「乗れなくなって後悔しないために」40代オーナーがCR-X(EF6)を買うと決めたキッカケは?

「いつか乗りたい」と思っていたクルマが、どんどん手に入れにくくなっていく時流に危機感を覚え、5年前にホンダCR-X(EF6)を購入したという滝沢さん。どうしてそこまでCR-Xに拘ったのか?実際に手に入れてみてどうだったのか? お話を伺った。

生産が終了して20年以上経つ90年代のスポーツカーたちは、市場価格の高騰が続いて手に入れるのが難しくなっている上に、純正パーツの廃番などによって維持をしていく難易度も高まっているのが現状だ。

注文すれば手に入れることができる現行車とちがい、理想のクルマと出会い愛車として長く所有し続けていくためにはいくつもの高いハードルが待ち受けているのだ。そして、その状況は今後も好転することはなく、むしろどんどん厳しくなっていくだろう。

約5年前にとあるキッカケでそんな時流に危機感を覚え「いつか欲しい」と思っていたホンダ ・CR-Xを手に入れようと決心し、実際に購入に踏み切ったという滝沢修さん(49才)。

「免許を取りたての頃はクルマをあちこちにぶつけるだろうからって、職場の友人が手放すというアルトをそのまま譲ってもらって乗っていました。そして20才の時に『次は好きなクルマに乗ろう!』と2代目CR-Xの前期を3年ローンで買ったんです。

ところが1年目にして事故で廃車にしてしまって…。それから7年間をバイクで過ごした後にまたクルマを買うことになったのですが、その時の条件は『人や荷物をある程度乗せられること』だったので、CR-Xではなくパルサーのオーテックバージョンを購入しました」

それから現在に至るまで、日産・パルサーセリエ 2.0 オーテックバージョンを日常使いの愛車として所有し続けているという。

そんな滝沢さんは5年前、同じオーテックバージョンのパルサーに乗る知人がこの『GAZOO愛車広場』に掲載された記事を目にする。

「その記事の中で、記者の方が『純正部品の欠品や価格も高騰しているから、90年代までに生産されたクルマを楽しめる最後の時期に差し掛かっているのかもしれない』というようなコメントを書かれていたんです。それを読んで、大好きだったCR-Xを1年で手放してしまったことへの未練が改めて強くなり『もう一度乗ろう!』と探し出して買ったのがこのクルマです」

ホンダ・CR-Xは1983年に『バラードスポーツ CR-X』として発売を開始したハッチバックスタイルのFFスポーツモデル。1987年から1992年までは2代目が『CR-X』として、その後『デルソル』と名付けられた3代目が1999年まで販売された。

ちなみに、滝沢さんが現在まで相棒として長く乗り続けているパルサーも、スポーツグレードのGTIをベースにオーテックジャパンがカスタムしたモデルで、CR-Xに負けず劣らず走る楽しさを味わえるクルマである。

しかし、滝沢さんにとって『初めて新車で買った愛車にも関わらず1年で乗れなくなってしまった』というCR-Xへの想いは、心の片隅に長い間『もう一度乗りたい!』と燻り続けていたに違いない。

そんな滝沢さんが購入したEF6型の2代目CR-Xは、1992年製の後期モデル。14インチアルミホイールやCDプレイヤーなどを標準装備し、ボディ下部がグレーメタリックとなる2トンカラーが特徴的な特別仕様車『1.5X スタイル-S II』だ。

「当時乗っていたのは前期型で、探して手に入れることができたのは後期型だったので多少の違いはありますけど、20年前に乗っていたのが1500ccのEF6だったので、探すときも同じEF6にこだわって探しました」

前期後期は妥協しつつも、VTECエンジンのB16Aを搭載したEF8型ではなくあえて1500ccエンジンのEF6を選択したのは、こういった理由があったからということだ。

そんな滝沢さんが特にCR-Xを好きな理由はというと、他にはない独自のスタイリングだという。
「初めて見た時からそのデザイン、スタイリングが好きでした。当時は他に乗りたいクルマの候補はまったくなかったですね」

そしてこのスタイルが好きという思いは、20年以上経った今も変わることはないようだ。

「このクルマを買ってから自分で手を入れたところは『走る・曲がる・止まる』に重要なところの交換くらいなんです。5年前うちに来た段階でまず交換したのが、ブレーキローターやパッドです。かなり減っていてかろうじて止まるレベルだったので(苦笑)。タイヤも変えました。でも、それ以外の外観やマフラー、ホイールまですべて純正スタイルのままなんですよ」

滝沢さんのCR-Xは、内装から外装までほぼオリジナルの姿が維持されていて、汚れの目立ちやすい色だけにボディの汚れにも気を遣っているのが感じられる。

「普段は青空駐車なんですけど、ボディカバーを被せて砂埃などを防いでいます。ボディカラーが黒って砂埃や雨の跡が目立つけど、磨いた時の輝きは黒いクルマのほうが他の色より充実感があるんじゃないかなと思うんです」

滝沢さんが普段からこのCR-Xを大事に手入れしている姿が目に浮かぶようだ。

「普段乗りは以前から乗っているパルサーなので、増車したこのCR-Xは主に休日のドライブ用です。昔、CR-Xで出かけたところにまたフラっと出かけてみたり、当時やり残したことをやってみたりしている感じですね。コンビニなどで『懐かしいね~』と話しかけられることもあって楽しいですよ!」

走行距離15万kmで購入した滝沢さんのCR-Xは、現在約17万km。年間4000kmほどの走行ペースで、クルマにもオーナーご自身にも負担にならない範囲で愛車との時間を楽しんでいるようす。

5年前に未練を残さないようにとこのクルマを購入した決断が、現在の充実した週末の過ごし方を実現させているのだ。

滝沢さんが『CR-Xを手に入れることができなくなるかも!?』と危機感を覚えた5年前に比べ、旧車を手に入れて所有することはさらに難しくなってきている。しかし、それでも本当に乗りたいクルマであったなら、彼のような思い切りも必要なのかもしれない。苦労することも多いだろうけれど、その分、かけがえのない時間や経験を与えてくれる大切な存在となるはずだから。

取材協力:フェスティバルウォーク蘇我

(文:西本尚恵/撮影:古宮こうき)

[GAZOO編集部]

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