操作ミスの原因は? 若者と高齢者に多い「操作不適事故」

「アクセルとブレーキを踏み間違えてしまった」という事故のニュースをよく目にします。事故原因としては「操作ミス」になりますが、どのような状況で起こっているのでしょうか? 公益財団法人・交通事故総合分析センター渉外事業課 市沢さんに、「若者と高齢者に多い操作不適事故」について聞いてみました。

――操作不適事故にはどのような種類があるのでしょうか?

事故を分析するにあたり、形態を「ハンドル操作不適」、「ペダル踏み間違い」、「ブレーキ操作不適」、「その他の操作不適」の4つに分類しました。「その他の操作不適」には、ギアの入れ違い、オートスピードコントロール装置(クルーズコントロール)などの操作不適などを含みます。

――操作不適事故の件数は増えているのでしょうか?

形態別に見ると、ハンドル操作不適事故、そのほかの操作不適事故は減少傾向にありますが、「ペダル踏み間違い事故」は横ばい、「ブレーキ操作不適事故」は増加に転じています。総じてブレーキ操作不適事故が多く、平成25年では操作不適事故全体の約半数を占めています。

図1 操作不適事故件数の推移

――事故を起こすのは高齢者が多いのでしょうか?

全体的に見ると、24歳以下の若い運転者と75歳以上の高齢運転者で9%を超えており、ほかの年齢層よりも操作不適事故を起こしやすいことが分かります。

図2 年齢層別操作不適事故割合(平成16~25年)

図3は、操作不適事故に占める死亡事故の割合(以下、死亡事故割合)を形態別に示したものです。ハンドル操作不適事故の死亡事故割合は4.3%で、他の形態と比べて極めて高くなっています。全人身事故の死亡事故割合(0.6%)と比較すると約7倍にもなり、いかにハンドル操作不適が重大な事故につながりやすいかが分かると思います。

図3 操作不適事故の死亡事故割合(平成16~25年)

――なぜハンドル操作不適が突出して高い割合なのでしょうか?

一番大きな理由はスピードですね。ほかの操作不適事故や全人身事故では、40km/h以下の比較的低い速度が8割以上となっているのに対し、ハンドル操作不適事故では半数近くが40km/hより高い速度となっているためだと考えられます。

図4 操作不適事故の形態別危険認知速度(平成16~25年)

――ハンドル操作不適事故はどのような場面で起きやすいのでしょうか?

通行目的では「ドライブ」、「観光・娯楽」、「帰省」で高くなっています。一方、「業務」や「通勤・通学」、「買い物」では低くなっており、ハンドル操作不適事故は普段運転しない不慣れな道路で起こしやすいと言えそうです。

また、特に深夜から早朝時間帯で多く事故が発生しており、24歳以下の若い運転者の事故割合が高くなっていることも特徴的です。これは、交通が閑散になることにより速度超過が起きやすいことや、深夜早朝の時間帯は注意力が散漫になり漫然運転になりやすいことが原因だと考えられます。

図5 通行目的、時間帯別のハンドル操作不適事故割合(平成16~25年)

――日中より深夜が多いのですね。では、ペダル踏み間違い事故はどうでしょう?

どの年齢層でも行動類型では「発進時」、道路形状では「道路以外の場所」で高くなっています。ここで言う「道路以外の場所」とは、高速道路のサービスエリア、店舗の駐車場、広場などです。

図6 事故調査項目別のペダル踏み間違い事故割合(平成16~25年)

――ニュースでよく見る「駐車場でペダルを踏み間違えて、お店に突っ込んでしまった」というケースが数字上でも多いことがわかりますね。では、ブレーキ操作不適事故はどうでしょうか?

図7を見ると、どの年齢層でも「舗装(凍結)」、「舗装 (積雪)」で高いことが分かります。年齢層別では、この項目でも24歳以下の若い運転者の事故割合が高く、若い方ほどブレーキ操作不適により事故を起こしやすい傾向にあると言えます。

図7 路面状態別のブレーキ操作不適事故割合(平成16~25年)

――ドライバーは、どのような要因で運転操作を誤ってしまうのでしょうか?

当センターが保有する交通事故例調査データから、178名の操作不適事故の人的要因について分析してみたところ、図8のような結果が出ました。

この分析から言えることは、「慌て、パニック」が操作不適に最も影響を及ぼす要因であることです。操作不適のあった運転者の多くは、何らかの危険を認知し、その危険を回避する際に慌てたり、パニックに陥ったりして運転操作を誤り、事故を起こしています。

図8 操作不適事故に起因する人的要因 (複数回答有り)

<まとめ>

「ハンドル操作を間違えて、ぶつかりそうになった」「ペダルを踏み間違えて、あせった」といった経験をしたことがある方も少なくないはず。操作不適につながりやすい「慌て」や「パニック」に陥らないよう、道路交通環境に応じた速度で走行するとともに、車間距離を十分にとり不意な交通状況の変化に対応できるよう余裕を持っておきたいものです。また、走り慣れた道だからといって漫然と運転することなく、他車の存在や路面状況などを予測して運転することも大切。どんな道でも、いつも慎重な運転を心がけたいものですね。

(村中貴士+ノオト)

[ガズー編集部]