新世代“グループB”? WRC 2017に向けた各メーカーの動きとは

2017年、トヨタのWRC復帰によってますます国内外で注目が集まってきているWRC(世界ラリー選手権)。最近では、史上最長80kmに及ぶスペシャルステージが設定されたラリー・メキシコが行われました。韓国の現代(ヒュンダイ)自動車もトップクラスの戦闘力を身につけて復活し、WRC大好きな僕にとってはスポーツチャンネル「Jsports」でのダイジェスト番組を見るのが楽しみです。

さて、トヨタが復活する来年2017年は、マシン規定が大きく変わる年になります。WRCフリークの間ではその規定を見て「グループBの復活」という声も上がっています。どんなラインナップになりそうか、各メーカーの動きを見てみましょう。

「グループB」とは何なのか?

1982年~86年までのWRCのトップカテゴリ
ベース車両が年産200台以上である(内20台はラリーモデル)
改造の自由度が高く、実質WRCの「プロトタイプマシン」選手権となった
アウディ、ランチア、プジョーをはじめ、多くのマニファクチャラーが参戦した
日本からは、トヨタ(セリカ)、日産(240RS)、マツダ(SA22C型RX-7)、三菱(賞典外でスタリオン)
エンジン出力は、最終的に600馬力前後まで膨れ上がった

あまりにも速すぎて、プジョーのトップドライバーだったアリ・バタネンが一時死線をさまよう程のクラッシュ、1986年ポルトガルラリーでは、ヨアキム・サントスがドライブするフォードRS200がコースアウトによる観客3名死亡事故を引き起こします。
ラリー運営も含めグループBそのものの安全性に疑問符がつき始めてきた最中に、86年のフランス領コルシカ島で行われたターマックラリーツール・ド・コルスでランチア・デルタS4を駆るヘンリ・トイボネンがトップで走行中のコースアウトからクラッシュ炎上で死亡してしまいました。
これらの事故を重く見たFISA(現在のFIAに相当する組織)はグルーブBの参戦を86年いっぱいで終了することを決定します。

それから20年、WRCはトヨタ・セリカ、スバル・インプレッサ、フォード・エスコートをはじめとした市販車ベースのグルーブAラリーカーの時代となり、そこから発展し現在のWRカーに至ります。

この2017年の新WRカーの主な変更点は下記になります。

吸気リストリクターが現在の33Φから36Φに拡大
最高出力が約380馬力にパワーアップ
車体重量が現在から25kg軽量化される
エアロパーツ(フロントバンパー、リアウィング等)が大型化
アクティブセンターデファレンシャル機構の再導入により前後の駆動力配分を任意に変更できる

現在のWRカーでも、当時のグループBのスピードを凌駕するパフォーマンスを持っています。どれ程のハイスピードバトルになるのかが非常に気になるところです。

10月1日~16日まで開催していたパリ・モーターショー2016では、いくつかの参戦メーカーが実戦モデルに近い状態でお披露目されていたので、実際のテストでうけた印象も入れて紹介していきます。

トヨタ

来シーズンもっとも注目されているのが、TOYOTA GAZOO Racingのヤリス(日本名:ヴィッツ)WRCです。その指揮をとるのが、90年代を代表する名ドライバー「フライング・フィン」トミ・マキネン。自らもハンドル握りテストに望む様子は、現役時代さながらの気迫を感じます。マシンは、非常に派手なエアロパーツを纏っており、筆者的にも全メーカーの中で一番過激なデザインではないかと思います。まだドライバーラインナップは不明ですが、エースドライバーとしてテストに参加中のフィンランド人のユホ・ハンニネンが有力視されています。筆者としては、現在フィンランド選手権にTMR(トミ・マキネンレーシング)で修行中の新井選手・勝田選手のどちらかに加わってほしいものですね。

ヒュンダイ

2015年の復活からいっきにトップチームのひとつとして優勝争いに絡む韓国・ヒュンダイは、現行のi20をより発展させたマシンを開発中です。ボディは再び3ドアに。テスト映像を見る感じですが、エアロパーツの大型化によってより安定性を得たことと、コンパクトになったことによってコーナリングも鋭くなったように見えました。ドライバーは、ティエリー・ヌービルとダニ・ソルドの2人が確定しています。タイトル獲得を目指して頑張って欲しいところです。

シトロエン

CITROËN Communication / DR et CITROËN Sport Communication

今シーズンは、ワークスでのフル参戦を行わず来年度の新型車C3をベースにしたWRカーのテストに集中しております。以前も1年ワークス活動休止をし、新型車を開発し、参戦直後から好成績を残しているので、このC3 WRCも非常に期待が持てますね。エースドライバーは、ここ数戦好成績を収めているクリス・ミークで変わらないでしょう。

フォード

ここ最近、若手ドライバーの成長に気を揉んでいるフォード・Mスポーツ。一時期撤退が噂されていたものの、マルコム・ウィルソンが率いるMスポーツの熱意にフォードは応え、若手ならではのチャレンジングな熱い走りでファンを沸かせています。マシンは現行のフォード・フィエスタをベースに開発が進められており、元々が可愛らしい形状だったからか、新規定マシンは「やんちゃ坊主」みたいな印象を受けました。

フォルクスワーゲン

王者フォルクスワーゲンは、現行のポロ R WRCをベースにより発展させたマシンを制作しています。既に熟成の域に達しているポロ R WRCを規定に合わせたアップデートをしている感じですので、安定性と速さがそのまま底上げされると予測します。ドライバーは、変わらずセバスチャン・オジェを筆頭にヤリ-マティ・ラトバラ、さらにマッズ・オストベルグの布陣で2017年を戦っていくと思われます。

こうして見てみると、今年ワークス参戦を休止し、新型C3をベースにマシンを開発しているシトロエン/DSと、数年の開発期間を経てついに復活するトヨタのヤリスWRC、この2台が来シーズンの注目のマシンではないでしょうか。

さらに来年は日本でもWRカー規定マシンが走れるかもしれない「FIA日本スーパーラリーシリーズ」が発足するので、間近で大迫力の走りが見れるかもしれないですね!

(クリハラジュン+ノオト)

[ガズー編集部]