【LAND CRUISER’S MEETING 愛車紹介】砂漠を駆け抜け、日本の道路を走る。サウジアラビアから逆輸入したランクル200

『ランクル200』『200系』と呼ばれる現行モデル(2018年12月時点)のランドクルーザーは、2007年より生産がスタート。ステーションワゴン系ランドクルーザーとしては、1967年から1980年にかけて13年間生産されたFJ50系に次いで、2番目に息の長いモデルとなっている。
モデルチェンジのたびに豪華装備が与えられ高級車指向が強くなってきているが、ランドクルーザーのアイデンティティともいえる耐久性や走破性はしっかりと受け継がれていて、ダカールラリー2018 ペルー・ボリビア・アルゼンチンでは市販車ディーゼルクラス優勝、ガソリンクラス・ディーゼルクラスを合わせた市販車部門でも優勝に輝いている。

そんなランクル200は、街を走っていれば見かける機会も多い。しかし『サウジアラビアから逆輸入した左ハンドル仕様のランドクルーザー200』となれば話は別!およそ800台近くが集まった『LAND CRUISER’S MEETING』会場では1台だけだったし、おそらく日本中を探しても超希少な存在ではないだろうか。

パールホワイトのボディにゴールドとダークレッドのピンストライプが入った左ハンドルのランドクルーザー200(GRJ200L)に乗るのは鈴木さん。科学メーカーで働くエンジニアで、去年までサウジアラビアに5年間ほど単身赴任していたそうだ。なぜ、ランドクルーザー200に乗りたいと思ったのだろうか?
「サウジアラビアのレッドサンド(鉄分を含み赤く染まった砂漠)へ足を運んだんです。そこで、ランドクルーザーが、かなりの急勾配のヒルクライムも躊躇無くパワーにものを言わせ登っていたのを見て、自分も乗りたいと思いました」とのこと。
サウジアラビアでは通勤のためにクルマを運転するくらいだったが、日本にいた頃は所属する4WDクラブ主催のイベントで行われたマッドドラッグレース(悪路で競う直線レース)で決勝戦に駒を進めるほどの腕前だったそうだ。

砂漠を駆け抜けるランドクルーザー200を見て血が騒ぎはじめたのを止めることはできず、結局サウジアラビアでランドクルーザー200を購入。そして日本に戻って来るときに、異国の地で自分を支えてくれた愛車を手放したくないと思い、持ち帰ることを決めたそうだ。

「現地の友人に協力してもらって、裁判所、交通警察、外務省に行き、自動車として輸出するための膨大な書類を揃えました。それがもう大変で。もちろん書類はアラビア文字で書いてあるし…」
サウジアラビアでの書類申請をどうにかクリアし、鈴木さんは愛車より一足先に帰国の途についた。そしてランクル200を載せた船も1ヶ月後の5月に横浜港に入港したという。
しかし、一安心したのも束の間、ここからも大変だった。サウジアラビアからの輸入例が無く、書類の準備から検査、登録までに約6ヵ月という時間と、クルマが1台買えてしまうくらいの費用がかかったそうだ。
日本にいるのに乗れないという状態にヤキモキしたものの、所属する4WDクラブや協力ショップのおかげもあり、鈴木さんと同じくサウジアラビアから里帰りした愛車は晴れて日本の公道を走れるようになった。
「本当に、一時はどうなることかと思いましたが、サイドミラーに書かれたアラビア語を見るたびに日本に迎え入れて良かったと思うんですよね」

ランドクルーザーは世界中で使われる事を前提に開発されたグローバルモデルであり、近年、最大の市場は中東だといわれている。
1UR-FEエンジンが搭載される国内モデルと異なり1GR-FEエンジン(V6、3955cc)が搭載されていて、燃料タンクも大容量。大型消火器が搭載されているなど、機能・装備ともに相違点がいくつも見られる。

苦労してサウジアラビアから持ち帰ったランクル200と、日本でどんな時間を過ごしているのだろうか?
「オフロードを走ってこそランクルの価値があると思っています。林道ツーリングや冬のスノーアタックなど、砂漠とは一味違う道を一緒に走っていますよ」と鈴木さん。
4インチリフトアップされ、20インチへとインチアップしたホイールにマッドテレーン(オフロード用タイヤ)を履くランクル200だが、日常の買い物や冠婚葬祭などの通常営業もしっかりとこなしてくれているという。

緑のない土漠の中にあるサウジアラビアの首都リアドから、6800海里の海路を経て、緑が濃く茂る日本の福島へと、はるばるやってきたランドクルーザー200。これからも鈴木さんと生活を共にし、人生を歩んでくれる友人でいてくれることだろう。

(テキスト:矢田部明子 / 写真:平野 陽)

[ガズー編集部]

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