【まとめ】TOYOTA GAZOO Racingが参戦するレースカテゴリー(国内レース/ラリー編)

「TOYOTA GAZOO Racing (以下TGR)」は現在、国内外12のカテゴリーに参戦しています。この前は、「国際レース/ラリー編」と題して、「FIA-WEC(FIA世界耐久選手権)」「WRC(世界ラリー選手権)」「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」の3カテゴリーを紹介しましたが、今回は国内のレース/ラリーに目を向けて見ましょう。

国内でTGRが参戦しているレース/ラリーは、世界トップクラスのGTレース「SUPER GT」、日本の峠道が舞台の「全日本ラリー」、日本最速モータースポーツカテゴリー「SUPER FORMULA」、そして熾烈なルーキーによる争いが行われている「全日本F3選手権/FIA-F4」の4カテゴリーです。

SUPER GT:世界有数の国際“ハコ車”レース

どんなレース?

SUPER GTは、1994年からスタートした全日本GT選手権(JGTC)がFIA(自動車連盟)の国際シリーズの認可を受け、2005年からスタートしたレースです。年間8戦で戦われ、日本国内のメジャーサーキットだけではなく、東南アジアのタイ(過去にはマレーシア)でのシリーズ戦も開催されます。世界有数のGTレースとして海外での人気も高く、ケーブルTV、地上波でも放映。「GT500」と「GT300」という馬力が異なる2つのクラス、40台以上のレーシングカーが一斉に走る様子は迫力満点です。

どんなマシンが走っている?

前述の通り、「GT500」と「GT300」の2クラスがあり、GT500クラスのマシンは、カーボンモノコックに2.0L直列4気筒ターボエンジン(550馬力以上)を搭載。富士スピードウェイでは300km/h以上を記録します。対してGT300クラスには、国際規格の「FIA-GT3」マシンと独自規格の「JAF-GT」マシンが混在し、GT500クラスよりもさまざまな車種がエントリーしています。

TGRは、GT500クラスにレクサス・LC500を6台エントリー。GT300クラスには「レクサス・RC F GT3」と「トヨタ・プリウス」を走らせています。また、TGRサポートではありませんが、独自規格「マザーシャシー」を持つ86とマークXのボディを架装したマシンもエントリーしています。

SUPER GTの見どころは?

2クラスが混走するレースならではの“追い抜き”や、勝敗を左右する“ピット競争”があります。GT500クラスに限って言えば、同じマシンでもセッティングやタイヤメーカーの違いで、ピットストップ戦略はさまざま。レースは300km、500kmそして1000kmと耐久レースの側面も持っており、いつピットに入ってタイヤ交換や給油、ドライバーチェンジを行うかも重要なポイント。300km/h近い速度域の中でも常に緻密な頭脳戦が行われています。約2時間のレースで一瞬たりとも目が離せないのは、数あるレースの中でもSUPER GTぐらいではないでしょうか。

全日本ラリー選手権:モータースポーツの新たな可能性の追求

どんなラリー?

全日本ラリー選手権は国内最高峰のラリー競技で、開催地は群馬県・嬬恋、佐賀県・唐津、北海道洞・爺など、景観が素晴らしい場所ばかり。峠道、雪道、川渡りなど、バリエーション豊かなステージがエントラントを待ち受けています。WRC(世界ラリー選手権)を経験した新井敏弘選手を筆頭に、世界レベルの実力派ドライバーが参加することで、一気にメジャー化してきました。

どんなマシンが走っている?

全日本ラリー選手権はJN1~6の6つのカテゴリーにわかれています。市販車ベースで改造範囲は狭く、セッティングとドライバーのコースへの高い適応力がポイントになります。TGRは、「もっといいクルマづくり」をスローガンに、トヨタが発足した「凄腕技能養成部」の社員をメカニック・エンジニアとしてチームを結成。3年目となる2017年シーズンは、開発中のスポーツCVT(無段変速機)を搭載した「TGR Vitz CVT」でJN3クラスに参戦しています。細かなトラブルには遭遇するものの、2度のクラス2位表彰台を飾るなど、実績を残しています。トヨタ車はほかに、86も数多く参加しています。

全日本ラリー選手権の見どころは?

上でも触れたように普段、街中を走っているクルマが日本のナンバープレートを装着してラリーに参加しているので、WRC以上に身近に感じられるカテゴリーです。自分と同じクルマが活躍していると嬉しいものですよね。ベース車両の高性能化もあって、上位クラスの走りはかなりアグレッシブ。実際に観戦すると、地域を巻き込んだ一大イベントとして、その地域の文化にも触れられます。ラリー後にYoutubeで配信される公式ダイジェスト映像は必見ですよ!

SUPER FORMULA:国内最速のモータースポーツ

どんなレース?

日本国内におけるフォーミュラーレースの最高峰シリーズ。その前身は「フォーミュラー・ニッポン」、通称「日本一早い男選手権」として人気を集めていました。このカテゴリーの価値は、現在でも変わらず。SUPER GTで活躍するドライバーも数多く参戦しています。マシンは、同一シャシーでタイヤもワンメイク。違いはエンジン(トヨタ・ホンダ)のみなので、よりドライバー個々のスキル、マシンセットアップ能力などの総合力が必要されるレースとなっています。

どんなマシンが走っている?

参戦しているマシンはすべてイタリア・ダラーラ社が開発した「SF14」シャシーにトヨタもしくはホンダ製の2.0L直列4気筒ターボエンジンを搭載しています。マシン重量はドライバー込で660kgと普通乗用車の半分に。タイヤは横浜ゴムのワンメイクです。

このマシンには「オーバーテイクシステム」があり、このシステムをONにすると20秒間だけより多くの燃料がエンジンに流れ、瞬間的に約100馬力アップ。追い越しを容易しています。ただし1レースに5回しか使用できないため、使いどころを見極めなければなりません。

TGRは、6チーム11台をサポートしていて、写真は「VANTELIN KOWA TOM’S SF14」36号車を駆るアンドレ・ロッテラー選手。チームメイトは、WECでTS050の8号車に乗る中嶋一貴選手です。

SUPER FORMULAの見どころは?

それはズバリ、上でも説明した「オーバーテイクシステム」を使う瞬間です。オーバーテイクシステムをONにするとドライバーの真上にあるLEDランプが点滅するので、「ここで抜きにかかるんだな」とわかります。もちろん、相手もそうはさせまいと使ってくるので、競り合いはより激しいものに。そのつばぜり合いこそ、SUPER FORMULA最大の見どころでしょう。

全日本F3選手権/FIA-F4選手権:夢見る若きエースの登竜門

どんなレース?

全日本F3選手権

F3(フォーミュラー3)は、世界各国地域で開催されているフォーミュラーレース。レーシングドライバーにとっては、SUPER FORMULAやF1といったより上位のカテゴリーを目指すために避けては通れないカテゴリーです。そのため、若手ドライバーが国外のレースに出る前にF3で腕を磨いていくのが通例になっています。

TGRは、そんなドライバーを「トヨタ・ヤングドライバーズ・プログラム」として支援しており、WECで活躍している小林可夢偉選手や中嶋一貴選手もサポートしていました。シーズンは9大会で、2レースもしくは3レース制で行われ、シーズン上位のドライバーは、11月にマカオのギア・サーキットで行われる「F3世界一決定戦」に出場することができます。

FIA-F4選手権

FIA-F4は2014年に制定された新しいカテゴリーです。前述のF3への前段階として、モータースポーツ経験が浅いドライバーやアマチュアドライバーのスキルアップを図るレースとして位置づけられています。そのため年齢層は低く、小学生高学年~中学生のドライバーも珍しくありません。日本ではSUPER GTのサポートレースとして開催されており、若手ドライバーにとっては有名チームの目に留まるまたとない機会となっています。

どんなマシンが走っている?

全日本F3選手権

マシンは全世界共通の規定に則って製作されています。シャシーはダラーラ社製が主流。エンジンは2.0L直列4気筒と定められており、トヨタ(トムス)は、ノアやヴォクシーに搭載されているエンジンをベースに開発したF3専用エンジンを搭載しています。TGRからの参戦ドライバーはSUPER GT GT300クラスにもRC F GT3で参戦している坪井翔選手と宮田莉朋(りとも)選手です。

FIA-F4選手権

本格的なレースを始めるドライバーのために、約500万円以下で購入と維持ができるようなマシンを規定しています。日本ではトヨタが開発を支援。さまざまなレーシングカー製作の実績を持つ童夢のシャシーに、トムス製の専用エンジンを搭載しています。このエンジンは、オーバーホールなしで年間1万kmの走行が可能なFIAの規定を満たしているユニットです。

レースの見どころは?

10代の若手ドライバーが参加するレースだけに荒削りながらもアグレッシブなのが特徴的。その中でときおり大人顔負けのテクニックが見られます。年間を通じて観戦すると、ドライバーの成長を感じることができるでしょう。

TOYOTA GAZOO Racingが参戦するレースカテゴリーまとめ、今回は国内レース/ラリーを紹介しました。各カテゴリーの2017年シーズンは、まだまだ中盤戦です。白熱したレース自体を楽しむことはもちろん、F3やF4といった入門カテゴリーから世界へ羽ばたいていくドライバーが誕生する過程を見ることも、またレースの楽しみのひとつではないでしょうか。

(クリハラジュン+ノオト)

[ガズー編集部]