いくつ見たことある?立体に見える路面標示「イメージハンプ」

物理的な凹凸をつけず、舗装の色や素材を変えて立体に見せる路面標示。アレってどういう目的で設置されているの? また、どんな種類があるの? 疑問に思った筆者が「積水樹脂株式会社」に取材をしてきました。逆走の防止や海外での施工例など、意外といろんな場所で使われていることが分かりましたのでご覧ください!

――立体に見えるアレって、正式名称はあるのでしょうか?

弊社での商品名は「ソリッドシート」ですが、一般的には「イメージハンプ」と呼ばれています。

――立体のパターンは何種類ぐらいあるのでしょうか?

弊社の場合、標準品で7種類、サイズ違いや左右形状違いを追加すると12種類です。地域や地方自治体の要望に合わせた特注デザインを合わせると50種類以上となります。最初に製品化されたのはマウンテンタイプとブロックタイプです。

三角柱の立体物が路面に転がっているように見える「マウンテンタイプ」

――どのような経緯で開発されたのでしょうか?

生活道路内で多く発生している交通事故対策のために、大阪府警と共同で開発しました。ビックリさせすぎないように、また急ブレーキ・急ハンドルをさせないように、アクセルから足が離れる程度の驚きを感じさせるサイズ、形状にデザインしています。

通行帯を狭く見せることでアクセルから足を離させる「ブロックタイプ」

――どれくらいの効果があったのですか?

実証試験は1996年(平成8年)に吹田市と豊中市で実施しました。その結果、車速はおよそ10km/hダウンし、交通事故を40%減らす効果が認められたことで、大阪府全域での対策箇所に設置が進められ、のちに全国でも採用されるようになりました。

交差点マークが路面から浮いて見える「クロスマークタイプ」

――施工方法は、道路でよく見る「とまれ」や「60」などとは違うのでしょうか?

一般的な道路標示は、加熱してドロドロに溶かされた塗料を路面に塗布しています。ソリッドシートも基本素材は同じですが、シート状に成形された物を工場でカット、現場で配置して、ハンドバーナーで炙り溶かして路面に接着させています。

――色はどのように組み合わせているのですか?

立体に見えやすいよう、各色に3段階の明度差をつけ、かつ路面との明度差も確保しています。白、黄、青が基本ですが、それ以外の色を使う場合もありますね。車高によって見え方が変わってきますが、視点の高さは1,200~1,400mmで調整しています。

縁石があるように見せることでショートカット走行を防止する「ブロックタイプ Wタイプ」

――生活道路以外にも使用されているのですか?

逆走事故対策として、高速道路の出口部分にも試験的に採用されています。具体的には、下記2種類の実施例があります。

(1)自分が逆走していることを気づかせるように、「立体的に見える反対向きの矢印」を設置(長崎自動車道、川登SA下り)
(2)立体的な看板が浮き上がり、「逆走危険」と注意喚起する(国道178号線 岩美道路、岩美IC出口、浦富IC出口)

――海外でも使用されているのですか? 日本との違いなどあれば教えてください

海外でも日本とまったく同じものが使われています。海外ではクルマを強制的に減速させるため、大きな凸凹を路面に設ける対策が主流ですが、輸送トラックの荷崩れが問題となる場合に使用されています。あとは減速が必要な合流部手前、横断歩道手前、料金所手前に設置されているケースがあります。

オランダでの使用例(マウンテンタイプ+ブロックタイプ)

立体に見える標示方法、意外といろんなパターンがあるのですね。「ビックリさせすぎないように、アクセルから足を離させる」というのが重要なポイントのようです。 イメージハンプがあるということは、事故が多い場所であることの裏返しでもあります。ドライバーのみなさん、安全運転を心がけましょう。

(村中貴士+ノオト)

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road