ナビを使っても逆走する? タカタ財団・助成研究報告会レポ

6月7日(火)、公益財団法人・タカタ財団の主催による「第7回助成研究報告会」が行われました。
タカタ財団とは、シートベルトやエアバッグ・チャイルドシートなどを製造しているタカタ株式会社が設立した公益財団法人。交通事故犠牲者ゼロを目指し、交通安全に関する研究を支援しています。平成21年度から研究助成を公募・実施しており、今年が7回目となります。

今回、本報告で発表されたテーマは下記の4つでした。

交通シーンのエピソード記憶に基づく安全予測モデルの構築
Web調査による高速道路における逆走発生仮説の検証
小児医療関係者のためのチャイルドシート着用に関する教育ツールの開発
軽度半側無視症例を対象とした危険運転予測評価システムの開発・検証と運転行動の分析

このなかで、一般のドライバーにも関係しているテーマ「Web調査による高速道路における逆走発生仮説の検証~行き先間違い発生要因の把握」について詳しく解説していきましょう。発表者は、大阪大学大学院准教授・飯田克弘さんです。

現状行われている「高速道路での逆走」対策は、事故に至ったケースに基づいています。一方で、未確保事案(つまり、自力で逆走から復帰したケース)も多いというデータがあります。これらも含めた対策を講じなければならない、と飯田さんは言います。

この研究では、「行き先間違いが起点となって逆走が発生するのか?」、また「どのように情報を取得して行き先を間違えたのか?」について検証しています。

検証のため、免許保有者1万人にWebアンケートをおこないました。高速道路利用者のうち、行き先間違いをした経験がある人が53%、そのうちIC誤流出をしてしまった人が96.9%となっています。また、料金所手前で転回(逆走)した人は3.1%でした。

「カーナビがあるのに、行き先間違いなんて発生するのか?」と普通は思いますよね。しかし結果としては、行き先間違い時のナビ利用率は53.9%で、利用していなかった45.8%よりも多い数字でした。ナビを利用しても、行き先間違いをしてしまった人が多数いるのですね。

「ナビの情報提供だけでは限界があり、標識から情報を得る必要がある」と飯田さん。ナビと標識、それぞれの利用状況別にクロス集計した結果も出しています。

さらに、類似した性質を持つ人をグルーピングして、特徴を把握しました。

さまざまな分析の結果、行き先間違いが発生する要因としては「経路選択をナビ重視で行う傾向があり、標識を参考にしていない」という結果がでました。また、「ナビを勘違いし標識を読めなかった」「ナビを勘違いし標識も勘違いした」というケースもありました。

<まとめ>
逆走の発生を防ぐには、まず行き先間違いを防止しなければならない
ナビによる情報だけでは限界があり、標識からも情報を得る必要がある
合流・分岐が連続する複雑な道路では、カーナビや案内標識をうまく利用できていない状況が伺える

個人的な見解として、飯田さんは「道路がより複雑になっているので、ナビゲーションのタイミングをもっと早くすべきではないか。それから、みなさんやはりカーナビに頼りすぎてしまっている。標識もちゃんと見ないといけないのですが、そのための注意喚起も必要だろうと思います」と話していました。


想像するだけでも怖い「高速道路での逆走」。みなさんも一度は間違えそうになったことがあるのでは? カーナビだけに頼らず案内標識もきちんと見て、行き先間違いや逆走を防ぎましょう。

(村中貴士+ノオト)

[ガズー編集部]