難しいことは、あんまり考えずに乗るのが丁度いい。セリカ歴16年の僕の乗り方
“ブラックマスク”の愛称で親しまれる、1984年式AA63・セリカクーペGT-Rに乗る「大町さん」。16年前に手に入れて、通勤などで日常使いをしてきたため、走行距離は44万kmを超えているといいます。
旅先でオルタネーターが壊れたり、クーラント液が漏れてレッカー車で運ばれたり、数え切れないほどのアクシデントに見舞われているそうですが……。
今回は、セリカさん×大町さん のお話をお届けします。
――維持が大変とのことですが、それでもセリカに乗り続ける理由はなんですか?
ん~、周りの圧力に負けたんです。
――圧力…とは……?
いやねぇ~、16年も乗っていると、セリカ仲間がどんどん増えていくんですよ。僕が乗り始めた頃は、“みんカラ”というブログが流行っていたんですけど、そこから繋がって友達になったりとか。
そうすると、その友達が同じセリカ乗りの友達を紹介してくれて、数珠繋ぎにセリカオーナーと知り合っていって、気付けばセリカに乗ってる人はほぼ知り合いみたいな感じになっているんです。
で、僕がもう降りようかな~って思っていると、そういう人達から「諦めちゃダメだ!頑張ろうよ!」って圧がかかってくるわけです(笑)。
――圧力というか、それは励ましですって(笑)!
あはは、そうかな~(笑)?
実は、10年前にセリカ仲間でツーリングをしているときに、東北自動車道の福島ICちょっと手前でスリップしてしまったことがあったんです。
左側面が大破しちゃってね~。ドアは閉まらないし、リアフェンダーはぐちゃぐちゃだし、あぁ……これはちょっと無理かもな……と覚悟を決めていたんです。
なぜ、僕がそこで諦めなかったかというと、一緒にツーリングに行った仲間のおかげなんですよ。雪が降っていて寒いのに心配そうに待っていてくれたり、自分達が誘わなければ、こんなことにならなかったのにって話していて。
だから圧力は冗談として、そんな素敵な友達と、もう少しセリカライフを楽しもうかなって思ったんですよ。まぁ、修理は本当に大変でしたけどね……。
――ちなみに、どこがどう大破していたんですか?
当時の傷を抉ってくるなぁ~(笑)。足回りにはかなりダメージがあって、走らせるとリヤタイヤがブルブル揺れながら回っていたり、ブレーキには少しだけ違和感がありました。
あとは、窓と灯火類が割れていたのと、ドアとフロントフェンダーは見る影も無いくらいボコボコでした。サイドミラーがかろうじて残っていたので、何となくガムテープでとめたんですよね(笑)。思い出すと切ないな〜。
――そういう状態から、どうやって修理していったんですか?
板金や曲がったフレームを元に戻すなどはショップに頼んだり、友人が手伝ってくれたんですけど、あとは自分で修繕していきました。
偶然にも、ちょうど知り合いから部品取りのクルマをもらったところだったので、何とかなったんですよね。凹んでしまったボディは、ドンドン叩いて何とかしました。
――えっ!?叩いて直るもんなんですか!?余計悪くなってしまいそう……。
これが結構いけるんですよねぇ~。クルマに関する仕事をしているわけではないんですけど、ラジコンでそういうのは鍛えていたし、1番最初に乗ったクルマを結構ぶつけていたので、ポコポコ叩いて直していたんですよ。あの時のスキルが、何十年後に生きてくるとは思いませんでしたね。
――大町さん前向きすぎです!
ちゃんと直しても、人ってそれほど見てないですからね~(笑)。パッと見、綺麗だったら全然OKなんですよ。ちょっとした傷でも耐えられないという方もいらっしゃいますが、僕なんかは、「まーた壊れちゃったよ~」ですから。
旧車乗りには3タイプいると思っていて、古いクルマを大事にする人、乗り続けていたら古くなっていた人、何となく乗ってる人。僕は間違えなく3番目です。これだと、セリカのことを好きじゃないみたいなんですけど、熱血過ぎないのが調度良いんですよ。
――それは何故ですか?
あくまで個人的な意見として聞いてほしいんですけど、維持していかなくては! 壊さないようにしなければ! って頑張りすぎると、義務感から乗っているみたいになっちゃうじゃないですか。だから乗り続けたいと思わなくなってしまうかもしれません。
僕の場合、経済的、身体的、クルマの状態が悪くなったら、売るかどうかしてしまおうと考えています。ただ……、そう思って何年も経ってますけどね(笑)。あんまりちゃんと考えてないのが、僕にはお似合いなのかな。
――なるほど。そういうことだったんですね。
色んな人がいるから、どれが正解なんて分からないですし。走行距離が44万kmなんですけど、「どうやって維持しているんですか?」って聞いてくださる方がいらっしゃるんです。
でも、当の本人が乗れるもんだなぁーって不思議に思ってるくらいだから、結局そんなもんなんですよ。
1個言えることはね、思い返してみると単なるクルマではなく、沢山の仲間を作ってくれた特別な存在だということなんです。だからこそ、綺麗な状態で乗るということが重要ではないんですよ。
錆びて凹んでいたって、走りさえすればお店に並んでいるピカピカの車よりも遥かに意味があるんです。
だからね、なーんにも考えないで乗っていれば良いんですよ。
「経済的、身体的、クルマの状態が悪くなったら、売るかどうかしてしまおうと考えています。ただ……、そう思って何年も経ってますけどね(笑)」とのことでしたが、これからもそう思って何十年後も一緒に過ごしていくんだろうなと思う筆者なのでした。
【みんカラ】
GTR ku-peさん
(文:矢田部明子)
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