ハリアー 開発責任者に聞く(2/4) ― 自分が欲しいクルマ ―

ちょっと着崩したフォーマルとハリアーネス

​お客様の目に入りやすいインパネアッパー部に、有彩色を取り入れた大胆な配色構成。
スクエアなLEDの瞳と切れ長な眼差しの印象的な目玉。

  今回復活を遂げる3代目ハリアーの開発キーワードは「LION but NEW~高級・進化・新規」です。「LION」が意味するのは「初代のクルマそのもの」と「初代を開発したメンバーたちの『新しい市場を作るんだ!』という意気込み」です。それを大切にしながら「新しいメンバー」が「新しいハリアーを、自分が欲しいクルマに仕上げる、日本専用車として、日本人が日本人のために開発する、という思いや気概」を「NEW」に込めました。そしてサブキーワードが、「高級」・「進化」・「新規」です。

「高級」とは具体的には、高級車の代名詞である静粛性、乗り味、高級装備であり、質感が高く広さを感じる室内などを指します。「高級」にはいろいろな解釈があり、クラウンの高級もあれば、レクサスの高級もあります。そこで3代目ハリアーの高級を、特に意匠面では「ちょっと着崩したフォーマル」と定義して開発しました。

クラウンが「正統派のフォーマル」であれば、ハリアーは「ちょっと着崩したフォーマル」。タキシードで言えばブラックじゃなくて紫だったり、タイやベルトなど小物で個性を演出する。誰がみても高級なんだけど、ちょっと違っている。捻りの効いた大人の遊び心があるという感じです。

例えば、3代目ハリアーの内装ではお客様の目に入りやすいインパネアッパー部に、有彩色を取り入れた大胆な配色構成になっています。通常はアッパー部は黒で、下にベージュやグレーを入れますが、このクルマはちょっと違います。また、天井は明るい色を配色しますが、このクルマは黒です。この他にも、3代目ハリアーの随所に「ちょっと着崩したフォーマル」が造り込まれています。

次に「進化」とは流麗なスポーティさと車格感を併せ持つ、積極的正常進化した外形。そして今回取り組んだダウンサイズと低燃費、さらにはラゲージの使い勝手です。

特に外形を積極的正常進化といっているのは、ハリアーのDNAを引き継ぎ、形をあまり変えることなく、結果的に正常進化に落ち着いたのではなく、それをあえて狙って積極的にそうしたという意味です。

水平基調のプロポーション、前傾したクォーターピラー、でっかい目玉(ヘッドランプ)で、グリルがそれより高い位置にある。こうしたハリアーらしさを「ハリアーネス」と呼んで、しっかり継承していくことにしました。

しかし、一方で、フロントオーバーハングを長めにとり、リアを短くしてインバランスなプロポーションにすることで動きのあるダイナミズム、シュッとしたスピード感を表現していたり、「でっかい目玉」を「印象的な目玉」と言い換えて、見たことがないようなスクエアなLEDの瞳と切れ長な眼差しの目玉に変更。しかし、グリルはきちんとその上にあるという具合に、伝統の継承と新しさを融合し、誰が見てもハリアーだけど、斬新でより一層スポーティーなクルマ、そして、色気があって艶やかなクルマに進化させています。

そして3つ目の「新規」とは、装備、操作性における従来にない新しさです。2代目ハリアーには多くの新技術や最新装備が搭載されましたが、3代目はこれを上回る「新しさ」を投入しています。また、日本人が日本人のためにつくる日本専用車として開発したさまざまな機能や改良も「新規」です。

日本人に合わせて乗降性を高めたヒップポイント。リアのワイパーの停止位置を変えたり、フロントピラーをスリム化し外側に移動したり、助手席側のドアミラーを後方に配置することなどで良好な前方視界、後方の視認性拡大に努め、日本人にとって運転しやすいSUVにしたこと。さらに、リアコンビネーションランプでは、点灯時にはロの字のようなループ状に発光し、先進的なリアビューを演出するとともに、内側にいくに従って暗くなるグラデーションで「わび・さび」を表現するなど、日本人ならではの緻密なつくりや表現のこだわりも新しさです。

​お客様の目に入りやすいインパネアッパー部に、有彩色を取り入れた大胆な配色構成。
スクエアなLEDの瞳と切れ長な眼差しの印象的な目玉。

自分が欲しいクルマをつくろう

終始楽しそうに語る、有元チーフエンジニア。

4年前、プラドのチーフエンジニア時代に「チーフエンジニアというのは自分自身の中に"こうしたい"という想いを描き、そしてその想いをメンバーに熱く語って、みんなをぐいぐい引っ張っていく、そんなタイプの人。ロックバンドに例えれば、自分で歌詞も曲も書いて、そして自らそれを歌うリードボーカル。しかし、自分はベーシストだからチーフエンジニアという仕事には最も向いていない」というお話をしたと記憶しています。この考えはいまも変わりありません。

ただ、今回のハリアーの開発ではそんな苦労も少なくて済みました。なぜなら、このクルマを開発しているメンバーはみんな発売されたら自分で購入しようと思っていたからです。チーフエンジニアが語らなくても、みんなそれぞれが「このクルマをこうしたい」というイメージもっていた。だから、極端な話、私はそれを聞いて「それじゃあ、そうしよう。それでいこう」っていっていればよかった。先頭に立ってぐいぐい引っ張らなくてもみんなが勝手にやってくれる。すごく楽でした(笑)

そして、開発に行き詰まった時、メンバーにやる気を起こさせるのも簡単でした。「お前はこのクルマを自分で買うんだろう。なのに、これでいいの?」と問いかければ「いやー、駄目です。もっとこうしなくっちゃ」となる。「じゃあ、頑張ろうよ」の一言で済みました(笑)

とくにハリアーが大好きなメンバーばかりを選りすぐって開発したわけではありません。やはり、ハリアーというクルマは開発メンバーも欲しくなるくらい魅力的なクルマだということでしょう。さらには、開発メンバーだけでなく世の中全体にも、きっと3代目ハリアーに対する期待と渇望感があるのではないかと思っています。

終始楽しそうに語る、有元チーフエンジニア。
MORIZO on the Road