【2018トヨタ博物館クラシックカー・フェスティバル in 神宮外苑】新型に浮気せず初代RX-7に乗り続けたオーナーのサバンナRX-7(SA22C)

ロータリーエンジンを搭載するマツダのスポーツカーとして、1978年にサバンナクーペ(RX-3)の後継モデルとしてデビューした初代RX-7。この1981年式サバンナRX-7・SEリミテッドは62才を迎えたオーナーによってワンオーナー車として乗り続けられている1台だ。

この日は助手席に奥さんを連れ添い参加されていたが、実に40年近く乗られているこのサバンナはまるで家族の一員のよう。いまとなっては日常使いまではいかないが、バッテリーが上がらないように必ず月に一度はこのサバンナに乗って外出するのだという。
そこまでオーナーがこのクルマに愛着を持っていられるのは、やはり他のクルマでは決して味わえないロータリーエンジンの存在があってこそだ。

オーナーとロータリーエンジンの最初の出会いは1972年式マツダ・カペラロータリークーペを購入したところから始まる。その後人生2台目のクルマとして選んだのもロータリーエンジン搭載車で、サバンナRX-7だった。
今回紹介しているこのサバンナは、実はオーナーにとっては2台目となる。最初に購入したのは発売初年度となる1978年式。当時はジムカーナイベントに参加するために各所にカスタマイズを施し、文字通り「乗り潰す」ようなイメージで乗っていたという。
いまでも自分の手でレンタルガレージを利用してメンテナンスをすることもあるというオーナーだが、1台目のサバンナは競技のためのカスタマイズによって、ジャッキアップした状態ではドアが閉まらなくなるほどボディを酷使してしまったという。
そこで購入し直したのが現在のサバンナ。クルマをイジる楽しみはもう十分味わったということで、そこからは長く乗ることを意識して、純正状態を維持したまま乗り続けている。

SEリミテッドというグレードは純正LSD、サンルーフ、アルミホイールが追加されたモデルであるが、当時のオプションパーツとして特に珍しいのはロータリーエンジンのおにぎり型をモチーフに作られたホイールだろう。リム部分にはアペックスシールのくぼみまで再現されているのもロータリー好きの心をくすぐるこだわりだ。当初はヘアラインとクリア塗装がされていたが、純正塗装が傷んできたのをきっかけにオーナーによってサンドブラストを施し塗装を除去、内リムを黒く塗装し直すアレンジが加えられていた。
また、購入当時にはドアミラー仕様も登場していたが、あえてフェンダーミラーを選んだことは現在の視点から見れば希少価値のある部分である。

搭載されている自然吸気の12A型2ローターエンジンの出力は130ps。メーターの走行距離は26万6000kmを超えたが、20万kmあたりでいちどエンジン、ミッション、デフのパワートレインすべてのオーバーホールをおこなった。
その当時、パーツの絶版によりオーバーホールが難しくなるということで、ディーラーから最後のチャンスと勧められたメニューだったが、開けたエンジンの中身は良好でアペックスシールの減りも少なく、ロータリーエンジンならではの圧縮抜けの症状もなかったというから驚きだ。
そのほか、マフラーや、ダンパー、スプリングなどの足まわりパーツも純正部品が手に入るうちに交換することで、30年経ったいまでも程度のいい状態で乗り続けられているという。

しかし、ここまで長い間サバンナにこだわって乗り続けられている理由を聞くと、オーナーからは意外な答えが返ってきた。
「昔からロータリーに乗り続けたい気持ちは強かったんですが、サバンナにこだわり続けるつもりは決してなかったんです。RX-7にFC3SとFD3Sが出て、最新のロータリーの乗り心地はどうなのかな?と気になって乗り換えたい気持ちも生まれたんですが、そのたびに妻から『サバンナのままがいい』と説得されたことが理由ですね」
「サバンナじゃないと味わえない良さもありますしね。とくに、このクルマを置いて2、3階から見た上からのルックスが好きなんです。それに、新しいロータリーに乗ったらそれで満足して、ここまで大事に乗り続けられているかも分かりませんでした」

旧車のなかでもヴィンテージ要素の高いクルマが多く参加する傾向があるクラシックカーフェスティバル。そのなかでマツダRX-7といえばクルマ好きなら10代でも知っているクルマであり、その初代とあれば最も共感を得やすかった車種のひとつといえるのがこのサバンナ。
昨年までは全くミーティングに参加する経験がなかったというオーナーが、こういった場に興味を持ったのも今年のマツダファンフェスタにサバンナで訪れたのがきっかけといい、このあたりも旧車オーナーの特権のひとつ。もし、サバンナを手放していたら決して経験することができなかった愛車のもうひとつの楽しみ方だといえるだろう。

(テキスト:長谷川実路 / 写真:市 健治)

[ガズー編集部]

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