結婚しない前提でお金をつぎ込んだ86が運んできた奇跡の出会い。幸せの形はファミリーカーのシエンタへ【取材地:福岡】

「結婚しないでずっと乗り続けるつもりで、黒い86を新車で買ったんです」
収入の多くをトヨタ・86につぎ込んでドレスアップを楽しんでいたという彼女。しかしなんとその86がきっかけで旦那様と出会い結婚! 現在はシエンタで家族とともに新たなカーライフを送る幸せな日々を過ごしている。
福岡県在住の安武紋美(あやみ)さんが溺愛していた86を手放してシエンタに乗り換えるに至るまでの過程には、心が温まるストーリーが隠されていた。

紋美さんはもともと運転するのが好きで、免許を取得後はMT車のミラに乗っていたという。その後はATのラクティスに乗り換えたものの「やっぱりMT車を運転するほうが楽しい!」と25才の頃に86を新車で購入した。

「86を買おうと決めて親に相談したとき『女の子が乗るクルマじゃない。結婚が遠のくからやめたほうがいい』と言われたんです。でも当時の私は結婚する気がまったくなかったんです。だから長く乗り続けるつもりで黒い86を買いました。本当は赤が一番気になっていたんですが、10年後、35才になったときに派手すぎて私には乗れないなぁと思って黒を選びました」と、長く乗り続ける具体的なイメージまで思い描いての選択だったという。

しかし彼女は黒い86を選んだことで、現在の旦那様と出会うことになる。
「とある86乗りオーナーの集まりに参加したとき、カラーリングごとに並べて記念撮影することになったんです。その時に隣にいたのが主人で、話してみたら気が合って…」
結婚の妨げになると親に反対されていた86が、運命の出会いをもたらした瞬間だった。

86に乗ることをご両親に反対されていたこともあり「こっそりじわじわと改造していこう」とマフラーを変えたり少しずついじっていた紋美さんだったが、ある日、(当時はまだ恋人だった)旦那様とデートに行った時に事件が起きた。

「私の86が当て逃げにあってしまったんです。犯人もわからずいろいろ大変だったのですが、これを機に思い切ってフルエアロにすることにしました。選んだエアロは愛知県のメーカーの製品だったんですけど、問い合わせして九州でほかに装着している86はいないことを確認してから購入しました。クルマを買ってからまだ1年は経っていなかったと思います。あ、流石に両親には先にエアロをつける話はしておきましたよ、すぐわかっちゃいますからね(笑)」

ちなみに旦那様の乗っていた86は紋美さんとまったく同じグレードで、ボディカラーも黒。ただ紋美さんは街乗りフルエアロのドレスアップ仕様だったのに対し、旦那様の86は見た目ノーマルでサーキット走行用にチューニングされた走り仕様だった。

「結婚するにあたって、同じ86が2台あってもしょうがないよねという話になり、私の86はノーマルに戻して欲しい方に譲って、外したエアロを主人のクルマに装着したんです。見た目も中身も伴ったニコイチ仕様になって、より良い1台に仕上がったのでよかったなと思いましたね」

こうして結婚当初は86と軽自動車の2台体制だった安武さんご一家。一緒にドライブやサーキットに行ったりと86ライフを楽しんでいたが、子供が生まれると当然カーライフ事情も変わってくる。

「子供は10ヶ月と2才でガチガチの大きいチャイルドシートが2つ(笑)。ほんとは86も乗りたかったけれど、後ろにチャイルドシートを載せにくいし、家族で遠出したいと思ってもこの問題がクリアできず諦めていました。それで86を手放すことを考えはじめたのですが、主人も思い入れのある86だけになかなか手放す踏ん切りはつかなかったみたいです」

紋美さんのご主人のように、クルマ好きな男性には結婚後も自分の愛車を手放す決断をすることがなかなかできない方も多い。しかし旦那様は違った。
「うちのクルマを欲しいという方がでてきたみたいで、主人がクルマを見せに行ってくると出てったんですが…なんとそのまま売られて戻ってこなかったんです。お別れのための気持ちの整理もまったくできてなかったので、これだけはちょっとだけ寂しかったですね(苦笑)。でもこのタイミングで手放さなければ、きっと踏ん切りがつかずこの先ずっと所持しつづけることになったと思うんです。それに、その後に手放した86をそのオーナーさんがサーキットで楽しんで走っているのを見て、主人も私も『86のためにもこれで良かったんだ』と改めて思えるようになりました」

そして安武さんご一家は、昨年(令和2年)の6月、新たな相棒としてこのトヨタ・シエンタを迎え入れたのである。
購入した2WDのGグレードは1500ccの7人乗りで、28.8km/Lとミニバントップレベルの低燃費ハイブリッド車。子供の乗り降りにも優しい段差のないフラットで低い乗り込み口や自動解錠でオープンするスライドドアなど、4人家族の安武家のファミリーカーとしてはピッタリのミニバンだ。

「シエンタは中古で手ごろな値段で出ていたものを買いました。最初はもっと大きいクルマも考えたけれど、子供も小さいからシエンタくらいの大きさでいいかなって。グレードのこだわりも特になかったんです」

ちなみにカラーリングは86とたまたま同じだったという黒で、普通のシエンタに比べて精悍な雰囲気を感じさせるオープションのモデリスタエアロが装着されている。
「エアロは購入時から付いていたんですが、カッコいいので私も気に入っていますよ」と、この個体を選んだ購入動機のひとつといえる。

シエンタに乗り換えたことで、広い後部座席は大きいチャイルドシートを2つ置いても手狭な感じはまったくなく「子供ふたりを乗せたり降ろしたりするのも全然ラクになりました! それに後部座席の後ろにも荷物をたくさんのせて公園に遊びにいけるのが良いですね。前は軽自動車に荷物をのせて遠出していたので、とても快適になりました」と紋美さんもとても気に入っている。

ちなみに現在10ヶ月の娘さんのチャイルドシートは安全面から法令によって運転席に対して後ろ向きに装着されているのだが、これだと子供の表情が見えない。そこで紋美さんは100均で購入した鏡を娘さんの顔が映る位置に取り付けて、運転席のミラーから表情が常に確認することができるようにひと工夫。
またシートベルトカバーは86で使っていたものが流用されていて、ちょっとレーシーな雰囲気も残されている。

「86はふたりにとってとても大切なクルマでしたが、主人も家族をフォーカスして今はシエンタという選択をしてくれました。それに息子もクルマが好きで、最近では子供をつれて走行会を見に行ったりもしているので、今はこういう楽しみ方でよいのかなと。でも子供が大きくなったら、それなりの年だけどまた好きなクルマに乗りたいね、と話しています」

また、紋美さんには将来的に家族みんなで車中泊の旅をしたいとのこと。
「私が小さい頃エスティマで4姉妹と両親の家族みんなでよく車中泊で九州から石川県にいったりしていて、すごく楽しかったのを覚えていまして。主人も出かけるのが好きなので、私も子供たちに思い出を作ってみたいなと思って!」

86からシエンタへ。自分たちがそのとき幸せになるために最良な形でクルマ選びも変化していく。それもまた“愛車”の形のひとつだろう。

(⽂: ⻄本尚恵 / 撮影: 平野 陽)

[ガズー編集部]

GAZOO取材会@福岡 取材記事はこちら

愛車広場トップ

MORIZO on the Road