「MT党」オーナーの初のオープンスポーツカーは2021年式コペンGR SPORT(LA400A型)

  • コペンGR SPORT

電動化が加速し、内燃機関のクルマ…特にMT車が終焉を迎えるといわれて久しいが、ここ最近は駆け込み需要が起きているという話を見聞きするようになった。
予約受付を開始したホンダ シビックタイプRや日産 フェアレディZに関する投稿が相次いだりと、SNSでも話題になっていることは間違いない。

高性能なATやCVTが普及した現代、MT車のメリットはもはや皆無なのかもしれない。それでもMT車を愛する人々は、クルマを単なる道具だと思ってはいないのだろう。ともに走り、運転の喜びを分かち合う仲間のような存在に感じられるのではないだろうか。

  • コペンGR SPORTのMTシフト

今回の主人公も、MT車を愛するクルマ好きのひとり。以前、フォルクスワーゲン ゴルフR32のオーナーとして取材させていただいた方だ。最近、増車という形で新車を迎えたとお聞きし、再度ご登場を願うこととなった。

  • コペンGR SPORTの右サイドビュー

「このクルマはコペンGR SPORT(LA400A型/以下、GRコペン)です。新車から乗り始めて半年です。現在の走行距離は4500kmになりました。いま、私は56歳です。このGRコペンのほかに、手に入れてから約20年になるフォルクスワーゲン ゴルフR32(1JBFHF型)を所有しています」

GRコペンは、ダイハツ コペンをトヨタのモータースポーツ部門であるTOYOTA GAZOO Racingが「GR」ブランドとしてチューニングしたモデルだ。モータースポーツのなかでも、ひときわ過酷なWRCやニュルブルクリンク 24時間レースなどに参戦して培われた技術が注ぎ込まれ、通常のOEMとは一線を画す。

  • コペンGR SPORTのエンジンルーム

ボディサイズは全長×全幅×全高:3395×1475×1280mm。駆動方式はFF。総排気量658cc、直列3気筒DOHCターボエンジン「KF型」は、最高出力64馬力を発揮する。

軽快な走りが魅力のオープン2シーター・コペンに、GR専用のエクステリアとインテリアが与えられ、剛性パーツ・ショックアブソーバーなどが装着された。スポーツカーとして操る楽しさがより高められた仕様となった。

オーナーのGRコペンは5速MTモデルを選択。自らを「MT党」と称するオーナー。歴代の愛車はゴルフ一筋で、すべてMTモデル。90年型ゴルフ2CLI、96年型ゴルフ3GTI16バルブを乗り継ぎ、2003年型ゴルフ4 R32を所有。オーナーにとっては初の国産オープンスポーツカーである。

  • コペンGR SPORTのキーホルダー

そんなオーナーに、GRコペンとの出会いを伺ってみた。

「通勤車に絶対的な縛りはないのですが、ゴルフR32という車種がふさわしくなくなったこと、そして新しい駐車場を自宅の近所に見つけたことが重なったのがきっかけでした。

所有するなら、維持費を考えると軽自動車。でも楽しいクルマに乗りたいというイメージはありました。軽トラックをカスタムして、トレーラーを引かせてもおもしろいなと思っていたところ、ふと2019年に発売されていたGRコペンを思い出したんです。試乗レビューの評価も高く、以前から気になる1台ではありました。

そこで試しにWEB上で見積もりしてみると、頭金とローンで購入できそうだと分かり、商談したのが昨年7月のことでした」

  • コペンGR SPORTのパンフレット

購入時に迷いはなかったのだろうか?

「迷うくらいなら買っちゃえですね(笑)。勝手な思い込みですけど、プラットフォームが世代替えしたらコペンのようなスポーツカーは二度と出てこないかもしれませんから」

  • コペンGR SPORTのステアリング

こうしてGRコペンを契約したオーナーだが、その際にディーラーから納期未定を告げられたという。当時を振り返ってもらった。

「商談の約1週間後に契約した時点で、生産計画が立たないとはいわれていました。コロナでロックダウンしている都市があり、部品の供給が滞ってしまったためです。さらには『納⾞は年を越すかもしれない』ともいわれました。

でも、私としては全然かまわなかったんです。GRコペンとゴルフR32の車検が続いてしまうのがネックになっていたので、むしろ納車が翌年にずれるのはラッキーでした。ところが10月に入ったある日、『車体番号が出ました。年内には納車できそうです』という連絡が入り、12月に入ってすぐ無事に納車と相成りました」

  • コペンGR SPORTのミニカー

GRコペンはトヨタ・ダイハツ両方のディーラーで購入できる。オーナーはダイハツで購入したそうだが、その理由とは?

「なぜなら、メカニックが整備に慣れているだろうと考えているからです。自宅から徒歩10分ほどの場所にトヨタのディーラーがあったので、そちらでも良かったのですが、行きやすさよりはメンテナンスを優先してしまいますね」

ゴルフR32の主治医も一人と決め、長年、懇意にしているサービスアドバイザー(一般的にはサービスフロント)が別の支店に異動すると、転勤したディーラーに通うようにしているという。オーナーにとって、主治医となるサービスアドバイザーの存在は極めて重要であるようだ。

  • コペンGR SPORTのオプション、用品リスト

GRコペンのボディカラーは、現在全8色を展開している。オーナーはクリアブルークリスタルメタリックを選択。ゴルフR32同様にブルーだが、選んだ理由は?

「当初は、あまり見かけないオレンジとブルーが候補でしたが、オレンジが派手で冒険する勇気がなかったんです(笑)。そんなわけで最終的にブルーになりました」

  • コペンGR SPORTの右リア

新車の状態からモディファイは施されているのだろうか?

「GRパフォーマンスダンパーを装着しました。TV番組や雑誌の試乗リポートで『最初から絶対に装着したほうがいい!』といわれていたので、迷わず最初から装着しました。快適且つ安定した走りのためには必須アイテムなんです。

それからETC、スカッフプレート・GR専用フロアマット・ナビを取り付けました。ほかには、BRIDE製のステアリングカバーをつけて、ゴルフから乗り換えたときのフィーリングの差を少なくしました。

その他、フォルクスワーゲン純正のコンパクトな三角停止板を載せています。取材日に持参したカラーサンプルカーとトミカは自宅のTV横に飾っています。

慣らし運転が終わった時点で、エンジンコンディションを維持するためにマイクロロンを添加しています。私の場合は、新車から1000kmで初回点検をして、1500kmくらい走ったあたりから少しずつレッドゾーン近くまでエンジンの回転を上げて慣らして、2600kmほど走った時点でエレメントを交換して添加しました」

  • コペンGR SPORTのメーター

丹念な慣らし運転からは、長年乗り続けているゴルフR32と同様に丁寧な接し方が感じ取れる。

納車後、これまでに施したモディファイは?

「アルミテープ・フロントフードダンパーくらいですかね。それからエアバルブキャップ。よく⾒ると通常のゴム製のものになっていて淋しかったので、BBS製のバルブキャップに交換しました。今後、剛性感アップを図るために、SPOON製のリジカラを装着したら、モディファイやドレスアップはここまでで、あとは維持に専念します」

  • コペンGR SPORTのフロント

自分好みにモディファイを施し、GRコペンとの暮らしをスタートさせたばかりのオーナー。半年間乗ってみて、あらためて気づきがあったようだ。

「週末のドライブで観光地やドライブロードに出かけるときはGRコペンに乗っています。初めてGRコペンと出かけた日、走り出すと思わず『おっ』と声が出るほど上質な走りを実感しました。しっかりした車体で、走りの質感がすごく良いです。クルマ好きな知人を横に乗せたときも『えっ何コレ!』と驚くほどでしたよ」

「MT党」として、MT車としてのフィーリングはどうなのだろうか?

「クラッチは重めですが、慣れれば普通の感覚です。スポーツカーといえば、カチッとしたショートストロークをイメージしがちかもしれませんが、GRコペンはどちらかといえばショートストロークではありません。しかし心地いいですし、クルマとの対話がしやすいです。MTはやはり運転の楽しさを倍にしてくれますね」

  • コペンGR SPORTの左フロントビュー

オーナーのカーライフ史上初のオープンスポーツでもあるが、オープンカーとして感じたことも尋ねてみた。

「クローズ時の剛性が本当に高いなと思います。オープンにしたときは、あれだけの重さのあるハードトップが後輪の真上にくるので、前後の重量配分は良くなりますね。駆動はFFなのでフロントヘビー。それが良い方向に働いているという印象です。

だからワインディングへ行くのなら、重量配分が良くなる意味でもオープンが良いと思っています。それに、オープンにすると、太めのエキゾーストノートが聞こえるようになるんです。これもオープンにしようという気にさせてくれる理由のひとつですね」

  • サングラスや帽子などオーナーがコペンGR SPORT時のアイテム

続いて、オープンカーに初めて乗ったときのことを振り返るオーナー。

「実は以前から、⼀⽣に1度はオープンカーに乗りたいという思いはありました。初めて乗ったのはMG-RV8でした。⾏きつけの喫茶店のBMW M3(E36型)に乗る常連客が、「知り合いと1週間交換しようってことになったんだ。面白いから乗ってきなよ」とキーを差し出されたのでした。

GRコペンをオープンで乗りながらあのときのことを思い出しましたよ。周りから見られているんじゃないかという恥ずかしい気持ちもありました(笑)。

オープンカーは爽快感が良いんですけど、床下から排気の熱気が来たり、ちょっと段差のあるところに入るとスカットルシェイクを起こしたりと、クルマの良し悪しには関係なく、自動車誌のインプレッションに書いてあったことを体験できたワクワク感がありました。

人生2台目の愛車である、ゴルフ3 GTI 16バルブを買うときに、他に候補としてMG-F(とプジョー306)を考えていたんですよ。オープンカーは、乗ってみないとわからない良さがたくさんあると思います。屋根のない開放感は何にも代えがたい。

あとは、コペンのオーナー同士って、すれ違うときに手を振り合うことがあるんですよ。手を振り返すときのベストタイミングとか、相手に認識してもらえる手の振り方とか考えるのも楽しいですよね。知り合いに複数ある愛車のなかで必ず1台はオープンカーを所有しているという人もいますが、その理由がわかる気がしました。乗って良かった…!」

  • コペンGR SPORTのローリングショット

いま、乗る頻度はゴルフR32とどちらが多いのだろうか?

「出番といえばゴルフR32のほうが多いですね。買い物にも行きますし、スポーツカーであり実用車です。ワインディングやドライブロードに乗っていくのはコペンGRという乗り分けになっていきそうです。日常と非日常が手に入ったような贅沢な気持ちです」

  • コペンGR SPORTの運転席

今後、GRコペンとはどのような付き合いになっていきそうかを伺った。

「慣らし運転を終えようとしているところなので、これからクルマに自分の体を合わせていく感じです。乗り続けながら、クルマをうまく消耗させていけるのが理想ですね。人間に例えると『良い年の取り方してるね』みたいな。そのためにメンテナンスも怠らないようにしたいですし、ガソリンスタンドが生活圏内にあるうちは、内燃機関に乗り続けたいなと思っています」

  • コペンGR SPORTの右リアビュー

オーナーも語っていたが、MT車の魅力として「クルマに自分の体を合わせていく」という点がある。クルマに合った回転数を心掛け、エンジンやギアをいたわりながら、クルマのこともわかっていく。

今がMT車に乗る最後のチャンスなのかもしれない。少なくとも「内燃機関&3ペダルMT車」の新車が買えるタイムリミットは刻一刻と近づいている可能性が高い。クルマと対話する楽しさが、この先できるだけ長く続くようにと祈らずにはいられない。

(編集:vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

  • コペンGR SPORTのホイール
  • コペンGR SPORTの格納されたルーフ
  • コペンGR SPORTのフロントビュー
MORIZO on the Road