豊田市は挙母市だった!? その歴史を振り返る

愛知県豊田市。トヨタ自動車が本社を置く、いわずと知れた企業城下町だ。この市は元々「挙母(ころも)市」という市名だったことをご存じだろうか?

「クルマのまち」ではなく、「マユのまち」だった
養蚕・製糸業を中心に栄えた挙母町。しかし、昭和の初めころからその需要が減り、当時の町長・中村寿一が町の繁栄を取り戻すために乗り出したのが、豊田自動織機製作所が新設した自動車製造部の工場誘致だった。

誘致成功後の1938年、トヨタの挙母工場が論地ヶ原(現豊田市トヨタ町)に完成。発展を遂げた拳母町は1951年、挙母市として市制を敷く。

たった8年で市名変更
そして1958年、商工会議所から市宛てに、市名を「豊田市」に変更してほしいという請願書が届く。理由は、挙母市が全国有数の「クルマのまち」に成長したことと、地名の「挙母」が読みにくいことから。元の地名に愛着を持つ市民も多く、一時は賛成派と反対派で市を二分するほどの論議が展開されたが、翌1959年には市名を「豊田市」に変更したのだ。

ちなみに、このときトヨタ自動車の本社工場がある場所も、「トヨタ町」と改名された。トヨタ自動車の本社住所は、愛知県豊田市トヨタ町1番地となる。

読み方は「とよだ」? 「とよた」?
トヨタ自動車創業者一族の豊田(とよだ)姓に由来するため、「とよだし」と濁って発音してしまいがちだが、これは間違い。豊田市は「とよたし」と清音で読む。

同じく、企業・団体名に由来する市名としては、奈良県の天理市が有名だ。ただ、こちらは市誕生時からこの名称で、後から変更されたわけではない。

市名をも変更してしまう大きなパワー。大企業が持つ力は計り知れない。そのうち、本当に「TOYOTOWN」という地名ができたりして……!?

(田島里奈/ノオト)

[ガズ―編集部]