大切なハチロクだからこそ、365日触れていたい。1984年式トヨタ スプリンタートレノ GTV
頭文字Dがきっかけでハチロク、そしてトレノの存在を知り、大人になって自らの愛車として選ぶ……。この作品が若い世代の方たちをクルマ好きに導いたことは確かなようです。そして、ハチロク、そしてトレノをこよなく愛する若きオーナーの手によって、40年も前のクルマが美しく生まれ変わり、後の世に受け継がれていくのかもしれません。
今回、取材させていただいた「ぞのさん」も、そんな1人といえそうです。
―― まずは、ぞのさんの愛車について教えてください
愛車は「1984年式トヨタ スプリンタートレノ GTV」です。手に入れてから4年半、現在の走行距離は約23万km、私が手に入れてからは約8万km走りました。
―― ぞのさんがクルマが好きになったのは何才頃でしたか?
5才頃だったと記憶しています。当時、両親とビデオ屋さんに行ったときにたまたまアニメ版の頭文字Dが目に留まり、手に取ってみたんです。実際に観てみると、クルマが横を向いて走っている(ドリフト)姿がとてもカッコイイと思ったことがきっかけでしたね。
でもこのときはハチロクに魅せられたというより、クルマがドリフトしていることの方が衝撃でした。
―― そこからハチロク、そしてトレノに惹かれていったきっかけがあったんですね
中学校を卒業した後は工業高校に進学しました。周りにクルマ好きが割と多くて、クルマの話をしているうちにインターネットで中古車検索サイトを見るようになっていったんです。
まだ運転免許は持てないときでしたが「やっぱりハチロク、そしてトレノに乗りたい」と思うようになりましたね。それがいまから10年くらい前です。
―― 10年くらい前っていうと、ハチロクの値段っていうのは今ほどじゃないにしても、もう上がりはじめていた時期ですか?
いまでも当時の値段を覚えているんですが、私が手に入れたトレノでだいたい200万円くらいでした。親にもトレノを買いたいということを伝えたんですが、価格に驚いてしまって。
―― つまり、このトレノが最初の愛車ではなかったのですね
トレノがNGとなってしまったので、先代のマツダ アクセラ(セダン)の新車を購入して3年くらい乗りました。教習車がこのアクセラで、使い勝手も分かっているし選んだ感じですね。
―― そして満を持してハチロクに乗り替えたんですか?
トレノの売り物がないか中古車検索アプリをチェックしていたとき、たまたま頭文字Dの主人公、藤原拓海が乗っていたかのような雰囲気のトレノを見つけたんです。掲載されている画像をよく見てみると外装の状態がきれいで、すぐにお店に連絡をして、ハンコを持参して向かいました(笑)。本当は見るだけのつもり・・・だったんですけれど(苦笑)。
本当はある程度貯金してから買うつもりだったんですが、思いのほか早く気になる個体が見つかったので。思い切って84回ローンを組んで手に入れました。当時、GAZOO.comの記事にも影響を受けましたね。
―― お役に立てて光栄です(笑)。まさに即断即決ですね。現在の愛車が納車された日のことを覚えていますか?
中学生の頃から付き合いのある友人や先輩を誘って納車式をやりました。その後、他の友人も誘ってラーメンを食べに夜ドライブ行ったんですが、実感が湧かなくて……。「夢なら覚めないで欲しい」と思いながら運転していましたね(笑)。
―― ついに夢が叶った瞬間ですもんね。自分の愛車にも関わらず、現実味がないというか…
はい、そうなんです。でもそのいっぽうで、高年式のアクセラからの乗り替えだったので、初めてトレノを運転した感じは、乗り心地がよくないのもあり「軽トラか!?」と衝撃を受けたほどです。
エンジンを切る際、奥のボタンを押しながらでないとキーが抜けないことを知らなかったため、苦戦しましたね(苦笑)。
―― 思い出深い納車日になりましたね。現在の愛車を手に入れてから、ご自身のカーライフにどのような変化がありましたか?
納車直後から本格的にSNSをはじめたんですが、多くの方からフォローしていただきました。トレノが納車されたことをTwitter(現X)にツィートしたらすごい反響がありまして。フォロワーさんが一気に増えたんです。
同様にInstagramにもアップしたんですが、同じ県内のハチロク乗りで集まってツーリングでも行きませんか?とお誘いいただきまして。実際にお会いしてから人のつながりの輪がグッと広がりましたね。
―― クルマはコミュニケーションツールなんていいますが、まさにそのとおりのカーライフですよね。ぞのさんが現在の愛車を手に入れてから、手を入れた箇所を教えてください
なにしろ40年物のクルマですし、修理がメインです。ここ2〜3年、時間を掛けてゆっくり走りながら直して、現在ようやく安心して乗れるようになったところなんです。
最近はハイテックツートンにオールペンし直したり、運転席と助手席をBRIDEのバケットシートに変更、ホイールもワタナベのエイトスポークに交換しました。現在でも純正部品は出ますし、社外やヘリテージパーツも出始めていますので、購入できるときに確保しておきたいです。
―― ご自身の愛車に関することで、自慢できるポイントをぜひ聞かせてください
やはりこの時代にしかない、トレノならではのリトラクタブルヘッドライトですね。ライトが開いている状態が可愛いですし、閉じている状態だとスタイリッシュでかっこよく映りますし。
―― リトラクタブルヘッドライトはトレノオーナーならではの特権ですよね。そんな愛車とのカーライフでいちばんの思い出をぜひ聞かせてください
トレノを買った年に、隣県で開催されたハチロクのミーティングに仲間と参加したときのことです。
購入した当時、エンジンの調子が悪く、オイル漏れ、オイル上がりによる白煙、エンジンストールがたまにある状態でオイルを足しながら往復しました。移動中はとてもヒヤヒヤしましたが、最後はエンジンを載せ替えるためにショップに預けて帰ることができました。最後まで止まらずに送り届けてくれたトレノにはとても感謝しました。
―― トレノなりの日頃の感謝だったのかもしれないですよね。愛車で「もっともこだわっているポイント」はどこですか?
見た目を純正に保ちつつ、部品を交換しつつ、快適仕様にしていくことを目標にしています。
エンジンは敢えてノーマルです。購入時、エアクリーナーは社外品が装着されていたんですけど、あえて純正に戻しました。
オールペンをきっかけにシンプルな感じに仕上げたくなったんです。見た目は純正っぽいんですけど、内装の照明も電球の代わりにLEDを使っていますし。一応ナビも使えるやつも入れたりして、中身は快適に走れるような感じの仕様を目指しています。現時点での完成度は60〜70%くらいですかね。
――そんなトレノの「もっとも気に入っているポイント」はどこですか?
オールペン時に、一緒に前後フェンダーをプチワイド化してもらいました。フロントフェンダーは社外品のFRPですが、リアは純正のフロントフェンダーを使用しています。
―― 今後、愛車に対して手を加えてあげたいポイントを教えてください
車庫調を新調します。それと、ミッションをオーバーホールした予備のものに交換するのが目標です。そのあとは燃料系ですね。燃料タンクやポンプ、フィルター類で新品出るものは揃えて換えたいです。ゆくゆくはフルコン化を計画中です。
―― ぞのさんが愛車を維持するうえで気をつけていること、意識していることを聞かせてください
できるだけ毎日乗るようにしています。通勤も出掛けるときもこのトレノで行きます。私が住んでいる地域は雪が降り、塩カルがたくさん撒かれるんです。その対策として下廻りの塗装もしっかり処理してありますし、走った後にはその都度、高圧洗浄で洗っています。現在は青空駐車なので、いずれは屋根をつけてあげたいですね。
―― ぞのさんの影響(?)で、弟さんも86デビューしたそうですね
4才下の弟がいるんですが、私がトレノを所有していてカッコいいなって思うようになったみたいです。
決定打になったのは、アクアに乗っていたとき、点検でディーラーに行ったらたまたまGR86を納車するお客さんがいて、納車式をやっていたいそうなんですね。弟がその様子を見ていたら、オーナーさんが乗せてくれたみたいで。このとき「俺もGR86を買う!」と決めたみたいです。
―― ご自身のトレノと比べてGR86の印象はいかがですか?
たまに運転させてもらうんですけれど、トレノよりもパワーがあって快適。運転しても楽しいって思いますね。金銭的に余裕があるならGR86も欲しいです。
―― ぞのさんにとって「愛車」はどのような存在ですか?伝えたいメッセージがあればぜひ!
大切な愛車であり、同時にメインカーでもあるので、あまりていねいに扱いすぎないように心掛けています。車内で飲食や寝泊まりも普通にしますし、土足厳禁にもしていません。自分にとってはまさに「相棒」です!そんなトレノに対して「いつも行きたいところに連れて行ってくれてありがとう。これからもよろしく」と伝えたいです。
内外装、そしてエンジンルームもすみずみまでお手入れの行き届いたぞのさんのトレノは、人目を引く素晴らしいコンディションです。
間違いなく大切な愛車だけど、クルマとしてきっちり接する。いわゆる「盆栽」ではなく、毎日乗る!やはりクルマは乗ってナンボの乗りもの。理想的な愛車との接し方を実践しているぞのさんのカーライフは、世代を問わず学ぶべきところがありそうです。
<取材・編集 株式会社キズナノート>
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