【モータースポーツ大百科】ツーリングカーレース(後編)

1993年のイギリス・ツーリングカー選手権(BTCC)スラクストン戦の様子。BTCCにはヨーロッパのメーカーだけでなく、日本からもトヨタや日産などが参戦した。
BTCCと同時期に注目を集めたドイツ・ツーリングカー選手権は、1997年に一度廃止されたが、2000年に復活。今日でも根強い人気を誇っている。
ホンダは2013年より世界ツーリングカー選手権に本格参戦。同年のマニュファクチャラータイトルを獲得している。
錚々(そうそう)たる顔ぶれのドライバーを擁するシトロエンは、2014年シーズンに圧倒的な強さを披露。マニュファクチャラーとドライバー(ホセ・マリア・ロペス)の両タイトルを独占した。

ヨーロッパ・ツーリングカー選手権が行き場を失うなかで、爆発的な人気を博すことになるのがイギリス・ツーリングカー選手権(BTCC)だった。彼らはグループAをベースにしながらも排気量を2リッターに限定したスーパーツーリング規定を制定。ここに各メーカーのDセグメントモデルが大挙して押し寄せ、1993年にはBMW、ヴォクスホール、トヨタ、マツダ、日産、プジョー、ルノー、フォードが参戦して活況を呈した。これを受け、日本やヨーロッパなど各国で同じ規則によるツーリングカーレースが開催されたが、コスト高騰のため90年代後半に向けて次第に衰退。2000年のBTCCにはたった3メーカーのみが参戦することとなった。BTCCは現在も開催されているが、もはや当時のような国際的影響力はまったく持ち得ない状況となっている。

これと前後して注目を集めたのが1990年代のドイツ・ツーリングカー選手権(DTM)だった。アウディは92年に撤退したものの、すぐにオペルやアルファ・ロメオが参戦し、メルセデスやBMWを相手に激戦を繰り広げるようになる。これがやがてITCへと発展、直後に空中分解したものの、現在はメルセデス、アウディ、BMWがシリーズオーガナイザーと緊密に連携し、大きな成功を収めていることは前編で紹介した通りである。

一方、現在国際的に開催されているツーリングカーレースとしては、世界ツーリングカー選手権(WTCC)が挙げられる。これはヨーロッパの有料テレビチャンネルであるユーロスポーツのサポートを得て発足したもので、当初は開発を厳しく制限したスーパーツーリングカー規定を採用。その後、ディーゼルターボエンジンの採用も認めると、セアト・レオンがタイトルを獲得し、史上初めて国際的な選手権を制したディーゼル車となった。
WTCCは2011年よりWRCと同じ1.6リッターガソリンターボにエンジン規定を一本化。シボレー、BMW、セアトが覇を争っていたが、2013年からはホンダが本格的な参戦を開始し、マニュファクチャラー・チャンピオンに輝いた。ところが、2014年には空力に関する規定などが大幅に緩和。ここに狙いを定めていたシトロエンは、WRCで9回タイトルを勝ち取ったセバスチャン・ローブ、ツーリングカー遣いとしてはベテランで優れた実績を誇るイヴァン・ミューラー、若手のホセ・マリア・ロペスなどを起用して参戦。24戦で18勝という圧倒的な勝率でドライバー(ロペス)とマニュファクチャラーの2冠を達成したのである。

WTCCもDTMも参戦メーカーの数が少ないのは悩みの種だが、逆に数が少ないからこそ、お互いの合意を得てシリーズを運営することができているともいえる。両シリーズの健全な発展を祈りたい。

(文=大谷達也)

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[ガズ―編集部]

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