わたしの自動車史(前編) ― 御堀直嗣 ―
わが家に自家用車が来たのは、私が18歳で運転免許を取得した後です。昭和45年式のスカイライン1800デラックス。いまで言うハコスカの、2000GTではなく廉価版といった4ドアセダンでした。直列6気筒エンジンを積んだGTのロングノーズに比べ、前がやや寸詰まりに見える様子に、内心がっかりした覚えがあるのですが、やはりクルマ好きの友人に「お、こいつはプリンスのエンジンを積んだやつじゃないか!」と指摘されてからは、現金なもので誇らしく思えるようになりました。
自分で買ったクルマというと、30歳を超えてからの初代マツダRX-7、いわゆるSAの前期型です。中古車で、35万円だったと記憶しています。
それまでは、レースをやっていたので日々お金がなく、自分のクルマを持つなど不可能でした。ただ、レース用のマシンは自前です。スズキの3気筒2ストローク413ccレーシングエンジンを積んだベルコ97Cで、FL500のレースに2年間参戦し、次に、スバルの水平対向4気筒1600ccエンジンを搭載したSES01Jに乗り換え、FJ1600のレースに2年間参戦しました。ここで一度、ポール・トゥ・ウィンで優勝しましたが、すでに26歳という年齢を考え、また資金にも行き詰まり、プロフェッショナルへの道をあきらめました。
なぜ、最初がRX-7だったかというと、リトラクタブルヘッドライトのスタイルがなんともかっこいい。そして、ロータリーエンジンというものを運転してみたかった。この2つが理由です。
次は、1976年式のシボレー・ノーヴァ2ドアクーペです。これは、ライターとなってから、取材先で見つけたアメ車で、車検が8カ月ついて5万円でした。左ハンドルで、ベンチシート、左のドアには大きなへこみがあり、それは、エディー・マーフィー主演の映画『ビバリーヒルズ・コップ』第1作で、まだ主人公がデトロイト市警の刑事をしていたときの愛車と同じ、ドアのへこみ具合も同じという面白みもありました。
実は、このクルマが今も忘れられない愛車といえる一台です。クルマはボロでしたが、このクルマで夏はスキューバダイビングに行き、そのまま港でベンチシートを生かして寝泊まりしたり、そのベンチシートを生かして6人乗りでバーベキューに行ったり、ガールフレンドと外房へ海水浴に行ったり……いかにもアメ車らしいベンチシートのクルマでひと夏を存分に楽しんだからです。
車検更新に買った値段以上のお金がかかるので泣く泣く手放し、次はシボレー・カマロに乗りました。このクルマで、富士スピードウェイや鈴鹿サーキットのレース取材に行きました。そして、あこがれのシボレー・コルベットです。86年型のC4。ここまですべて中古車で、コルベットではオーバーヒートで苦労し、青山通りでロングノーズのフードを開け、青山学院の守衛さんにヤカンに水をもらって継ぎ足した恥ずかしさはいまも忘れません。
このあと、初めて新車を手に入れることになります。
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[ガズ―編集部]
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