コンセプトカー「AKXY」が示す近未来のクルマの姿

「走るコンセプトカー」として、旭化成が5月にEVメーカー「GLM」と共同開発し発表した「AKXY(アクシー)」。「Asahi Kasei ×(かける) You(お客様)」という想いを込めて名付けられたクルマは、まさに旭化成の自動車関連素材や部品、システムを盛り込み、国内外の自動車メーカーや部品メーカーに総合的にアピールする仕様となっている。

もちろん、そんな「未来が見えるクルマ」はデザインも斬新だ。キャビンは球をイメージした有機的な形状で、ショルダーラインより下は、水平・垂直・斜め45度の線を幾何学的に組み合わせた無機質な印象を強調したデザインに。車両のフロント部分・リア部分を絞るような形状にすることで、車両上部と下部の相反する印象を強調しながら、調和のとれた近未来的なデザインに仕上げている。

前回の「開発の経緯と狙い 」に続き、今回はGLMのカーデザイナー、石丸竜平(いしまるりゅうへい)さんに「AKXY」のデザインについて伺った。

「球」と「幾何学」が組み合わされた近未来の姿

---コンセプトカー「AKXY」は、どんなことを考えながらデザインしたのでしょうか?

「旭化成様の描く未来を象徴するコンセプトカー」という位置付けでデザインさせていただき、「いのちとくらしに貢献する」という大きなコンセプトを、「環境との共生」というキーワードとともに表現することに努めました。つまり、自動車と人、それを取り巻く環境を旭化成様のビジョンを軸に表現しています。

---「球体に包み込まれる」というデザインコンセプトにたどり着いたきっかけは何ですか?

あくまでも、「いのちとくらしに貢献する」という大きなテーマを構成する要素の一つです。それを構成するコンセプトのひとつ"快適"をきっかけに、「快適を訴えるのに最適な形は何か」と考え、有機的な3次元形状のアイコンとして「球」を選びました。人や動物が立方体の箱の中で寝そべるのと、球の中で寝そべるのを考えたときに、私の中での快適は球の方であったためです。

--- 具体的に、どのような形で球体のイメージを取り込まれていらっしゃいますか?

外装のグリーンハウス(窓ガラスを含めた屋根全体)部分が、丸みを帯びているのを見ていただければ幸いです。内装は、決して球のみをイメージしたのではなく、人が触れる部分は体の曲線や曲面を意識して面を張りました。つまり有機的な「線」と「面」を意識したということ。その結果、シートのデザインがやわらかな卵型を採用しました。

自動車っぽすぎない、モダンなプロダクトデザインのような幾何学的な線のメリハリがもたらした結果、従来のクルマとは一線を画す雰囲気が醸し出せていると考えています。

---ボディ下部は幾何学的な印象を配し、フロント・リアの絞ったデザインとの融合で近未来的な印象に仕上げたとのことですが、なぜ相反する要素を組み込んだのでしょうか?

人がこれから生み出していくプロダクトやシステムの未来を見据えて、その未来的な表現方法として直線を用いた「幾何学的なマシン」を作ることがデザインの目標でした。その中で、旭化成様が考える環境との共生をヒントに、マシンやロボットの様なデザインの中にオーガニックな要素を、と考え、球というインスピレーションが生まれました。

また「結束」「融合」を表すために、ショルダーラインに配置したまっすぐなキャラクターラインをボディ全周に走らせ、リングに包み込まれるようなデザインにしました。そのリングを強調するために(リングがピークとなるように)フロント・リアの形状を絞っています。

---今回のAKXYのデザインに「環境への配慮」といった点も反映しているのでしょうか?

フロントフードに配置した大きな二つの開口は「肺」をモチーフにしています。これは、未来的なマシンが自然の中を走りながら空気や光を取り入れ呼吸しているような様を表現できればという、いわばコンセプチュアルな試みです。実際にインテリア側にもエクステリアから続くような造形の開口部があります。デザイン面では、実際に環境に配慮しているというよりも、そのコンセプトを形で表現することに努めていますね。

一台のクルマで未来を表現する。最先端の技術や素材を活かしながら「その先」をイメージするようなデザインを施し、世の中に提示する。「AKXY」に少し先の未来を見たような気がする。

(別役ちひろ+ノオト)

[ガズー編集部]

取材協力