キャンプとアメリカンな空間。好きなことを両立した“動くホテル”フォード・エコノライン

  • キャンピングカー仕様のフォード・エコノライン

子供の頃からキャンプが大好きだったという福島さん。キャンプ歴うん十年の福島さんは、大自然の中でテントを張り、焚き火を焚き、キャンプ飯を作り…なんていうことはしない。

「キャンプ場で食べる“ククレカレー”が絶品なんですよ。ククレカレーがククレカレーじゃないんです。単なるレトルトとは思えなくて、あれ?こんなに美味かったかな!?ってなるんですよねぇ。きっとあれは、空気が味を美味しくしてくれるんですよ。

あとね、富士山の雪解け水が使えるキャンプ場があるんですけどね。この水でククレカレーを温めると、さらに美味いですよ。やっぱり、温める水が違うと美味くなるんだわ」

簡単に準備でき、片付けられるものが1番だと教えてくれた。こんな風に語気を強めて力説されると、そうなのかもしれないと思ってしまう。

  • キャンピングカー仕様のフォード・エコノラインとオーナーの福島さん

「友人をキャンプに誘った時にテントを張ろうとするから、テントなんか張らなくていいぞって言ったんです。10人乗れて、6人寝られる。冬はLPガスヒーター、夏は電源が引ければエアコンが使えて、水も100ℓのタンクを備えているし、温水ボイラーも古いながら実働なので温水も出る。

ほかには、トイレ、電子レンジ、ガスコンロ、2段ベッド付き。名付けて動く“ホテル・フォード”があるんだからって (笑)」

それを聞いた友人からは「どんだけ楽なキャンプしてんだよ」と突っ込まれたというが、福島さん曰く、そもそもキャンプに細かな定義はないし、自分が楽しめてリフレッシュ出来るのがキャンプと思っているので、このままのスタイルを貫くのだ、と自信に満ちた表情で語ってくれた。

  • キャンピングカー仕様のフォード・エコノラインの左リアビュー

そんな福島さんの愛車は1993年式のフォード製エコノライン コーチメンキャンパー。EシリーズのE-250をキャンピングカー仕様にカスタムしたもので、横幅は2m を超えるため駐車場に停めると少し、いや、かなりハミ出してしまうあたりが、さすがアメリカンサイズといったところ。

母国アメリカでも大人気のフルサイズバンで、キャンピングカーなどの用途だけではなく、商業車としても重宝されていて、街中を走れば見かけない日はないほど走っているというから驚きだ。

「今まで7台のキャンピングカーを乗り継いできました。エコノラインの前の愛車は、日産・エルグランドで、その後ろにキャンピングトレーラーを引っ張っていたんですよ。でも、キャンピングトレーラーって行く場所が限られてくるんです。ここの駐車場は入れるけど、ここは入れないなぁとか。フォードになってからは1台で事足りるから助かってます。まぁ、ハミ出るけどね(笑)」

  • キャンピングカー仕様のフォード・エコノラインの運転席
  • キャンピングカー仕様のフォード・エコノラインのエンブレム
  • キャンピングカー仕様のフォード・エコノラインのデカール
  • キャンピングカー仕様のフォード・エコノラインの右リアランプ

見た目ほど車重は感じず、登りでもグイグイ走る走行性能が気に入っているということだ。ただ、カーブはかなり減速することが必要で、“急"の付く操作は禁物だと説明してくれた。

「もうひとつ、乗った人に高確率で言われる特徴があるんです。『ジロジロ見られて恥ずかしい!』ってね(笑)」

福島さんがこのクルマを購入したキッカケは、中学生の頃に見たキャンピングカー雑誌だ。90'sのアメ車のモーターホームらしい作りとデザインにひと目惚れしたのだという。

「社会人になってそれなりに働いて、やっと手が届いたという感じです。インターネットでみつけて『うおおお! この価格なら何とかなる!!』とテンションが上がりました。これを逃したらチャンスは無いぞと、下見をせずに買っちゃいました(笑)」

  • キャンピングカー仕様のフォード・エコノラインのリビング
  • キャンピングカー仕様のフォード・エコノラインのキッチン

ずっと恋い焦がれてきたクルマの車内は、福島さんの趣味がギュッと詰め込まれた仕様になっている。

カラフルなクッション、木目調の壁、キャラクターが描かれたグッズ、レトロな置物たちなど、細かいところまでアメリカンな雰囲気がムンムンする。アメリカ雑貨との相性は抜群なのだと自慢げに教えてくれた。

「アメリカにあるカフェみたいな感じにしたいんですよ。でも、行ったことがなくて(笑)。だから、国内でそれっぽい雰囲気の小洒落たお店などに行って、どういう風に飾り付けをしているのかを見て日々研究しています」

キャンピングカーを乗り継いできたからこそ思うのは、普通の内装にしてしまうと、ただのバンという存在になってしまうということ。“キャンプや遠出に便利なただのバン"ではなく、居るだけで楽しくなるようなオモチャ箱のような特別な空間にすることで、福島さんの理想とするキャンピングカーライフが楽しめるというのだ。

  • キャンピングカー仕様のフォード・エコノラインのサイドドア

「ただねぇひとつ問題があって、居心地が良すぎて家にいる時もココに来てしまうんですよ。インターネットで動画を見たり、パソコンをパチパチしたり、テレワークがはかどるんだよなぁ。遊びに来た友人から『なんで家にいるのにフォードの中にいるの?』と言われます。家、売っちゃおうかなと思うレベルですよ(笑)」

それほどまでに、ほっと一息できる空間なのだ。

  • キャンピングカー仕様のフォード・エコノラインのフォード純正メッキホイールカバー

ちなみに、福島さんがこだわっているのは内装だけではない。

「フォード純正メッキホイールカバーの新品をアメリカから取り寄せ、最近はちょっと英語が分かれば、eBayなどインターネットでアメリカの物が買えちゃうんですよ。このホイールは日本にある同型のキャンピングカーでは装着しているクルマをまだ見たことがないので、人とあまり被らないし特別感があって満足しています」

逆輸入車である福島さんのフォードは、日本仕様とは微妙にディテールが違うのもお気に入りポイントなのだそうだ。

  • キャンピングカー仕様のフォード・エコノラインのフロント
  • キャンピングカー仕様のフォード・エコノラインのオーバーヘッド
  • キャンピングカー仕様のフォード・エコノラインのリアビュー

ただ、日本ではあまり見かけないクルマなだけに、メンテナンスをしてくれるショップが限られてくるのは大変だという。それだけに、自分でできる箇所はシッカリと整備し、それすらも楽しみたいとにっこりと笑った。

さすがに、ウォータータンクからジェットフローポンプまでの配管が破損したことにより、車内のカーペットがずぶ濡れどころか床下浸水状態だったのを目の辺りにしたときは、深い絶望感に襲われたというが、ホームセンターで材料を調達して修繕したそうだ。

  • キャンピングカー仕様のフォード・エコノラインでくつろぐオーナーの福島さん

「正直な話をすると、キャンピングカーって、いらない人はいらないと思います。車両価格も高いし、維持費も高いし、メンテナンスも大変ですしね。

だけど、僕はそれでもキャンピングカーに乗りたいです。僕の両親が、よくキャンプに連れて行ってくれたんですけど、すごく楽しかったんですよね。その楽しさを、今度は自分の大事な人たちに伝えていけたらなと思うんです。

テントを張ってキャンプするのとも違う、あのサイズの動くホテルでする会話や、朝起きたら広がる大自然。ほんと、面白いから伝えていけたら良いな」

『ホテル・フォード』を拠点に、時間と場所にとらわれず、好きな場所で好きな人と過ごす福島さん。今日もどこかで、ククレカレーを温めているだろう。

取材協力:フェスティバルウォーク蘇我

(⽂: 矢田部明子/ 撮影: 平野 陽)

[GAZOO編集部]

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