「イジって楽しもうと思ったけれど…」前オーナーの意志を引き継ぐ程度極上のマークII(JZX100)
営業マンとして日常のほとんどを社用車に乗って過ごす藤原さんにとって、マイカーは休日の遊びのためと割り切った存在。
このマークIIもそのつもりで手を出したはずだったのだが、とある理由で「一生モノの付き合いになりそうだ」と話す藤原和史さん(48才)。
藤原さんの愛車は、平成8年式のトヨタ・マークII(JZX100)。
近年は大衆車のイメージから打って変わってカスタム用のベースカーとして中古市場でも人気な100系マークII は、1996年に兄弟車のチェイサー、クレスタとともにフルモデルチェンジが行われデビューしたトヨタを代表する4ドアセダン。
そのなかでも2.5Lターボの1JZ-GTEエンジンを搭載したスポーツモデルのツアラーVだ。
クルマ好きになるキッカケは、高校時代の友人の影響が大きかったと当時を振り返る藤原さん。
「高校の当時は島根に住んでいました。高校3年のとき、在学中に免許を取った友人がクルマのカタログを学校に持ってくることがあって、そこから周りの友人も含め『うらやましいなあ』と興味を持ち出したのが始まりでしたね」
高校を卒業した藤原さんは、現在も務める埼玉県に本社を構え全国に支店を持つ会社へ就職。
研修のため2年間を埼玉で過ごしたのち、20才で大阪に転勤となった際に、蓄えた貯金をはたいて初めての愛車であるマツダ・ファミリアの7代目(BG系)となるモデルを購入した。
「高校時代にCMを見て、見た目のカッコよさに惚れたクルマでした。CMでは黒いボディだったんですが、自分が買ったのは赤色のハッチバックのインタープレーでしたね」
次の愛車は同じくマツダ・ファミリアのモデルチェンジ後の8代目にあたるモデル(BH系)。
「青色のファミリアNEOでした。手ごろで良いかなと思っていたんですが、いざ乗ってみると2ドアで友人と一緒に荷物を乗せたりすると不便だったので、1年で乗り換えちゃいましたね」
そこから、地元の親戚が乗っている姿を見て興味を持ったという日産・プリメーラ(P10型)が藤原さんにとって3台目の愛車となる。
「ホントはMTが良かったんですけどなかなかタマが見つからず、ATだけど荷物も積みやすいと思って買った4ドアのプリメーラでした。そのときからカスタムにも興味が出だして、足まわりやマフラーをイジったり、オーディオもデッキやリヤスピーカーを交換したりしていました」
ところが、2年ほど経ったころに大阪市内へと引っ越すことになり、近くの駐車場が月5万円という相場だったため、島根の実家に愛車を預けておくことに。
「3人兄弟の真ん中の弟から『普段乗りのクルマがないから乗らせて欲しい』と頼まれて貸していたんですが、単独事故でボディが真ん中からグシャっとくの字に…。弟にケガがなくて幸いだったんですが、残念ながらプリメーラは廃車になってしいました」
その後、転勤で大阪の別の拠点に引っ越し、日常の足が欲しくなるタイミングがやってきた石原さんに、自動車整備士となった3人兄弟の末っ子のツテで4台目の愛車との縁がやってくる。
「弟のお客さんで、自分も知っているオーナーが乗っていたトヨタ・チェイサーのアバンテロードリー(GX81型)を個人売買のカタチで手に入れました。ホイールを替えて、リヤスポも追加していたくらいのほぼノーマルだったので、これもプリメーラみたいにイジっていこうかなと思って乗り始めましたね」
「チェイサーに乗っていたころに奥さんと付き合い始めたんです。27才で結婚して長男ができたのと車検のタイミングが重なって、ボンネットはもう押せば穴が空くような状態になっていたし、このまま乗るのも不憫かなと思って、三菱のシャリオグランディスへ乗り換えました」
その後、またもや転勤をキッカケに兵庫県に自宅を持つようになったという石原さん。
仕事では取り引き先との直行直帰がほとんどのため、自家用車には乗らずに社用車のカローラフィールダーが日常の移動手段として定着。
2016年からは高知県へ単身赴任となり、現在も隔週で家庭のある兵庫と高知を行き来する生活を送っているという。
現在の愛車であるマークIIはそんな環境のなかで手に入れることとなった1台だ。
「高知に来て1年以上経って、趣味もこれといって持っていないので、ひさびさにクルマをイジって乗るのもいいかなと思ったんです。また一番下の弟に相談していたら、100系のマークIIを売りたい人がいると連絡があったんです」
過去に、家庭の事情でGX81型チェイサーを手放した経験のある石原さん。その2代先のモデルである兄弟車の100系のマークIIにも、特別な思い入れが存在したという。
「最初に免許を取るときに乗った教習車もチェイサーだったし、友人もマークII、クレスタに乗っていた時期もあった上に、紹介してもらったマークIIは発売当時に指をくわえて見ていたツアラーVだったんです。弟から届いた写真を見たらBBSのホイールを履いているくらいのノーマル風で、これはイジりがいがありそうだと思って購入を決めました」
ところが、いざ現物を見てみるとその状態のあまりの良さに、当初から思っていた考えが一変したという。
「憧れの1JZターボだし、マニュアルに載せ換えたりして色々と遊ぶような乗り方を想像していたんです。だけど、車体を見たら8万キロくらいしか走行されていない上に、とてもキレイに乗られていて外装も内装もピカピカな状態で、これをイジって乗るなんてとても恐れ多いと。
それに弟の大事なお客さんから譲ってもらったクルマということもあって、この状態をキープしてきた前オーナーのためにも、なるべくこのまま大切に乗り続けようという気になりましたね」
そういった経緯で2018年に藤原さんの愛車となったマークIIは、手に入れたままのノーマルコンディションを維持できるよう、藤原さんが楽しむための最低限のカスタムを施したうえで愛情を込めて乗り続けられていることがひと目で分かるような仕上がりだ。
純正から交換したパーツはダウンサスと、プリメーラ時代からサウンドとスペックが気に入っているというHKS製のマフラー、それにTRD製のシフトノブといった具合。しかも、取り外した純正パーツは家に保管しているという。
もうひとつ、エンジンルームにはもともとタワーバーレスだった車体にTRD製のタワーバーを追加。体感的には気持ち程度だったそうだが、外観はノーマルのまま、せめてものプラスアルファを楽しむための石原さんのちょっとした遊び心が伺える。
室内も純正のオーディオシステムを取り外したくないという理由で、カーナビのモニターはあえて外付け可能な独立タイプを選んでいる。
貴重なサンルーフ付きモデルというのも、石原さんにとっては愛着を増す部分。モーターの故障やモールの劣化を防ぐために普段は開閉操作も避けているとのことだが、今回はせっかくの撮影機会ということもあってチルトさせていただいた。
最近は水が入っていて継続車検に不安があったというヘッドランプのコーナーレンズを交換し見た目もリフレッシュ。
前期後期でのデザインの違いを知らずに購入して思わぬ出費があったというが、思い切って左右ともに交換して美しさを保っている。
購入してからの4年間で走行距離は6000キロを重ねた程度にとどまっているが、隔週で兵庫の家族が待つ自宅へ行く際はなるべくこのマークIIに乗ってエンジンを動かし、洗車も欠かさずにコンディションをキープするための努力を行っているという。
「弟にはいまでも感謝していて、自分にとっては『出会いのクルマ』といったかんじです。だんだんかかる維持費は増えていっていますけど、ずっとこのまま乗り続けていきたいですね」
こうして歩んできた石原さんとマークIIとの4年間。前オーナーの意志を引き継ぎ、まだまだこれからも長い道のりをゆっくりと進んでいきそうだ。
取材協力:大蔵海岸公園
(⽂: 長谷川実路/ 撮影: 稲田浩章)
[GAZOO編集部]
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