【2018トヨタ博物館クラシックカー・フェスティバル in 神宮外苑】受注生産車のいすゞ・ベレット1600GTファストバックを手に入れ、20年以上ぶりに車趣味を復活
銀杏並木が黄色く染まった神宮外苑を会場に、約100台のクラシックカーが集まった『2018トヨタ博物館クラシックカー・フェスティバル in 神宮外苑』。旧車オーナーには大きく分けて、とことん純正パーツを使った当時のメーカー仕様にこだわる派と、アフターパーツを使い自分なりのカスタマイズを楽しむ派に分けられる。
どちらも魅力的だが、ひと目見たときにギャラリーの目を引くのは外装まで手を加えられた後者の方だろう。
パールの入ったエメラルドグリーンの車体は50年前に作られたクルマとは思えない輝き。さらに旧車カスタムにおなじみのホイールであるワーク・エクイップを組み合わせている。オーナーならではのこだわりが感じられる1台に目が止まり、お話を伺った。
1963年に販売が開始された、いすゞ・ベレット。同時期にいすゞが販売していたベレルが、トヨタ・クラウンなどの車格に合わせた中型セダンだったのに対し、その小型モデルであるという意味を持ち、グレードにも初のGT仕様が設けられるなど、いすゞ・ベレットはより走行性能に注力した車種という位置付けだ。
このベレットは1969年式の1600GTファストバック。いわゆる『ベレG』と愛称が付いたGTグレードのベレットだが、ファストバックというのは通常の2ドアクーペとは異なる受注生産モデル。ルーフからトランクにかけてウインドウごとなだらかな傾斜で作られたボディが特徴的で、当時は1台ごとにメーカーが手作業で鈑金し、およそ350台が生産されたという。
「若い頃はBMWのマルニとかデ・トマソのミニ、初代VW・ゴルフ、マツダの初代キャロルなどいろいろと乗っていたんですが、結婚して娘が生まれた時にカミさんからも言われてこういうクルマからは離れていたんです。そんな娘も大きくなって、4年前にもういちど旧車に乗ろうかと思っていたときにオークションでたまたま見つけたのが、このベレットでした」と教えてくれたオーナーさんは54才。現在30才になる娘さんを持つオーナーにとって、このベレットは約25年ぶりに乗ることとなった趣味車だ。
ネットオークションとはいえ出品者が都内のヨーロッパ車を中心に扱う専門店で、そこのお客さんの下取りとして入庫していたという経緯、受注生産のファストバックモデルながら比較的価格が安かったところ、そしてなによりデザインの好みが購入の決め手になったという。
1600GTに搭載されているエンジンはツインキャブを採用したOHV1584cc。
購入後はまずエンジンの振動が気になったため、知り合いのクルマ屋さんに預け、エンジンの腰上をオーバーホールした。このときスペアパーツがなかなか手に入らず、純正カムの代わりにたまたまそのクルマ屋さんが持っていたという東名パワード製のハイカムに交換したという。
さらに昨年はヘッドガスケット抜けらしき水漏れの症状に遭遇したが、漏れ防止の添加剤を追加することで症状がおさまっている状態とのこと。ただこのレベルのトラブルは想定内とのことで、むしろ購入価格が安かったわりに少ないトラブルで乗れて楽しめているそうだ。
外装のオールペンは前オーナーによって施されたが、エクイップのホイールは自分で購入して装着したもの。ファストバックのボディ形状のほかに、テールレンズが丸目3灯になっているのもこのモデル特有だ。
室内は購入後フロントシートを張り替えたということもあって、外観と合わせて手入れの良さが伝わってくる印象。ステアリングも交換しつつ、ホーンボタンはたまたまイベントで見かけたといういすゞのメーカーロゴ入り品を装着している。
コンソールにはキャブ調整用のドライバーが置かれているが、これは日常的にエンジンをかけてベレットで出かけていることの何よりの証だ。箱根の近くに住んでいることもあり、毎週末に箱根のワインディングを転がすのが楽しみだという。
イベント当日は、都内に住む娘さんも一緒に来場、親子仲の良さも印象的だった。そしてイベントコンテンツのパレードランでも同乗していたのだが、意外にもこのベレットの助手席に座るのは初めてとのこと。
「もっと乗り心地が悪いと思ってましたけど、けっこう良くて、古いクルマらしさを感じて気持ちよかったです」と、いつもは見ているだけだったクルマ好きとしての父の姿を少しは理解してもらうことができた様子。オーナーのみならず、取材していた我々にとっても嬉しい出来事が起こった秋晴れの1日だった。
(テキスト:長谷川実路/ 写真:市 健治)
[ガズー編集部]
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