【SEMA特集】アメリカで見たEVチューンの可能性

カリフォルニア州では自動車メーカーに一定比率以上のゼロエミッション車販売を義務付ける『ZEV規制』が課せられ、欧州やインドなどでも近い将来に新車はすべてゼロエミッション車とする方針が打ち出されるなど、世界的な潮流として電気自動車の比率がますます増えていくのが確実視されている。

そんな電気自動車は、日本ではチューニングやカスタムはなかなか話題に上らないけれど、アメリカではどうなのか? SEMA SHOW会場で探ってみることにした。

数年前、テスラ・ロードスターやモデルSが発売された直後のほうが、ホイールやエアロパーツでカスタムされた車両が並んでいて、盛り上がりを感じられた。今年のSEMAでは電気自動車のカスタマイズに関して急激な進展を感じることはなかった。けれどもEVカスタムが皆無だったというわけではなく、エアロパーツやインテリアのドレスアップ、中にはモーターのハイパワー化までおこなっているマシンもあり、その可能性を探っているカスタマーは少なからず存在することがわかった。

■EVチューンの第一歩は制動力アップ?

フロントとリヤにそれぞれモーターを搭載し、539馬力を誇るテスラのModel X P100D。 7人乗りのSUVとは思えないほどスポーティーな性能を持つこの電気自動車を、さらにカスタマイズしていたのが『UNPLUGGED PERFORMANCE』だ。
「もともと動力性能はじゅうぶんですし、保証などを捨ててまでさらにパワーアップしたいというオーナーはまだ限られていると思います。それに、スマートフォンなどと同じで、メーカー側による高度なソフトウェアアップデートも常に行われていますしね。ですから、ブレーキや内外装のドレスアップなど、需要のあるカスタムからご提案をはじめています」と、UNPLUGGED PERFORMANCE代表のBen氏。

フロントバンパーをはじめ、サイドステップ、リヤバンパーなどオリジナルエアロを装着。エンジン搭載車とちがって冷却ダクトがないフロントマスクが特徴的だ。

100km/hまでわずか3.1秒で達するという加速力をもつSUV。その加速性能を安心して使うために、提案しているのがビッグキャリパー&カーボンローターによる制動力アップだという。

インテリアもカーボンやレザーなどを用いて、純正の面影がない状態までカスタマイズ。このモデルを購入する客層は内装の質感にもこだわるであろう、というマーケティングか。

■アップグレードモーターで出力2倍に!!

ヒュンダイの電気自動車『IONIQ(アイオニック)electric』をカスタムし、アメリカのストリートカーレースでクラス優勝を成し遂げたという1台。
スペックボードによるとアップグレードモーターによってストックの88kW/218lb.-ft.から150kW/291lb.-ft.へとパワーアップを実現!! トランスミッションもハイトルクに対応したプロトタイプを搭載しているという。

カリフォルニア限定モデルの電気自動車をチューニングしたレース仕様。加速力の指標となる0-60mphは6.0秒というからスポーツカーなみの俊足だ。

ワイドフェンダーに日本製のボルクレーシングTE37SL(18インチ)を装着。その奥にはフロント6POT、リヤ4POTのウィルウッド製ブレーキキャリパーが収められていた。

■テスラのドレスアップは健在!!

エアロメーカー「ZERO to 60 Design」はフルエアロやビッグキャリパーを装着したテスラ・Model Sを展示。入り口付近の屋外エリアにも、フルラッピング仕様と思われるテスラが展示されていた。

■【番外編】V8エンジン搭載のDRAGプリウスも

EVチューンとは言えないけれど、20プリウスに1000pを発揮する6.2リッターV8エンジンを積んだドラッグマシンも出展され、注目を集めていた。

まだまだ電気自動車は高価なものが多く、クルマ遊びをしようというユーザーは少ない、というのはアメリカも日本も一緒かもしれない。もっと一般的になって手の届く価格帯になってくれば、状況は変わってくるに違いない。
いずれはエンジン車と比較にならない加速力を発揮するハイブリッドゼロヨンマシンや、モーター制御を駆使してラップタイムを削るタイムアタックEVカーなど、アニメの世界みたいなクルマが現実に登場するかも!?

そんな兆候をいち早く察知するためにも、日進月歩のハイブリッド&EVカーカスタム事情からは、今後も目が離せない!!

<ガズー編集部>

MORIZO on the Road