【ミュージアム探訪】メルセデス・ベンツ・ミュージアム(後編)

メルセデス・ベンツ300SLシリーズ
「770」の名称で親しまれたメルセデス・ベンツW07(左)と、直6エンジンを搭載した「320」ことW142。どちらも戦前の名車だ
昭和天皇の御料車として使用されたメルセデス・ベンツ770K
戦後のグランプリレースを席巻したW196
「シルバー・アロー」と呼ばれて活躍した、戦前のグランプリカー
戦前のW07から今日のSクラスまで、歴代のメルセデス・ベンツの高級サルーンが一堂に会している

自動車の歴史とともに歩んできたメルセデス・ベンツの博物館だけに、見どころはとにかくわんさかある。中でもオススメは(小沢が博物館を取材したのは2006年のことだから、今は展示が変わっているかもしれないが)、「メルセデス・ベンツ」と聞けば誰でも思い浮かぶ名車の数々だ。まさにクルマ版ヒーロー列伝。巨人軍でいう「長嶋茂雄」「王貞治」「川上哲治」が、そのまま並んでいるようなもので、中でもその筆頭といえるのが、1954年に登場した「300SL」シリーズだろう。

雑誌の『カーグラフィック』でも創刊号の表紙と特集を飾った超名車。日本でも戦後の人気プロレスラーである力道山や俳優の石原裕次郎が乗っていたので、知っている人も多いだろう。
しかも、取材時にはガルウイングドアの量産版300SLだけでなく、乗用車になる前のプロトタイプレーシングカーである「300SLR」や、その派生バージョンともいうべき「300SLロードスター」が一気に見られたのだ。
長嶋の現役時代の背番号3のユニホームに、天覧試合でホームランを打った時のユニホーム、さらに監督になって90番になった時のユニホームがまとめて見られるような感覚かもしれない。
とにかく、その手づくりで仕上げられたであろうエレガントな空力デザインは美しいのひとこと。ボディーの小ささも実物を見るからリアルに伝わってくる。ついでにいうと、その隣に並んでいた300SLのコンパクト版、かわいらしくて日本人受けしそうな190SLなんかも興味深かった。

また戦前、戦後に活躍したVIP御用達リムジンもメルセデスならではの迫力だ。例えば「グローサー・メルセデス」の名前で有名な、直列8気筒スーパーチャージャーエンジンをドカンと積んだ1930年代の「770K」。その全長5.6mという迫力ボディーはもちろん、エレガントな見た目に隠された、重量級の防弾ガラスや防弾補強の話もすごい。
さらにクルマ好きならずとも興味深いのは、昭和天皇がお乗りになったというグローサーの実物だろう。いわゆる「溜色」と呼ばれる深いワイン色というか漆色のリムジンで、各所に皇室の紋章が。本来は私たち世代より上の人が反応するのかもしれないが、なぜか自分も最敬礼したくなるようなオーラをたたえていた。
このほかにも、館内にはヨーロッパ各国に散らばっていた王族および皇族御用達カーがずらり。当時、まさしくメルセデスが世界の高級車として君臨していたことがよくわかる構図で、これまたクルマ業界人なら抵抗できない魅力なのだ。

後は、やっぱりモータースポーツ関連のクルマだろう。実に1890年代からレーシングカーを作り、1930年代にはバリバリにグランプリで活躍していたメルセデス。当時の「シルバーアロー」もいいし、ニュルブルクリンクオールドコースでF1が開催されていた(!)頃のレーシングカー「W196」もまた恐ろしくすてき。当時のモノクロ写真もたまらないオーラだ。

今日にいたるまで、量産車を作り、高級車を作り、VIP車を作り、レーシングカーを作ってきたメルセデス・ベンツというブランド。
こんなことは、たとえフェラーリとフィアットが完全合併して、ブランド的に一緒になっても(なるわけないけど)、トヨタと日産とホンダとマツダとスバルが一緒になっても、恐らく無理な話で、まさしく自動車の歴史=メルセデスの歴史なのだ。それゆえに、メルセデス・ベンツ・ミュージアムは「クルマに興味がある者なら一度は行っておかねば!」という超スタンダードなのだ。

(文=小沢コージ)

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[ガズ―編集部]