新型アルファード、ヴェルファイアは構造的に不利な条件の中で、従来以上の居住空間を確保していた

  • サイモン・ハンフリース執行役員による新型アルファード・ヴェルファイアのプレゼン

    サイモン・ハンフリース執行役員による新型アルファード・ヴェルファイアのプレゼン

6月21日フルモデルチェンジの発表と同時に販売を開始したアルファードヴェルファイア。発表会の会場でトヨタ車体の技術説明員さんが、「運転してみるとこの車の良さが分かりますよ。」と口を揃えて言っていたのが印象的だった。この自信は、TNGAプラットフォームの採用や、車両後方にV型のブレース等を設定することで剛性を50%アップさせたことや、構造用接着材を最適に使うことによる車両ねじりの抑制により、操縦安定性を向上させているからだ。しかもロードノイズや風切り音対策も徹底的に行っており静粛性は従来比1/3までになっているのだ。

このように、車の基本性能が各段に向上し、先進の安全装備も装備された新型アルファードの最低価格は550万円!ミニバンの王者はついに高級車になったんだなと実感した。SNSを見てみると、高い!と言われてる人はいるものの、それほど価格に対してネガティブ意見は無いようだ。それよりは納期を気にしている人が多いことを感じる。

発表会でアルヴェルの開発責任者である吉岡から、廉価版についても検討しているが、販売の状況を見定めてという話があった。人気車種がゆえに、長納期になることだけは避けたいのだろう。しかしSNSを見てみると、すでに長納期になっているという投稿がチラホラある。それでもきっといつかは新型の4代目アルファードも3代目アルファードと似たような多彩なグレード体系になることを期待したい。

今回のアルヴェルはバリエーションが少ない。想像するに、バリエーションを絞ることで納期を少しでも短くしようとした結果、グレードだけでなく、外板色の設定も少なくしたのだろう。3代目アルファードが2015年にフルモデルチェンジしたときは7グレード、24型式あったが、今回の4代目アルファードは2グレード、6型式である。外板色は3代目は7色、4代目はプラチナホワイトパール、ブラック、プレシャスレオブロンドの3色になっている。

しかし、Zグレードは3代目アルファードの中間グレードの売れ筋だし、外板色は売れ筋のホワイトとブラックを揃えているため、バリエーションは絞られているものの、人気のあるカラー、グレードに絞れているため、多くの人が困ることはないだろう。街中を走っている殆どは、ホワイトパールかブラックですもんね。

走りも静粛性もよくなったアルファード、ヴェルファイアの室内レイアウトはどうなったのか気になるとこだ。というのも、TNGAプラットフォームの採用、19インチ大径ホイール、厳しい衝突安全性能への対応、これらの影響により、フロント部分は長くなり、ドライバーの着座位置は後方に押しやられることになっているからだ。
そうなると、フロントが長くなった分だけ全長を長くしないとは乗員スペースは狭くなる。そのため、フロントが長くなった長さを全長に足したくなるが、設計上は機械式駐車場などでの利用が困難な5mを超える可能性がある。そんな過酷な条件なのだが、室内長は従来型とほぼ同じサイズを確保しつつ、全長を4955mmに収めているから素晴らしい。

しかし室内長はカタログ数値でみると、3,210mmから3,005mmに短くなっている。これは計測する部分の違いによって発生した誤差のようなものだ。といのも室内長はインパネ中央の一番飛び出ている部分から最後列のシートバックまでの長さだ。今回のアルヴェルは大型モニターが全車装着されているため、その分従来モデルと比べると不利になっている。そのために数値上は短くなっているが、実質は同じと考えてよい。

またホイールの大径化などよりフロントタイヤ中心部分とステアリングまでの横寸法が従来モデルより長くなっている。長くなると、ステアリングギアボックスとステアリングホイールの間にあるシャフトが寝る(傾きの角度が小さくなる)ことになる。
この寸法が短くなると、トラックみたいにフロントタイヤの上にドライバーシートがありシャフトは立っている状態、長くなるとセダン、スポーツカー的なパッケージに近づき寝ている状態になる。
今回のアルヴェルは従来よりシャフトが寝ているため、ステアリングに角度がつき、ドライバーがセダンのように自然に運転できるシートポジションが取りやすくなっている。
しかし、1列目のシートは、座席標準位置が後方に25mm下がったので、その分、後方の空間は狭くなるということだ。聞きなれない席標準位置とは、シートが前後に移動するため、設計する時に基準位置を定め、車をつくりこむ過程で標準となる重要な位置を指す。

このような状態で、前後席空間を従来以上に確保するために、2列目シートが30mm、3列目シートが35mm後方にさげた。結果、フ1列目と2列目シート間で5mm、2列目と3列目シート間で10mm空間をひろげられた。もちろんシートはスライド可能なため、この数値以上に広げたり、狭くすることは可能だ。そのため、3列目シートを最後方までスライドさせてしまうと、従来モデルよりリアの荷室部分が狭くなるが仕方がないだろう。
さらに2列目シートへの乗降性も良くなっている。他の車種でも展開されているが、スライドドアに装備されるユニバーサルステップ(オプション)により乗り降りは各段と楽なることを取材時に感じた。しかも開口部分は4cm大きくなっている。これはスライドドアの下部にあるロアローラの形状を変更したことや、スライドドアのフロント側の形状をより垂直にたてることにより得られている。

走りや操縦安定性、静粛性の向上だけでなく、室内のレイアウトにも更なるゆとりがうまれた新型アルファード、ヴェルファイア。廉価版の登場を心待ちにしている人も多いのではなかろうか。
 

GAZOO編集部 岡本)

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