ハリアー 開発責任者に聞く(3/4) ― 高級感を創る ―

ベーシストのこだわり、Part2

​室内全体に漂う高級感とその真ん中にiPadのような先進性を感じさせる新しさを配置して融合。
​深い照りのある質感を表現することに成功。本物の高級を超えた高級感を実現。

私自身、誰にも負けないくらいのこだわりを持って、このクルマの開発に取り組みました。とくにこだわったのは、コックピット周りの室内空間です。

ダイナミックなインパネのアーチ形状と堂々としたセンタークライスラー部の組み合わせで、高級感漂うゆったり感とスポーティなセパレート感が融合した室内空間を演出したかった。室内全体に漂う高級感とその真ん中にiPadのような先進性を感じさせる新しさを配置して融合させる。それはまさに二律双生(矛盾を克服して両方成り立たせること)でした。

開発途中でナビのディスプレイに2mm程度の樹脂の額縁がありましたが、iPadのようなイメージを出すためにも全面ガラスにすることにこだわり続けた。そしてiPadのような直感的な操作ができる静電式を採用し、両脇の静電タッチスイッチを漆黒で仕上げ、高輝度シルバーでコントラストをつけました。

加えて、設計時代に経験したオーディオや四駆へのこだわりは当然です。とくに、ハリアーの場合は街中を走ることが多い、生活四駆。だから、従来のフルタイム四駆は必要性が少ないうえに、重い。さらに、ステアリングを切りはじめた時も四輪が動いているので曲がりにくい。そこでヴァンガードで採用していた軽量で必要な時だけ四駆になる4WDに手を加え、ステアリングを切ったら四駆になるように制御を変更し、VSCとの協調制御を入れて使うことにしました。

これにより、ステアリングの切りはじめはまだFFなので、すっと頭が入り、その瞬間から四駆になって、コーナリングが安定する。雪道でもワインディングロードでも、また街中でも、ステアリングを切れば四駆になる楽しい四駆になっています。

「高級」を追求し始めたら切りがありません。本物の木目や本皮を使用したり、高級を演出する新しい機能や装備を独自予算で開発していたら、クルマの価格がどんどん高くなる。それで「お買い得」ではない高嶺の花のクルマになったら本末転倒です。でも知恵を絞り、諦めずに努力すれば、お金をかけなくても高級は実現できるのです。

例えば、木目調の加飾。3Dドライ転写法によって、天然の木目素材をモチーフに本物感、工芸品の質感を追求した結果、ニスを吸って沈みがちなローズウッド部分の色味をあえて強調することで、天然素材では得られない深い照りのある質感を表現することに成功しました。つまり、本物の高級を超えた高級感を実現したのです。

​室内全体に漂う高級感とその真ん中にiPadのような先進性を感じさせる新しさを配置して融合。
​深い照りのある質感を表現することに成功。本物の高級を超えた高級感を実現。

このクルマを買って本当によかった!

「こだわりの強い、ハリアーのお客様のために!」と開発エピソードを語る有元チーフエンジニア。

さらに、みんなで高級感創出活動を実施し、高級を研究した結果、「動くものの動き方と音」が重要であることに気がつきました。そこで、こだわったのがインパネの両脇にあるサイドレジスタのシャットダイヤルのフィーリング。クリックのしっとり感です。ここは何度も触って、チューニングを繰り返しました。クリックすると吸い込まれるように閉まる。固すぎず、柔らかすぎず。絶妙のフィーリングに仕上がっています。

同様に小物入れとカップフォルダーのふたの開閉。同時に押すと、2つが同じスピードで開きます。その開き方の、最初加速した後に減速するその動き方にもこだわって開発しました。

さらにはエンジンフードを開くときのロック解除の音。販売店のショールームでお客様がエンジンフードを開けると、バシャーンという大きな音がショールーム内に鳴り響きます。この音を静かにしたくて、スプリングの中にゴムホースみたいなものを入れて、ドコっという低くて静かな音にしました。

これらは何か新しく開発するのではなく、チューニングの範囲ですから、手間と時間はかかりますが、コストに跳ね返ることはありません。お金をかけない高級感創出活動の一例です。

しかし、もしかしたら、些細な高級にこだわっている。そんな高級なんて、お客様は気がつかないかもしれない。と、思われるかもしれません。確かに、外装や内装の目立つところと違って、お客様はそれにいつ気がつくかは分かりません。

でも、何かのきっかけで、ふとそれに気がついた時、「こんなところまでこだわっているんだ!いいフィーリングしてるなあ。俺は本当にいいクルマを買ったなあ」と、しみじみ歓びをかみしめていただけるはずです。クルマへの愛着やこだわりの強い、ハリアーのお客様ですから間違いありません。

こうした高級感創出活動によって生み出された些細な高級はこのクルマのいろいろなところに散りばめています。ぜひ、実車を見て、乗ってみて、探してください。

また、私たちはこだわりの強いハリアーのお客様に「選ぶ楽しみ、悩む歓び」を提供します。「選べるダークカラー」として、エクステリアに「ミステリアス」「ゴージャス」「フォーマル」「インテリジェント」「シック」と名付けた5色のダークカラーを設定(他に、ホワイトパールとシルバーメタリックも選択可能)。インテリアには3つのダークカラーテイストがあり、どの組み合わせにするかは楽しみながら、大いに悩み、歓んでいただけると確信しています。

「こだわりの強い、ハリアーのお客様のために!」と開発エピソードを語る有元チーフエンジニア。
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