【ノスタルジック2デイズ特集】根っからのハチロクマニアが選んだ 『悲運のカローラレビン』TE55

カローラレビンと聞いてほとんどの人が思い浮かべるのは、1975年の1000湖ラリーで総合優勝を飾ったTE27、もしくはハチロクの愛称で親しまれているAE86ではないだろうか。
しかし、ここで紹介するのは、旧車イベントでも非常に珍しい存在のTE55型カローラクーペ1600レビンGTだ。

1972年に発売されたカローラレビン(TE27型)は、日本を代表する大衆車カローラに、セリカ用の1600cc直列4気筒DOHCエンジンを搭載したホットモデルであった。
そして、シリーズ2代目として登場したTE37型が昭和50年排ガス規制をクリアすることができず1年ほどで生産中止となってしまったのち、エンジンをEFI(電子制御燃料噴射)仕様に変更して復活させたのが、ここで紹介するシリーズ2代目後期モデル。
厳密には酸化触媒で昭和51年規制をクリアさせたのがTE51型で、ここで紹介するTE55型は三元触媒+O₂センサーによって53年規制をクリアさせたモデルとなっている。

前述のような背景をもっているため、カローラレビンシリーズのなかでも悲運の存在とされているTE55をあえて選び、大切に維持し続けているのが大前さんだ。
約10年前にネットで発見して購入することになったそうだが、じつは大前さんはこのTE55のほかにも、新車から乗り続けているものも含めて計6台のAE86を所有している。
そんなハチロクマニアがなぜTE55を?という疑問の答えは、高校時代にまで遡らなければならない。
「じつは通っていた高校で英語を担当していた女性の先生がTE55に乗っていたんです。別に憧れていたとかいうわけじゃないんですけど、女性がこんなクルマに乗っているなんてカッコいいなと思っていました。そんな記憶がこのクルマを見つけた時に蘇って、購入することに決めました。なんといっても気に入っているのは、フォードマスタングコブラのようなボディデザインですね」と語ってくれた。

大前さんの旧車ライフのポリシーは“80点のクルマを自分の好みを加えて100点にする"というものなので、TE55にもファインチューンが施されている。
ホイールは定番のRSワタナベ製14インチ8スポークタイプをチョイス。フロントサスペンションはAE86用の車高調整式を流用、リヤは他車のナックルを加工して程よいローダウンを実現していた。

モモ製スポーツステアリングにTRDホーンボタンを組み合わせて装着。シフトノブもTRD製に交換されていた。リヤにはパイオニア製スピーカーも搭載。

搭載されている2T-Gエンジンは、トヨタ製の2T型ブロックにヤマハ発動機製の2バルブDOHCヘッドを組み合わせた、排気量1600ccのスポーツユニット。TA22セリカやTE27レビン/トレノに搭載されたものはソレックス製ツインキャブレターを装備していたが、TE55に搭載されているのはEFI仕様の2T-GEU型で、カタログスペックは最高出力115ps/6000rpm、最大トルク15kg・m/4800rpmとなっていた。購入当時は冷却水漏れやクーラーが故障している状態であったが、大前さん自身で補修をおこなっている。

「飾り物にするのではなく、クルマはいつでも走れるようにしておかなければならない」というのも大前さんのこだわりのひとつ。今回のノスタルジック2デイズでの車両展示も、岐阜県から神奈川県横浜市の会場まで自走で来場したというから驚いてしまう。
旧車のコンディションを維持する秘けつを尋ねてみたが、その返答は意外にも(!?)シンプル。それは、走り出す前には必ずオイルや冷却水などの漏れがないかの確認と、なにか問題があったら後回しにせず、すぐに対処するというものであった。

大前さんにとってトヨタのコンパクトスポーツの魅力は、なんといってもキビキビとした走り。「トヨタ車は旧車でも手間はかからないのがいいところ。TE55は人気車とちがって専用のアフターパーツは皆無ですが、日々流用できそうなものを探すのも楽しみですよ」と、大前さんは少年のような目で説明してくれた。

[ガズー編集部]