愛車は、マレーシア生まれのプロトン。これ元全日本ラリー参戦車両なんです
エメラルドグリーンとホワイトのカラーリングにグラフィックが施されたこのクルマは、マレーシアの自動車メーカーである『プロトン』が生産していたサトリアネオの2代目モデル。その日本仕様は『クスコ』ブランドで有名なアフターパーツメーカー『キャロッセ』の手によって日本国内で販売されていたという経緯がある。
そして、宮坂淳一さん(49才)が乗るこのサトリアネオは、実際にキャロッセがラリー参戦車両として使用していたという過去を持つ1台だ。
偶然の出会い
現在は北海道帯広市在住という宮坂さん。20代のころは東京の会社に勤務していて、クルマの運転と道を覚えるために10万円程度で手に入れたスバル・レガシィの4ドアセダンから愛車人生がスタートする。
その後、25才になって「今度は自分の好きなクルマに乗ろう」と思い、インプレッサワゴン(GF8型)を購入。当時からモータースポーツに興味があったこともあり、会社の同僚から誘われて最初にチャレンジしたのはジムカーナだったというが「細かくコースを覚えなきゃいけないのが苦手でしたね」と、あまり自分の好みには合わなかったそう。
「次に誘われたダートトライアルは、わかりやすくて面白そうだったので興味が出てきて、丸和オートランド(栃木県)の全日本シリーズでモンスター田嶋選手の走りを見たことをキッカケに一気にハマりました」
こうしてインプレッサでダートラにチャレンジし始めた宮坂さんだったが、参戦費用などを含め維持費がかさむことを理由に、数年後にはもっと手頃に乗れるクルマとして仲間から紹介された三菱ミラージュRSのダートラ仕様に乗り換えることとなった。
そして2001年、宮坂さんが28才になると家庭の都合により北海道の帯広市へUターンすることになり、ミラージュには乗り続けていたもののダートラ趣味は一旦休止することに。
そんななか、たまたま勤務中に公道を移動していたラリージャパン参戦車両を見たことをキッカケに、今度はラリーへの興味がわいてきたという宮坂さん。
「HT81S型の初期型スイフトに乗り換えてラリー仕様にして競技にも出場していたのですが、2013年の大会でクラッシュして廃車になってしまったんです。そしてその時、たまたま自分たちの向かいがクスコさんのピットだったことが縁で中古の競技車を買わないかというお話をいただいたんです。それがこのサトリアネオだったというわけですね」
ラリーではつらい一面も
宮坂さんが愛車として乗るサトリアネオは、全日本ラリー選手権で2012〜2013年シーズンに『CUSCO Jr RALLY TEAM』が使用していたうちの1台。グラフィックのモチーフになっているのは、クスコジュニアラリーチームのマスコットキャラクターである山の神の『高崎くす子』を祀る神社の娘という設定の『佐藤りあ』というキャラクター。まさにサトリアの車名がモチーフになっている『佐藤りあ』をボディの左右に大きく配置し、衣装と共通のカラーリングが施されている当時のグラフィックは変更することなく、そのままの状態を維持している。
そして、宮坂さん自身もこのサトリアネオに乗って北海道ラリー選手権のRA3クラスへ参戦しているということもあり、室内にはロールバーが組み込まれ、ラリーコンピュータなど競技のための必需品もフル装備されている。
足元には軽量高剛性が特徴だというエンケイスポーツ製15インチホイールを履かせ臨戦態勢といった雰囲気。室内に快適なフレッシュエアを取り入れるためのダクト(ルーフベンチレーション)も競技車両ならではだ。
外観と同じく歴戦の跡がうかがえるエンジンルームには、レギュレーションに適合するためノーマル状態をキープした1.6Lの直列4気筒自然吸気エンジンが搭載されている。
そんなサトリアネオだが、意外にもラリー向きではなく実戦ではツラい場面が多いクルマと話す宮坂さん。
「1トン超えの車重に非力な110馬力のエンジンで、5速マニュアルミッションもスポーツ向きじゃないワイドなギヤ比設定なんです。だけど、全日本ラリー選手権で走っていたときのカラーリングそのままの競技車ということは唯一無二ですから」
そう話す宮坂さんは、他にクルマを持たず、普段乗りにもサトリアネオを使用しているというほどの愛着の持ちよう。宮坂さんにとっては、まさに名実ともに唯一無二の相棒といえるだろう。
取材協力: GRGarage札幌厚別通
(文:長谷川実路/撮影:平野 陽)
[GAZOO編集部]
GAZOO取材会@GR Garage札幌厚別通
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