【モータースポーツ大百科】SUPER GT(後編)

2000年から2013年にかけて、全日本GT選手権およびSUPER GTのレースが開催されていたマレーシアのセパン・インターナショナル・サーキット。
SUPER GT初年度の2005年シーズンは、ZENTセルモ スープラをドライブする立川祐路/高木虎之介がドライバーズタイトルを獲得した。
2013年に発表された、新しい車両規定に沿った2014年のGT500クラスのマシン。車体についてはドイツツーリングカー選手権と共通の規定にのっとったものとなっている。
GT300クラスのマシンはGT3車両が主流となっており、JAF-GT車両による参戦は少数である。写真はBMW Sports Trophy Team StudieのBMW Z4 GT3。
2014年シーズンにSUPER GTが初開催された、タイのチャーン・インターナショナル・サーキット。海外進出の成否に、SUPER GTの未来がかかっている。

2005年、JGTC(全日本GT選手権)に大きな転機が訪れる。それまではJAFが統括する全日本選手権として開催してきたが、このタイトルをあえて外し、SUPER GTと名称を改めたのだ。全日本選手権といえば参加者にとっては栄えあるタイトル。それをなぜ外したかといえば、シリーズ側に海外進出の意図が強くあったからだ。事実、2000年からはマレーシア・セパンでのレースを開催、2004年にはアメリカ・カリフォルニアでの開催にもこぎ着け、あわせて中国・上海での開催も視野に入れていた。こうした方針を推進するにはJAFの管轄下から離れる必要があったのだ。
また、JAFの管轄下から離れることでレース運営面でもシリーズオーガナイザー側に大きな自由が生まれ、レギュレーションの迅速な改正など臨機応変な対応が可能となった。

もっとも、JAF管轄外といっても、車両規則の制定など一定の役割は引き続きJAFが担当しており、SUPER GTとJAFが完全に袂(たもと)を分かったわけではない。
その車両規則については、GT500クラスでは2009年より自然吸気の3.4リッターV8エンジンをフロントに搭載し、リアにギアボックスをレイアウトしたトランスアクスル方式の専用車両に一本化。これにともなって性能調整が不要になった。続いて2014年には、同じトランスアクスル方式ながらDTM(ドイツツーリングカー選手権)と共通化した車両規則を導入したものの、2015年にNSXの発売を予定しているホンダは、生産車の形式にならって次期型車両をミドシップレイアウトとする方針を決定。さらにパワーユニットをハイブリッド式としたため、DTM規則に準じた日産(GT-R)やトヨタ(レクサスRC F)よりも重い最低重量がNSXに科せられた。一種の性能調整が復活したと見ていいだろう。

いっぽう、GT300クラスではGT3車両が全体のおよそ8割を占め、残る2割がSUPER GT独自のルールであるJAF-GT車両となっている。GT3車両はいわば既製品のレーシングカーで、価格も5000万円前後といわれているほか、規則で独自開発が禁止されているためにプライベートチームには扱いやすいというメリットがある。いっぽうのJAF-GT車両はいわば特注品で、値段はつけづらいものの一説には1億円ともいわれる。またシーズン中も一定の開発が可能なため、自動車メーカーの支援を受けるチームでなければ手が出しにくい状況となっている。こうした状況を鑑み、シリーズオーガナイザーはGT300クラス用のマザーシャシーを用意し、プライベートチームにもJAF-GT車両での参戦が容易になる状況を作り出している。なお、2015年にはマザーシャシーを使用した車両が少なくとも4台は参戦する見通しだという。

今後、SUPER GTはどうなっていくのか?国内市場が頭打ちとなっていることもあり、シリーズの海外進出は是が非でも実現したいところだ。しかし過去14回開催してきたマレーシア大会が2013年限りで終了。代わって2014年にはタイ・ブリーラムに新設されたサーキットでタイ大会が実施されたが、首都バンコクからは400kmも離れているなど、今後の課題は少なくない。それ以外の国での開催は、最大の成長市場と見込まれる中国大会を含め、めどが立っていないのが現状だ。
そうしたなか、DTMとの連携を図ることで国際化を進めるプランも進行しているが、SUPER GTはセミ耐久、DTMはスプリントというレース形態の違いから、両シリーズの完全統合は困難との見方も浮上している。
いずれにせよ、SUPER GTが日本で最も人気のあるレースシリーズであることは間違いない。今後もシリーズの動向を注意深く見守っていきたいところだ。

(文=大谷達也)

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[ガズ―編集部]