新オープンのミュージアム「いすゞプラザ」を見学してきた

外に出れば必ず見かけるのが、トラックやバスといった働くクルマ。いすゞ自動車は、そういった“働くクルマ”を世界中に向けて生産している商用車自動車メーカーで、2017年で創立80周年を迎えました。その記念事業のひとつとして、工場のある神奈川県藤沢市に歴史や理念などが詰まった施設「いすゞプラザ」を設立。4月11日(火)に開館したので、早速見学してきました。

白を貴重としたいすゞプラザ。写真左奥のいすゞ・ガーラが最寄り駅である湘南台駅へのシャトルバスを務める

黒を基調とした広々としたロビーを進むと、アテンダントスタッフが笑顔でお出迎え。受付を済ませると最初に目に入ってきたのは、いすゞ自動車の前身のひとつである東京石川島造船所が生産した「ウーズレーCP型トラック(1924年式)」でした。この車両をはじめ、プラザ内に展示されている車両はすべてメンテナンスが行き届いていて、実際に走らせることができるそうです。

このウーズレーCP型トラック(1924年式)は、経産省より近代化産業遺産の認定を受けている

いつまでも見ていたくなる「いすゞミニチュアワールド」

通路を進んでいくと、巨大なジオラマ模型が! 山岳地帯に住宅地、港まである「いすゞ県いすゞ市」では、いろんないすゞのクルマたちが活躍しています。ただ“置いてあるだけ”ではなく、60分毎(15分間)にクルマたちが動き出して、この街の1日の出来事を眺められるようになっていました。

3年かけて製作したという「いすゞミニチュアワールド」。全域1/87スケールで製作していて、ギミックの細かさがすごい!

ジオラマの中には新旧さまざまないすゞ車が走っているのですが、さり気なくコンセプトカーが走っていたり、懐かしの名場面が見られたりするので、動き出すたびに発見があります。いつまで見ていても飽きない、そんなジオラマでした。

黄色と緑のセダンは、いすゞがかつて生産していたジェミニ。「街の遊撃手」で一世を風靡したCMが再現されているのだ
消防車や救急車も走っていて、街の中で起こるあらゆる出来事に対していすゞ車が活躍している様子が観察できる

防衛省納入車両や日本未発売モデルも見られる!

ジオラマをもっと見ていたい気持ちをぐっと抑えて進んでいくと、光が差し込む明るい展示エリアに。ここでは現在、街中で活躍している路線バスやトラック、そして防衛省に納入されている専用車両「SKW」が間近に見られるだけでなく、運転席に座ることもできます。

前面にウィンチを装着したフル装備のSKW。運転席にも座ることができる!

展示されているSKWは、主に災害時の派遣・物資運送で活躍するクルマ。防衛省での名称「3 1/2tトラック」の「3 1/2t」とは、悪路走行時の標準積載量のことで、一般道など平地を走行する場合の最大積載量は6tになります。以前は「73式大型トラック」とも呼ばれていたものです。そこから少し展示場を進んでいくと海外で活躍しているモデルと、建設重機などに使用されているエンジンが展示されていました。

タイをはじめとした東南アジア諸国で絶大な人気を誇るいすゞ・D-MAX。タイは日本と同じ右ハンドル。日本未発売車だ

触れて知る、いすゞのクルマづくり

エスカレーターで2階に上がると、開発から、生産・稼動サポートまで、いすゞのクルマがどのように誕生していくのかを学べるエリアに。このエリアも、ただ見るだけではなく、一部の工程を体験しながら見学できるので、子供から大人まで楽しむことができます。クイズ形式でトラックの整備を学ぶコンテンツや、燃費走行チャレンジや運転支援システム体験ができる、ドライビングシミュレーターもありました。

生産ラインのミニチュアは、現場に忠実に製作されたもの。よく見ると1台1台に指示書が貼ってある(本物を縮小コピーしたもの!)
制限時間内に、メーターパネル周りのパーツを指定通りに取付けられるかをチャレンジするゲーム

ここでもミニチュアが大活躍、「いすゞの歴史」エリア

いよいよ最後は、いすゞ自動車の歴史を振り返るエリアに入ります。そこには広々としたスペースに「スミダM型バス」「TX80」、「初代エルフ」、いすゞ初の自主開発乗用車「ベレル」、GMと提携して開発した1tピックアップ「LUV」、そしていすゞを代表する乗用車「ジェミニ」などの姿がありました。

丸目で愛くるしい表情を魅せる初代エルフ(1964年製)。当時の映像、カタログ、整備書も展示されていた
左からベレル(1963年式)、LUV(1972年式)、ジェミニ(1975年式)

展示車の数々の向かいには、いすゞの歴史年表があり、その時代の1/43ミニカーが並べられていました。飾ってあるミニカーはその大半がこの展示のために新しく作られたもので、データを作成し、光造形機でキット化した部品を造形して、組み立てて、仕上げたもの。その組み立て仕上げ作業の一部は、模型好きの社員の方々も担当したそうです。ここまでミニチュアに力を入れているミュージアムは、なかなかないでしょう。

年表に対応するように並べられたミニカーの数々は、そのほとんどがこの展示のために作られたという

この年表とミニカーの先頭は空きスペースになっています。つまり、今後新型車が発表されるとミニカーになって展示されるということです。

〆は自動車殿堂入りのあの名車で

展示ブースの裏手に回ると、1968年にイタリアのカロッツェリア・ギア社のチーフデザイナーだったジウジアーロの手によって生まれた「117クーペ」が。日伊のクルマづくりの魅力を提示したことや、他社に先駆けてインジェクション(電子制御燃料噴射装置)を採用するなど、技術的にもチャレンジングであったことから、自動車殿堂入りを果たした名車です。

117クーペは、8年間で12万台が生産された名車。壁に描かれているのは、歴代いすゞ車のキャッチコピーだ

オープンしたばかりの「いすゞプラザ」、いかがだったでしょうか? ミュージアムとしては比較的コンパクトですが、その中身は非常に濃く、今回伝えきれなかった部分もまだまだあります。残念ながらGW期間中はお休みとなりますが、クルマ好きならぜひ一度足を運んでみていただきたいと思います。静かにじっくりと見たくなるもので溢れているので、もし可能なら完全予約制となる平日の見学がオススメです。筆者ももう一度、早い時間からじっくり見学をしてみようと思っています。

いすゞプラザ
●住所
神奈川県藤沢市土棚8
●開館時間
月~金曜日 9:00~17:00(完全予約制)
土曜日・祝日 10:00~17:00(自由見学日)
●休館日
日曜、ゴールデンウィーク、夏季休暇、年末年始
●入館料
無料
●問い合わせ
0466-41-5811(受付時間、月~金曜日 10:00~17:00)
●ウェブサイト
http://www.isuzu.co.jp/plaza/index.html

(クリハラジュン+ノオト)

[ガズー編集部]