2台乗り継ぐ510ブルーバード。懐かしの音に揺さぶられる心
故郷でおじさんが乗っていたという、510ブルーバード。何か思い入れのあるクルマに乗りたいと思った時に、そういえばそんなクルマがあったな……と、ふと頭に浮かんだそうです。
今回の取材対象者である「こうさかさん」は、そんな510ブルーバードが初めての旧車だったとのことで、電話越しは笑顔であろうことが分かる嬉しそうな声で話してくれました。
しかも、セダンからクーペに乗り替えもしているそう!
今回は、こうさかさん×510ブルーバードのお話をお届けします。
―――おじ様が510ブルーバードに乗っていたのは、こうさかさんが何歳の頃ですか?
それも詳しくは覚えていないくらい前なんですけど、写真を見る限り、小学校入学前なのかなと。
僕の親がワンボックスに乗っていたから、元気に走るブルーバードのようなタイプのクルマがとてもカッコよく見えたんです。助手席に座って、買い物やドライブによくついて行っていました。
―――当時は、どんなところがカッコ良いと思っていたのですか?
カッコいいとは思っていたんです。それは間違いなく!だけど、あの…、実は……。
―――え?なんですか?まさか、覚えていないとか言うんじゃないですよね?
ん〜。まぁ、そんな感じです。あはは(笑)!
―――いやいやいや!どうしよう……。これ、記事として成り立たないです〜
あはは(笑)。でも、大丈夫ですよ。鮮明に覚えていないというだけで、乗っていくうちに、当時はこの部分が好きだったのではないかと予想される、胸が熱くなるポイントがありましたから。
―――それはどこですか?
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最初に購入した510ブルーバードセダン
主には、エンジンやマフラーの音です。その独特の音を聞いていると、あぁ、この音この音、懐かしいな〜と、なんとも言えない気持ちになるんです。
耳を澄ますと、吸気音やミッションの音がするんですけど、子供の頃はこれがなんの音か分からなかったんですよ。今はそれが分かるような歳になったんだなぁと、感慨深い気持ちになったりもしますね。
あとは、ラジオの「ザザザザー」という音、ドアを閉めると鳴る「ボンッ」という音。体に染みついているんでしょうね。
―――大人になって、カッコいいなと思ったところはありますか?
クーペならではのボディーラインにしっくりくる、テールレンズの形ですね。左右のレンズが一直線で繋がっていて、ウインカーを出すとシーケンシャル仕様で光るんです。
当時は“ハミングテール”と呼ばれていて、今ほど速く流れるように光りはしないんですけど、ぽ、ぽ、ぽって内側からゆっくり光っていくのが好きなんです。
―――実際に運転してみてどうでしたか?
僕のは“SSS”というスポーツグレードだから、ツインキャブ仕様でタコメーターが付いていたり、ディスクブレーキが装着されていたりなど、走りに特化しているんです。
高速道路も、80km /hはおろかぐんぐん加速してくれるし、車重が軽いということもあって、ノーマルなのに軽快でキビキビ走ってくれます。だから、走っているとスカッと爽快な気分になりますね。
さっき話した通り、僕はこのクルマが奏でる音が好きだから、それを聞きながら風を切って走れるって、自分にとってかけがえのない時間だと感じています。
―――なぜか、私の旧車のイメージが、高速道路では左車線を走行なんですけど(笑)、510ブルーバードはそんなことないんですね。取材をしているとそういった方が多かったから
なるほど。なんとな〜く、分かるかもしれません(笑)。それでいくと、510は渋滞する時間にドライブしないからということもありますが、燃費は街乗りで12km /ℓです。
―――すごい……。あっ!じゃあ、維持が大変とか!?
なんか、マイナス面を話させようとしている気が……(笑)。
―――いやいや、断じて 人の不幸は蜜の味 じゃないですからね!
……。
まぁ、それはそれとして。初めての旧車ということで不安はあったのですが、これが意外といけたんです。というのも、人気車種だから専門店やメーカーからパーツが販売されているんですよ。
だから、壊れたら絶望的というわけではないんだな〜と。これなら大丈夫だと思ったので、4ドアセダンの後にクーペに乗り替えました。
―――もう、締めに入ろうかと言う時に、衝撃の事実です。セダンからクーペですと?なぜ乗り替えを?
だって、クーペの方が見た目がカッコ良かったから。何がすごいって、ブルーバードからブルーバードへと乗り替えたいと思わせる魅力が、このクルマにあるというところなんですよ。
エアコンが効かないから、夏場にドライブするなら朝5時の涼しい時間帯だし、サーモスタットが寒冷地仕様だから、夏は水温が上がって乗れないみたいなこともあったんです。今は修理しましたけどね!
もっというと、自動運転が囁かれている中、マニュアルだし重ステだし操作は全部自分でやらないといけない。そうした全てのことは、面倒くさいと言ったらそれまでなんだけど、それが気にならないくらい楽しいことの方が多いんです。
―――それが、こうさかさんがブルーバードに乗る理由ですね
はい。給油口からガソリンタンクを繋ぐホースに亀裂が入って、トランクがガソリン浸しになろうとも、それでも乗りたいと思えるんです。
そんなブルーバード愛溢れるこうさかさんは、休日が待ち遠しくて仕方ないそうです。目的地を決めるわけでもなくフラッとひとっ走りすると、嫌なことを忘れて月曜からも頑張れるのだとか。
今週末も、きっとどこかを流していることでしょう。
(文:矢田部明子)
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