31歳のオーナーが「ジャパンと並べたいW本命」の1台、2019年式日産スカイライン400R(RV37型)

この取材をしていると、次世代を担うであろう、魅力あふれる若きオーナーとの出会いが多い。仕事を抜きにして、クルマ談義が楽しくて仕方ないのだ。これぞまさに「役得」といえるだろう。今回登場する男性オーナーは、31歳の青年だ。愛車は、日産・スカイライン400R(RV37型)。熱い想いを秘めたオーナーの取材は本当に楽しい時間だった。その模様をお届けしたい。

その前に、このモデルの概要について触れておきたい。2014年にシリーズ13代目として登場したスカイラインセダン「V37型」は、2019年にマイナーチェンジを行った。その際に追加されたのが“走り”のグレード、日産・スカイライン400R(RV37型/以下、400R)である。車名の「400R」は、このクルマに搭載されている、専用チューニングが施されたエンジンの最高出力に由来するといわれている。

400Rのボディサイズは全長×全幅×全高:4810x1820x1440mm。排気量2997ccの直噴V型6気筒ツインターボエンジン「VR30DDTT型」は、最高出力405馬力を誇る。これはつまり「NISMO R34GT-R Z-tune」といった特殊なモデルなどを除けば、歴代スカイラインのなかでもっともハイパワーなモデルであることを意味する。現在、オーナーの個体は新車で納車してから約4ヶ月が過ぎたところだ。オドメーターは5000キロを刻んでいる。このクルマのキャラクター上、落ち着いた大人・特に還暦前後のオーナーを思い浮かべるかもしれないが、なぜ若きオーナーがこの400Rを選んだのだろうか。

まずは、オーナーの愛車遍歴を尋ねてみた。

「18歳で免許を取得してすぐ、実家のトヨタ・アレックスを父親と共有して乗っていました。基本的に親子で行動範囲が広く、あっという間に走行距離が伸びて、私が22歳になった頃には23万キロを超えていました。そこで、大学卒業のタイミングで自分のクルマを購入することにしたんです。昔から憧れていた『西部警察』の劇用車と同じ日産・スカイライン2000GTターボ(スカイラインジャパン)を手に入れたいと探しました。まもなく手頃な個体を見つけたのですが、もっと近所に『あぶない刑事』の劇用車でもある日産・レパードのXS-Ⅱ グランドセレクション(前期型)を見つけたので、そちらを購入し、3年間で6万キロを走りました。しかし、故障が増えたので手放し、父親が通うディーラーとのご縁や、またいろいろとサービスしていただいたこともあって、トヨタ・86の新車を手に入れました。それを5年ほど乗った後、400Rの下取りに出して今に至ります」

愛車遍歴でも語られているが、オーナーは刑事ドラマの「劇用車」が好きだという。特に「あぶない刑事」と「西部警察」をこよなく愛していて、レパードを選んだのも「あぶない刑事」の影響を受けているからだ。そこがオーナーのクルマ好きに繋がっているようなので、原体験を伺ってみた。

「子どもの頃から刑事ドラマが好きで、その流れで劇用車が好きになりました。特撮によく出てくるような外装まで変えたクルマではなく、覆面パトカーが好きです。例えば『R34』といえば『GT-R』に人気が集まると思いますが、私の場合は柴田恭平さんが『はみだし刑事』で乗っていた『25GT-X』なんですよね。レースグレードよりも素のグレードに魅力を感じます。なかでも好きなのがスカイライン2000GTターボ(スカイラインジャパン)なんですよ」

スカイラインが好きといえばGT-Rが好きであるファンは多いが、オーナーのアプローチはユニークだ。スカイラインジャパンのどこに魅せられているのだろうか?

「小学校高学年の頃、再放送をしていた『西部警察』に出会い、スカイラインジャパンの特装車である『マシンX』の初登場シーンに衝撃を受けました。普通の外観と特殊装備のギャップに痺れましたね。しかも、ダイナミックなカーアクションを目の当たりにしてしまったので、すっかり虜になりました。そのため、私の中でスカイラインといえば“ジャパン”なんです。ボディのバランスとラインがとても美しい。トランクが若干リア側に傾斜しているところや、サーフィンラインからのリアへの流れも好きです。しかしケンメリほど厚ぼったくはなく、フロントまわりはスクエア。すべてを兼ね備えたクルマといえばジャパンなんです。いつか乗りたいですね」

しかし「愛車遍歴」を伺ったところ、ジャパンを購入するチャンスはあったように思うのだが。

「ジャパンではなくレパードを選んだのも、タイミングが良かったからなんです。86も父親が通っていたディーラーで出会った個体でしたし、これまでの愛車はすべてタイミングで乗り換えてきたと思っています」

そんなオーナーは、400Rのどこに惹かれたのだろうか。

「ジャパンの好きなポイントが、V37型で復活したサーフィンラインなんです。特に、リアまわりのラインのドアからの処理がいちばん好きなポイントです。V37型の前期型もそうですが、トータルでまとまっているし、どこから見ても日産のクルマだとわかります。V37型が発売された当時は『これは、もはやスカイラインではない』との声もありましたが、やはりスカイラインなんですよ。そうだとわかるデザインのポイントだっていくつもありますしね。デザインも含めてスカイラインだと思います」

400Rとの馴れ初めは?

「2017年に欧米仕様のスカイラインとして、Q50レッドスポーツ400が発売になったので興味を持ちました。そして東京モーターショーへ行った際、日産のブースで日本での発売予定を訊ねたのですが、発売予定はないと断言されてしまったんです。そんなこともあってV37型は買わないだろうと思っていたんですが、当時乗っていた86が2回目の車検を迎えたタイミングで、やはり再び日産車に乗りたい気持ちが強くなりました。ちょうど家族を後部座席に乗せる機会が増えていた時期でもあり、勤務先で運転する機会がある社有車の日産・フーガ(Y51型)のようなセダンの使い勝手がよかったので、V37型の3.5リッターのハイブリッドモデルの中古車と、念願のスカイラインジャパンの2台をまとめてひとつのローンで購入しようかと考えていました。しかし、数年前と比べてジャパンの出物がなく、V37型の3.5リッターがモデル末期を迎えるだろうと言われている時期だったこともあり、値引きを期待して新車のハイブリッドモデルを候補に決めてディーラーへ行ったんですが、そこで、近く実施されるマイナーチェンジでレッドスポーツ400と同じエンジンを搭載するグレードが追加されるということを知りました。当時、車名はもちろん写真もありませんでしたが、私はその場で『出たら買う』と即答し、商談開始日の初日に契約しました。本気で欲しかったクルマですし、120回フルローンを組んで購入しました」

かなり思いきった行動だと思うが、周囲の反応はどうだったのだろうか?

「V37型が好きだと公言していましたし、以前から友人には、レッドスポーツ400が出たら買うと言っていました。ただ、120回ローンを組んで買ったといったらドン引きされましたけど(笑)。大きな事故さえしなければ壊れませんし、このクラスになると部品の精度も高くなるので、ある程度走らせてきちんとメンテナンスをしていれば、30万・40万キロは余裕で走るので、10年間は心配ないでしょう。ただ、ローンにしないと手が届かないし、長く乗るつもりだったので、思いきって120回という選択をしたんです」

実際に走らせてみて感じたことは?

「V37型は『走りがフーガと同じ』という声も聞きますが、乗ってみると全然違いますよね。フーガは、スカイラインと比べるとショーファーカーとして完成されています。職場にフーガがあるのでわかるんですが、同乗者を不快にさせないロールのしかたがあるんですよ。それと比べて400Rはドライバーズカーですね。後部座席にいる人が快適でなくても、きちんとラインをトレースした走りをします。足回りもスポーティーで、段差も硬く感じます。それを不快と感じる人がいるかもしれませんが、しっかりと足回りで曲がっていると感じられます。さらに、400Rの後部座席に座ってみるとわかりますが、運転席がいちばん快適に過ごせる空間になっています。比べてフーガは、どの席に乗っても快適ですね」

オーナーの400Rは、マットガードがついていることで腰高感が薄れ、車高が落ちているように感じる。ブレーキキャリパーも赤に染め上げられ、内装もダイヤモンドカットになっているなど、さりげない主張を感じる。オーナーがモディファイを施した部分はあるのだろうか?

「メーカーオプションは、BOSEサウンドシステムとサンルーフです。サウンドシステムは前の愛車(86)がドアの2スピーカーだっただけに、400Rは16スピーカーなので音質の差を感じています。それと、ディーラーオプションとしてドアのサンバイザー・ドラレコ・フロアマット・セキュリティシステム・マッドガードを選んでいます。マッドガードはエアロっぽくなっていて外観のアクセントになっているところが気に入っています。この先、メーカーから純正エアロパーツがリリースされたらいいですね。それから、HKS製のブーストコントローラーを装着していて、パーツの開発車両として協力したこともあります」

もっともこだわっているポイントは?

「クルマは走ってナンボだと思っているので、多少傷がつこうが関係なく走らせることですね。台風のなかでもこの400Rで通勤しましたし、今後サーキットを走りたいと思ったら、400Rで走ります。この先、こだわりたいポイントがあって、タイヤを性能にふさわしいスポーツタイヤに交換したいんです。400Rで唯一の不満がタイヤですね。ここでコストカットを図っているのかもしれませんが、頼りない。この馬力なのだから、値段が張ってもグリップするタイヤにしてほしかったです」

400Rの満足度は?

「妥協して買ったわけではないので、タイヤのことを除けば100%です。スペックは所有欲を満たしてくれるポイントが多いですし、それでいて何でもできるクルマですよね。買い物や遠出から、その気になればサーキットも走れますから」

最後に、今後愛車とどう接していきたいかを伺った。

「ガソリン車の走行が禁止になるまで、なんとしても維持し続けたい1台です。今でないと手に入らないクルマだし、ハイブリッドカーではない、純粋なガソリンエンジンのターボ車として最後のスカイラインになるかもしれないので、手元に残したい思いがあります。将来的にはジャパンを手に入れて、最初と最後のターボモデルで2台体制ができれば幸せかな。これで、ようやくジャパンに乗るための準備ができたともいえます。なんだかんだで、私はスカイラインが好きなんでしょうね」

正直なところ、最初はジャパンと比べると、400Rに対してはそこまで思い入れがないのではという印象があったが、それは、こちらのとんでもない誤解だった。詳しく伺ううちに、覚悟にも似た熱い想いを秘めていることを知ることとなったのだ。ジャパンも400Rも、オーナーにとっては“W本命”なのだ。そして、オーナーが「タイミング」と呼ぶ瞬間は「縁」なのだと思う。偶然のように装いながら、“W本命”を一緒に並べる瞬間が近づいているのだ。スカイラインの最初と最後のターボモデル2台体制を、ぜひ実現させてほしい。

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]

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