特殊車両製造の現場に潜入!“にしてつ”のグループ会社「西鉄車体技術」その2

前回の記事では、航空機製造の技術を源泉に持つ「西鉄車体技術株式会社」の成り立ちを紹介しました。今回はいよいよその内部の様子をお伝えします。

車体整備グループの工場にはバスボディの修理の順番を待っていたバスが入庫する

まずは、全国から受注するバスボディ修理の作業の様子をご覧いただきます。多くのバスが作業中だった“車体整備グループ”の工場に潜入していきましょう。今回は写真中心でご紹介していきます。

フレームがむき出しになったバス。錆が進行している箇所を中心に修理の範囲を判断しながら張り替えていく
フレームがむき出しになったバス。錆が進行している箇所を中心に修理の範囲を判断しながら張り替えていく
工場内にはいくつもの塗装やパテを研ぐブースが。バス1台をスッポリ囲うこのブースは、間近で見るとかなりの大きさだ
工場内にはいくつもの塗装やパテを研ぐブースが。バス1台をスッポリ囲うこのブースは、間近で見るとかなりの大きさだ

バス室内外部品を取り付ける艤装グループと特殊車両の改造をする特装グループの工場へ

続いて、“艤装(ぎそう)グループ“の工場に移動してみました。「艤装」とは本来、造船の専門用語ですが、工法が近似していることからバスの世界でも使われている言葉だそう。

新しいバス事業者の仕様を応じて機器を取り付けているところ。配線の種類が多いため職人の知識と技術が必須だ
新しいバス事業者の仕様を応じて機器を取り付けているところ。配線の種類が多いため職人の知識と技術が必須だ
特装グループが、医療検診車を作っているところ。奥に見える赤い2本のアームは可動式の溶接機だ
特装グループが、医療検診車を作っているところ。奥に見える赤い2本のアームは可動式の溶接機だ
外板や機器を取り付けるブラケットなどは、さまざまな素材や厚みの板材から製作される
外板や機器を取り付けるブラケットなどは、さまざまな素材や厚みの板材から製作される

西日本車体工業製バスのストック用パーツも製作されている

2010年まではバスメーカーとしてオリジナルのシャシーやボディを持つバスを作っていました。その“西日本車体工業製バス”のパーツもここで製作されています。

完成し出荷を待つパーツの数々。当然のことながら、これらのパーツも手作業で製作される
完成し出荷を待つパーツの数々。当然のことながら、これらのパーツも手作業で製作される
バスのバンパーを製作しているところ。多くの作業工程に手作業が必要となり、職人技が求められる
バスのバンパーを製作しているところ。多くの作業工程に手作業が必要となり、職人技が求められる
工場の一画にはプレス機が並んでいた。写真ではわかりづらいかもしれないが、1台あたり数メートルという大きさだ
工場の一画にはプレス機が並んでいた。写真ではわかりづらいかもしれないが、1台あたり数メートルという大きさだ

ないものは自分たちで作る! 特殊な配管製作もスピーディーに対応可能

艤装グループ工場の奥には、壁で隔てられたスペースが。中に入ってみると、素材のままのパイプや住宅用の窓枠に使われているサッシのような部品を製作する工場だった。

配管を製作する建屋。他社製バスのパーツの急なオーダーにも対応できるという
配管を製作する建屋。他社製バスのパーツの急なオーダーにも対応できるという

ここは、小さな配管などを製作する部屋。短いパイプが壊れた場合、その小さなパーツだけをメーカーに発注すると、納品までに時間がかかってしまうため、自社で作るそうです。窓枠を製作する大型のマシーンも完備されていましたが、それは元々バスのシャシーを製造していたメーカーころからの設備。バスの事故修理の時など、窓を新品にする場合もあり、有効活用されています。

窓枠を一から製作することができる大型のマシーン。バスメーカーだった頃から使われている
窓枠を一から製作することができる大型のマシーン。バスメーカーだった頃から使われている

一度は全国に散った職人が鳥栖工場に再集結

バスの修理や特殊車両の改造の現場をお伝えしてきましたが、作業風景や製作物の様子から、高い技術力に裏打ちされたバスメーカーとしてのプライドが感じられました。

西鉄車体技術という名称になるまでに、幾度の合併やグループの整理が行われ、古くから働いていた技術者たちは一時期、同業他社や異業種に転職という形で全国に散らばりました。しかし、この佐賀県三養基郡基山町の工場に、各人が持つ技術を活かせる場ができたことで、多くの職人が戻ってきたといいます。2010年までバスを製造していた西日本車体工業が愛されていることが分かるエピソードですね。

実際、中途採用者向けの会社説明会では、「ここに入りたいです!」とその場で就職を希望する人も多いとか。替えの効かない技術の伝承がこれからの課題で、後進の育成に力を入れているとのことでした。今度は春に完成するスペシャルな1台をレポートする予定です。どんな車両ができるかは、そのときまでのお楽しみに!


(赤坂太一+ノオト)


[ガズー編集部

取材協力