【カーライフメモリーズ ~愛車と家族の物語~】家族4人でのドライブを目標に、休日DIYを積み重ねて10年ぶりに社会復帰!(コロナ/RT50)

長い人生の中で、趣味のカーライフをお休みする期間を経験するひとも少なくないのではないだろうか。
今回、お話を伺ったトヨペット・コロナ2ドアハードトップ(RT50)のオーナーである柴田友康さんも、結婚して家族が増えたことを機に10年ほど『活動休止』し、2年ほど前から少しずつその活動を再開したという。

大学入試を無事に乗り切ってひと段落した19才の頃に免許を取得し、初めての愛車としてコロナの3ドアライトバンを手に入れたという柴田さん。
「ガソリンスタンドでアルバイトした給料を貯めて購入しました。当時、まわりで人気だったのはハチロクやセブンなどのスポーツカーばかりでしたが、ひととは違う愛車が欲しいと思っていたじぶんにぴったりのファーストカーでしたね。はじめて見たときにアメ車っぽくてカッコいいじゃんと思って購入を決めました」と当時を振り返る。
父親の仕事の都合で幼児期をアメリカで過ごし(現地ではポンティアックなどを所有)、帰国後も自宅には米国製の家具などが置かれていたというから、子供の頃から刷り込まれた感性が愛車選びにも影響を与えたのかもしれない。

1957年に発売されたトヨペット・コロナは、日本だけではなく海外でも庶民の足として愛された大衆車の代表格とも言える車種。
3代目となるこのT40/50系は1964年に発売が開始され、初代から続いたダットサン・ブルーバードとの販売競争、通称『BC戦争』において国内販売台数1位の座をはじめて奪取したモデルだ。

フロントノーズがスラントした『アローライン』が特徴で、柴田さんも「リヤフェンダーなどとともに、アメ車っぽさを感じさせてくれるお気に入りのポイントです。あと、正面から見たときにモンチッチっぽくて可愛く見えるのも好きなんですよね」とのこと。

使い勝手に合わせて選べるようにボディバリエーションも幅広く用意されていて、4ドアセダン、3ドアライトバン、5ドアライトバン、ピックアップトラック、さらに2ドアハードトップと5ドアハッチバックセダンも追加された。
ちなみに柴田さんは3ドアライトバン以外にもさまざまなコロナを収集(!?)していたそうで「5ドアハッチバック以外はぜんぶ持っていました。趣味グルマとして人気が出たクルマではないけど、乗ってみるとすごく乗りやすくて売れた理由がわかるクルマだと思います。中古車のタマ数も多くて、安く手に入れることができたのも魅力でしたね」と、部品取り車を合わせて10台ほどのコロナを所有していた時期もあったほどのコロナマニア!!
そんな柴田さんがコレクションの整理を決意したキッカケはというと「よくある話だと思いますが、クルマをなんとかするから結婚してください、ってかんじで(笑)」。まず、現在の愛車と、当時はまだ彼女だった奥さんと一緒に作業して仕上げた4ドアセダンの2台を残して処分したという。
そして2年ほど前、置き場の問題から、どちらか1台だけを残すことになり「不動車は部品取りにしかならないけれど、実動車のほうはそのまま乗ってもらえると思い、悩んだ末に4ドアセダンのほうを手放すことにしました。きっと、塗装前の磨き作業やパーツ交換のサポートなど、いろいろ手伝ってもらった奥さんは『どうして動かない方を残すの!?』と思ったでしょうけど(苦笑)。ちなみに手放したコロナは、いまでも静岡県のケーキ屋さんが大切に乗ってくれていて、カスタムの相談などで時々連絡を取り合っていますよ」とのこと。
こうして紆余曲折の末、最後に手元に残した1台がこの2ドアハードトップというわけ。
置き場問題をキッカケに自宅近くの月極駐車場を借り、休みの日になると自転車に工具を積んできてはDIYで修理・メンテナンスを実施。10年近く放置した車両の劣化は想像以上にひどく、錆び付いた燃料タンクや足まわりなど、まずは動く状態にすることに注力し、ようやく1ヶ月前に車検を取得することに成功したという。
「いろいろ修理しようにもクルマが動かないと不便なことが多くて。ようやくナンバーがついて動ける状態になったので、次は各部を順番に仕上げていく段階ですね」とここまでの苦労を振り返る柴田さん。
ちなみに取材させていただいた日は、ちょうど張り替えから戻ってきたシートを装着したり、オーバーホールしたキャブレターの取り付け作業などをおこなったりしていた。
この1台を復活させるにあたって、柴田さんはある想いを持って作業を進めているという。
「子供がハウスダストなどに弱いアレルギー体質なんです。だから、クルマに関してもカビやホコリが気になるボロボロの内装はいちどすべて取り外したうえで、プロにお願いして張り替えることに決めました。それと、この当時のエンジンは排気ガスの浄化装置などもイマイチなので、年式が新しいクルマの機構を流用できないかと考えているところです。家族みんなで楽しくドライブできるクルマに仕上げたいんです」
昔は60年代のアメ車カスタムをテーマにエクステリアやエンジンルームなどのカスタムを楽しみ『乗れればオッケー、壊れたら直せばいい』というスタンスだったというが、工場の生産技術職という職業柄、今ではちょっとしたオイル漏れなども気になるようになった、と笑う柴田さん。冷却系やブレーキまわりも、オーバーホールや新品交換によって性能を取り戻している。
「家族でドライブしていて、エンコしたらカッコ悪いですからね」と、コツコツ整備を積み重ねているというわけだ。
アメ車カスタムに傾倒していた当時の名残が感じられるインパネまわり。純正シートの張り替えについても「真っ白にゴールドのワイヤーステッチというのも検討したんですが、ボディカラーに合わせたエメラルドグリーンとホワイトの組み合わせに落ち着きました。純正で白/赤ツートンのシートがあったんですが、そのデザインを参考にシートバックの色分けをしてもらったんです」と、コロナマニアならではこだわりも。
現在はすべて撤去している状態だけれど、カーペットやルーフもキレイに仕上げる予定だ。
「正直、ストックしていた部品も含めてぜんぶ手放すことを考えた時期もありましたが、手元に残してあったからこそ復活できたのかな、と。いちど手放してしまったら手に入れなおすのは想像以上に難しいでしょうし、手放して後悔している仲間の話もよく聞きますから。そして、これまでは何台も持っている割にどれも仕上がりが中途半端だった部分もあったのですが、今は1台だけなので、しっかりと完璧な状態まで仕上げたいと思っています。以前乗っていたコロナで奥さんと伊勢神宮に行ったことがあるので、このコロナが完成したら、子供たちも乗せて、家族4人でお伊勢参りに行きたいですね」
すべてを趣味に捧げていた頃とは違い、休日だからといってすべての時間を愛車に費やせるわけではない。また、値段の安さで選んだジャリ路面の月極駐車場では作業が思ったように進まないこともある。
それでも、柴田さんは今日も手を動かし続ける。自分の好きな愛車で、楽しく快適な家族旅行を実現するために。

エンジン音を動画でチェック!

(写真:平野 陽)

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road