戦車の運転に必要な免許は? 自衛隊車両への素朴なギモン

みなさま、戦車が道路を走っているのを見たことがありますか?

ちょっと想像してみると、狭い道は無理そうですよね。では、広い国道や高速道路なら走れるのでしょうか? そもそも、道路交通法上、戦車はどのように分類されていて、公道で運転するためにはどんな免許が必要なのでしょうか?

今日は、元自衛官女子の筆者が、戦車についてのギモンにお答えします。

ギモンその1  戦車を操縦するのに運転免許はいるの?

​​結論から申し上げますと、もちろん必要です。

戦車は、道路交通法で分類すると大型特殊車両。戦車の運転には、大型特殊自動車免許が必要です。

また、戦車は大型特殊免許の中の「大型特殊免許(カタピラ限定)」という限定免許でも運転できます。

ギモンその2 運転免許以外に必要な資格はあるの?

自衛隊の車両を運転するには、「MOS」と呼ばれる自衛隊内部の資格が必要です(陸上自衛隊のみの制度)。

戦車を運転するには、まず陸上自衛官になり、戦車部隊に配属されMOSを取得するという段階を踏まないといけません。前述の大型特殊免許も必要です。

戦車を運転するのは、狭き門なのですね。

ギモンその3 戦車は公道を走れるの?

戦車をはじめとした特殊車両も、移動のために公道を走行することがあります。

公道を走るときのために、自衛隊車両にはミラーやヘッドライト、ウィンカーなどが装備されています。

こちらは、戦車ではありませんが、ヘッドライトを点灯して走行中の「87式偵察警戒車」。ウィンカーとサイドミラーがついているのがおわかりですか?

ミラーは取り外しができますが、ライトやウィンカーは外せません。演習時にはカバーや板をかぶせることで、防護しています。

戦車の重量は50トン近く。舗装が薄い箇所では、道路が傷ついてしまうことも! そのため、どこの公道でも走れるわけではありません。路面が丈夫な道路を先に調べて、しっかり運行計画をたててから走行しているんですよ。

ギモンその4 公道を走る戦車を見たい場合は、どうすればいいの?

陸上自衛隊の駐屯地は、演習場が併設されていることが多いので、公道で戦車などの自衛隊車両を見かけることはあまりないでしょう。

ただ、北海道の千歳市や、大分県の玖珠市では、駐屯地と演習場が離れているので、公道を走っている戦車や特殊車両を見ることができます。

両市ではウェブサイトで運行予定表を公開しています。タイミングが合えば、公道を走る戦車の姿を見ることができますよ!

北海道千歳市
http://www.city.chitose.hokkaido.jp/index.cfm/98,85948,181,954,html

大分県玖珠町
http://www.town.kusu.oita.jp/621.html

ギモンその5 もしも事故が起きたら……?

あってはならないことですが、公道を移動中の戦車が接触などの事故を起こしてしまった場合どうなるのでしょうか?

自衛隊の任務に要する特殊車両には、民間の保険をかけることができません。そのかわり、万が一の事態に備えて、自衛隊の組織には「補償」を担当する部署があります。そこで査定を行って、必要があれば国が補償をすることになっています。

​​もし、公道を走る戦車を見る機会があったら……。

大型特殊免許とMOSを取得して日々訓練している操縦手の隊員。その日のために入念な準備と調整をした裏方の隊員。不測の事態に備えて待機している後方支援の隊員。

さまざまな人がその戦車に関わっていることを思い出してみてくださいね。

(綾部綾+ノオト)

画像:陸上自衛隊HPより引用

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road