【ハチマルミーティング2020 愛車紹介】発売当時に憧れた初代アルトワークスを、先輩宅納屋からバーンファインド!

長らく開いていない古い倉庫やガレージから、年代ものの高級車や希少車が発掘されるニュースは『バーンファインド』と呼ばれ、ここ数年世界各地で話題にのぼっている。しかし希少車といったことを除けば、納屋に置き去りになっていたクルマを譲り受けるなんて状況は、意外と身近に存在している。
この1987年式アルトワークス(CC72V)も、20数年前にバーンファインドで現オーナーの元にたどり着いた1台だ。

初代アルトワークスといえば、80年代後半から90年代初頭に一世を風靡した軽カースポーツのハシリであり、のちにダイハツ・ミラTR-XXや三菱・ミニカ・ダンガンとともにブームを牽引した伝説の名車。
コンパクトなボディに550㏄+インタークーラーターボの組み合わせは、軽自動車の64馬力規制の発端にもなり、その後のブームの中心を担ったホットモデルだ。それまで奥さんの買い物グルマとして扱われていた軽自動車を、モータースポーツも楽しめるスポーツカーへとランクアップさせたのである。
ちなみに初代アルトワークスにはFFモデルと4WDモデルの2種類がラインアップされ、エアロパーツも装着されていたのが特徴。鮮やかなピンクを取り入れた内装や、メーター脇に設けられたエアコンの操作ダイヤルなど、通常グレードとはパッケージング面でも明らかな差別化が図られていた。

そんなアルトワークスとオーナーさんの出会いは、デビューと同時の1987年。当時、スズキ・マイティボーイに乗ってジムカーナに参戦していたというオーナーさんは、その驚異的なスペックを目の当たりにして「いつかは乗りたい」と考えていたという。
しかし、その機会に恵まれることなくほかのクルマを乗り継ぐうちに、次第にアルトワークスへの思いは薄れていったという。
しかし、そんなある日、地元の先輩の家の納屋にホコリを被って放置されているアルトワークスを見かけたのは運命のいたずらだったと言えるだろう。2桁ナンバーが付いたまま不動車となっているアルトワークスは、当時の思いを呼び起こしたのだとか。
「試しに『欲しい』って相談してみたんですよ。そしたら持っていっていいよって言ってくれたのですぐに譲り受けました。その時はエンジンが不動だったので、自分でいろいろなパーツを交換していきました。結局、不動の原因はウォーターポンプの固着と燃料系の劣化だったのですが、ほんとはもっと苦労するんじゃないかなって心配していたので、少しホッとしました」
こうして修理のためにフューエルタンクと燃料系ライン一式を交換。さらにジムカーナでも戦えるように足まわりのブッシュ類もすべて刷新し、万全のコンディションを作り上げたという。

また、譲り受けたアルトワークスには、オプションとして設定されていたスズキスポーツのロールケージや240km/hメーターなども装着されていた。
さらにジムカーナ出場に向けてクロスのサブコンを追加してブーストアップやリミッターカットも行い、最高出力は80psほどまで引き上げられているという。

しかし、軽自動車も時代は660㏄全盛。20数年来の憧れを手に入れいざジムカーナに参戦すると、四駆ターボのアルトワークスでも勝負権がないのは明らかだったという。
「もちろんアルトワークスで出るって決意した時から勝てるなんて思っていなかったですよ。でも何よりもあの頃憧れたクルマで走れたことが嬉しかった。今ではジムカーナも引退していますが、最後にアルトワークスで走れたことはいい思い出ですね。引退した後はたまのドライブやミーティングへの参加が楽しみになっています。今はこういったミーティングに向かってハンドルを握ることが何よりの癒しです」

ハチマルミーティングには徳島県から毎年欠かさずエントリーを続けているというオーナーさん。
いつまでも調子良く乗り続けるためには、やはり普段からエンジンをかけて乗ること。そして製廃パーツが多く細かい部品はほとんど手に入らないため、いろんなストックパーツを持ち続けることが重要なのだとか。実際にモールやデカール類、さらにミラーなどあらゆるパーツを1台分以上は保管しているという。

また、常に新鮮な気持ちで楽しむために、ホイールも何セットか用意して時々に履き替えているのもオーナーさんのこだわり。ちなみに普段は純正ホイールを装着しているが、イベントなどではジムカーナでも使用していたエンケイのホイールをセット。普段とは違ったスタイリングに新たな魅力を感じることで、さらに長く付き合いたいという気持ちが盛り上がるのだとか。
デビュー時から抱いた憧れと、20年の時を経た偶然の出会い。そしてそれ以降、現在も変わらず愛情を注ぎ続けるアルトワークスは、オーナーさんにとって唯一無二の1台。まさに運命が導いた最高の愛車というわけだ。

(テキスト:渡辺大輔 / 写真:平野 陽)

[ガズー編集部]

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