『クルマはトモダチ』一番小さなセヴンは、一番マニアック!…山田弘樹連載コラム
みなさんゴキゲンよう!
前回はスーパーセヴンのお話でしたが、超マニアックなクルマにもかかわらず沢山のコメントを頂けて、ちょっと驚きました。
そしてワタクシ、とっても嬉しかったです。
ありがとう!
そして今回も、セヴンです。
いやほんと、もう少しだけ、書かせてください。
なんせ前回は、発売が終了しちゃったセヴンのお話ばかりでしたから。今回はちゃんと、新車で買えるセヴン。
「SEVEN 170シリーズ」のお話です。
さてさてこのセヴン170。ご存じの方も多いですが、軽自動車のエンジンを搭載しています。そのコンセプトは、“Back to the Lotus SEVEN!”って感じだな。
スズキ製の直列3気筒ターボを搭載することで、敢えて小ぶりに仕立てたその全長は、なんとたったの3100mm! 全幅は、1470mm!! 全高は1090mm!!!
ちなみにこれは、ロータス・セヴン シリーズ1(全長3124×全幅1346×全高1118mm:ワールドカーガイド調べ)と同じくらいのサイズ感です。さらに言うと170シリーズは、軽自動車の規格にきちんと収まってます。
さらにその車重は、軽量トリムの170Rだと440kg。
これもロータス・セヴンに当てはめると、シリーズ2時代の車重に相当します。しかも85PS/6500rpmという出力も、ターボと自然吸気の違いはあれど、シリーズ3に積まれたフォード製の1.6直列4気筒OHV(84PS/6500rpm)とほぼ同じなんですよね。
Seven170はその可愛らしいスペックとボディサイズから、ゆるキャラぶりばかりクローズアップされますが、実はロータス時代のコンセプトを現代のクオリティで甦らせた、超マニアックなセヴンだったわけです。
コクピットも超スパルタン。エアコンはさすがになくても理解できるけど、軽量化のためにヒーター(オプション)すら着けてないのは、どうかと思うよジャスティン! 冬の撮影、凍えたよ!!
その始まりは先代「SEVEN 130/160」で、スズキの軽自動車と軽スポーツカーを愛するケータハム・ジャパンのブランドマネージャー、ジャスティンさんがこれを企画しました。
日本でプロトタイプをコツコツ作って、最終的にはなんとスズキの供給を取り付けた。そして2014年から、ケータハム社のカタログモデルとなりました。
そのセールスは、日本国内だけで200台以上を販売。さらにはイギリスやヨーロッパでも、ケーターハム社の生産キャパを軽くオーバーするほどの人気者に。
……ってそもそもの生産キャパもそんなに多くはないはずですが、要するに本場のエンスーたちにも認められたわけです。
しかし先代ジムニーがその発売を終了すると、エンジンやトランスミッションの供給も終わって、SEVEN160もその生産が一端お休みに。
そして4代目の現行ジムニーがデビューしたことで、再びセヴン170シリーズとして復活を果たしたわけであります。
しかしスズキも、ジムニーデリバリーするだけでも大変なのに、よく部品を出してくれましたよね。ジャスティン、良かったね。
そんなセヴン170ですが、私はこれが多彩な可能性を持ったスポーツカーだと思っています。
私が試乗したのはレーシングトリムの170“R”ですが、フロントスクリーンさえ着ければ意外なほどにノンビリと、気持ち良く走らせることができます。
駆動方式はFFだし車重は2倍だけど、それはダイハツ・コペンにも通じる、小さなクルマを動かす楽しさです。
かたや、カスタムの可能性も高い。エンジンパワーは既にケータハム製CPUで85PS/6500rpmまで上がっているから、個人的には十分。それでも日本製パワーユニットだから、望めばチューニングの可能性はまだまだある。
パワーユニットに手を着けなくても、たとえばレシオが低い2速のギア比を見直したりしたら、さらに面白くなりそう。そして何より、オーバーホールやメンテナンスがしやすい。
そしてまじめに走らせると、170Rはかなり独特な世界観を持っています。
スズキ・ジムニーにも搭載される「R06A」型直列3気筒ターボ。その小さなヘッドカバーには、“CATERHAM”の文字が。その出力も、専用CUPで85PSまでチューニング済み。でもスターターボタンを押すと、“プルン!”と可愛くエンジンが掛かる。マフラーもテールパイプが細く手可愛らしい。
パワーは前述の通り85PSしかないですが(それでも先代から5PSアップしています)、パワー・ウェイト・レシオは約5.18と優秀だから、まったく遅くない。
というか高速道路を80km/hで走るだけでも、ヘルメットなしだと容赦なく風に顔面をブン殴られます。いくら軽量化とはいえ、広報車にはフロントスクリーン着けようよ、ジャスティン!
エンジンは7000rpm手間でレッドゾーンだけど、上まで引っ張るよりトルクが落ちたらシフトした方が速い。ここらへんは、ターボカーですね。
軽量なFRだから回頭性抜群のコーナリングマシンだと思うかもしれないですが、着座位置はリアタイヤ近くだから、普通に走ると意外と旋回中心からドライバーが遠い感じ。ハンドルだけでも曲がれるけれど、クルマ全体で曲げないと本領発揮できません。
にも関わらず、ブレーキを離すと65扁平のエイボンタイヤが“ポーン”とノーズを浮かせてしまうから、フロント荷重を保つのが難しい。ブレーキもよく利くから、それにはコーナーの奥までブレーキングポイントをずらさないといけない。
いやいやそんなの怖いから、我慢などせずアクセルオフでコーナーに進入。そこからタイミングよく、しかし優しくブレーキをかけてあげると、クルマ全体でスイーッと曲がります。
そしてこの一連の操作がリズムになると、小さなステアリングの舵角がさらに減って、抜群に楽しい運転ができるのです。
かつて私はサーキットでSeven160を走らせたのですが、これも素敵な経験でした。ブレーキングで突っ込んでもタイヤが潰れきってしまうだけで、タイムはでない。
むしろブレーキング途中から旋回姿勢に入って、4輪の抵抗で減速しながら曲がった方が速いんです。まるでラリーみたい。それって、バイアスタイヤ時代の走りですよ。
ノンビリ走らせても、マジで走らせても、じつに味わい深いSeven170S/R。こんなセヴンが日本発のアイデアだなんて、ちょっと嬉しい。だから再びセヴンなのでありました。
(テキスト:山田弘樹)
自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。
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