット走行などはしていないからピストン交換までは必要ないだろうけれど、少なくともシールは交換したいよね、などと仕事柄思うわけです。
すると当然ですが、お金がそれなりに掛かります。
ちなみにその見積もりは、キャリパーのOHを含まず工賃込みで約20万円弱でした。うん、内容的には妥当だけれど、出費としては大きい!
ちなみに中古車情報をサーフィンすると市場には、現在およそ60台ほどのDS3が出回っています。そしてその価格帯は、支払総額で見て39~198万円の間です(2023年10月現在)。
ただし高いのは16年以降のマイナーチェンジモデルや限定車であり、我が家のセブと同じ初期型モデルだと、大体その価格は30~40万円くらいです。
中古車市場で40万円程度、仮に手放したらそれより安くなることが確実なクルマに、20万円の修理代を掛ける。
普通なら、ちょっと考えちゃいますよね。直して乗り続けるなら、いっそ新しいクルマにした方がいいんじゃない? って。
ブレーキローターは、実は中古で購入以来初めての交換。オイル交換や車検ごとにきちんとチェックしながら乗り続けて来たのですが、街乗りだけだとこれだけ長く持つのかと正直驚きました。クラックや波打ちもなく、正に「使い切った」と言える状態。キャリパーは、シールも含めてOHの必要なし。レースじゃないとクルマって長持ちするんですねぇ……。
DS3で面白いのは、リアローターにハブベアリングが内蔵されているところ(だから部品代がちょっと高め)。より負担が少ないリアローターを換える頃には、ベアリングも交換時期に差し掛かっているということだろうか? ということは、フロントローターが予想以上に長持ちしたということ?
でも奥さんは、セブを直すことにしました。
ちなみに興味本位で「もう少し走行距離が少ないDS3をお代わりするのは?」と聞いたら、即却下されました。
彼女はこのブルーボッティチェリ&ホワイトの2トーンカラーに一目ぼれしたのですが、6MTだと女性ユーザーがあまり乗らないのでしょう、この組み合わせのDS3 スポーツシックは、なかなかないのだそうです。
それにDS3は10年間乗り倒したから、「次に乗るならもう他のクルマがいい」とのことでした。
私なんか、ハチロク4台お代わりしたんだけどなぁ。
じゃあNDロードスターは?
「荷物を積めるクルマ、なくなっちゃうよ?」
いっそのこと赤パン(AE86)を完全リフレッシュして、ふたりで使うのはどうかな? 荷物も積めるしリアシートもあるよ。
「楽しそうだけど、次乗るならハイブリッド車がいいな」
……(遠回しに却下)。
じゃあルノー キャプチャーなんかいかが?
「だったらルーテシアがいい!」
根本的にまったく好みが違うふたりなので、話は永遠に食い違います。
作業を頼んだのは、英国車の専門店ウイザムカーズ(https://www.witham-cars.com)。フランス車なのになんで!? それは代表の篠原さんが、私とはかつてロータスでレースを闘った仲であり、奥さんとはラリー仲間だったから。広いファクトリーにはロータスを中心にミニやモーガン、ジネッタといったブリティッシュスポーツたちが沢山。その中でセブが作業されているのは、なんか不思議な光景でした。
そんな風に決定打が無いことも含めて、結論としてはセブに乗り続けることになったわけですが、なんだかんだと彼女は、このDS3が大好きなのです。
いわく「ボディカラーの他にも気に入ってるのは、ヘッドライトがダイヤモンドみたいにキラキラしているところ。でも一番重要なのは、走らせるとメッチャ速いこと!」だそうです。
ワイパーがビビるとか、室内灯が暗いとか、ドリンクホルダーがないとか、暖房がめっちゃ暑くなるとかあるけれど、この1.6ターボと6MTが「運転していてオモロイからやめられへん」のだそうです。
そんな古いけれど大好きな相棒を乗り続ける上で心配なのは、万が一の事故です。セブのようなクルマは時価額が低いので、たとえもらい事故でも、きちんと直せるだけの金額が請求できるかわかりません。
また今回のブレーキのように、これからも所々リフレッシュが必要になるでしょう。セブのように、市場価値ではなくただ本当に好きだから乗り続けているクルマを、みなさんはどうやって工夫しながら維持しているのかな?
私なりの予防策としては、まず当然事故を起こさないように安全に運転すること。そして突然部品が壊れるようなことがあっても、ある程度の額なら支払えるように貯金をしておくこと。セブで言ったら、もう一台同じ程度のDS3が買えるくらい? もうちょっとかな。
そしてもしその額を超える修理代が必要になったら、そのとき考える。
今でこそ市場価値が付いたけど、ハチロクなんてそんな気持ちで30年近く乗り続けて来ました。むしろそういう気持ちになれるクルマと出会えたことの方が、嬉しかったですね。
やっぱクルマは、愛してなんぼです。
ガレージで気になったレーシングカー2台。ロータスカップJAPANに出場しているエリーゼ スポーツ240はこのあとローダーに積み込まれ、スポーツランドSUGOへと旅立ちました。がんばれ! そしてもう一台は、伝説のエラン26R!! 現在鋭意整備中とのことだから、いつかサーキットを走る姿が見れるかもしれない。
山田弘樹
自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。
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