事故多発交差点ワースト10を発表! 全国の事故“常連”交差点はどこ?

日本損害保険協会は毎年「全国交通事故多発交差点マップ」を発表しています。先日、平成28年のマップとともに、過去8年間のデータを分析した資料が一般公開されました。全国で事故件数がもっとも多かった交差点はどこなのか。昨年のワースト10や常連となっている交差点とともに、事故の傾向と対策についてお伺いしました。
お話いただいたのは、一般社団法人 日本損害保険協会 業務企画部 防災・安全グループの宇佐美真帆さんです。

一般社団法人 日本損害保険協会 業務企画部 防災・安全グループ 宇佐美真帆さん
一般社団法人 日本損害保険協会 業務企画部 防災・安全グループ 宇佐美真帆さん

――今回、過去8年間のデータをまとめた報告書を作成されたそうですね
はい。毎年「事故多発交差点マップ」を更新していますが、ある程度データが蓄積されましたので、一旦精査・分析をしてみました。その結果から得られた知見をまとめて、ホームページ上に報告書と啓発ツールを公開しています。

交差点事故防止 リーフレット(出典:一般社団法人 日本損害保険協会)
交差点事故防止 リーフレット(出典:一般社団法人 日本損害保険協会)

――8年間の推移や傾向について教えてください
全体として交通事故件数は減っていますが、高齢者の事故割合は増えています。昨年度の交通事故死者数でみると、65歳以上の割合が約55%となっており、毎年少しずつ増加しています。 人口動態自体が高齢化していますし、年齢が上がると認知・判断能力が低下してしまう、といった理由もありますが、今後も高齢者の事故が増えていくと予想されます。

高齢者の交通事故注意喚起チラシ「事故を知って!交通事故防止!」より抜粋(出典:一般社団法人 日本損害保険協会)
高齢者の交通事故注意喚起チラシ「事故を知って!交通事故防止!」より抜粋(出典:一般社団法人 日本損害保険協会)

――事故が多発している交差点には、どのような特徴があるのでしょうか?
交差点自体が大きくて交通量が多く、混雑しているという共通点があります。一方で、交通事故の件数が多い=死亡事故が多い、というわけではありません。交通量が多い交差点では、それほどスピードを出しているわけではないので、必ずしも大きな事故につながるとは限らないのです。
立地面でみると、近くにショッピングセンターがあるような商業地域で渋滞になりやすい傾向があり、上位に入る確率が高くなっています。

平成28年の全国事故多発交差点ワースト10(データ提供:一般社団法人 日本損害保険協会)
平成28年の全国事故多発交差点ワースト10(データ提供:一般社団法人 日本損害保険協会)

――首都圏が多いのかなと思いましたが、意外と全国に散らばっていますね。報告書の中にある「常連交差点」というのは?
平成19~26年の8年間で4回以上、都道府県別ワースト5に入った交差点が89か所ありました。この中の6割が、人口が密集している商業地域です。また4車線以上と規模が大きい交差点である、ということも共通しています。
事故が起きると、警察が予算をかけて補助信号を設置したり、車線のラインをはっきりさせたりといった対策をします。そういう状況にありながらワースト5に入り続ける“常連”になってしまうというのは、そうとう危険であると言えます。ドライバーの方にもぜひ注意していただきたいですね。

8年連続で都道府県別ワースト5に入った事故多発「常連」交差点(データ提供:一般社団法人 日本損害保険協会)
8年連続で都道府県別ワースト5に入った事故多発「常連」交差点(データ提供:一般社団法人 日本損害保険協会)

――ドライバー側から見た事故の形態についてはどうでしょうか?
事故多発交差点で発生する人身事故の割合は、追突が41%、右折時が25%、左折時が11%となっています。具体的には、赤信号を確認せずに追突してしまうケースや、交通量が多く右折、左折で巻きこんでしまうケースが多いようです。これらの分析結果をもとに、損保協会では「交差点通行時の安全度チェックリスト」を作成しました。
ホームページ上でチェックすることができ、診断結果がレーダーチャートで表示されるようになっています。
http://www.sonpo.or.jp/efforts/reduction/kousaten/check/

交差点事故防止 リーフレット(出典:一般社団法人 日本損害保険協会)
交差点事故防止 リーフレット(出典:一般社団法人 日本損害保険協会)

――事故を減らすために、どのような対策がなされているのでしょうか?
損保協会の11の各地方支部では、事故多発交差点で呼びかけの活動をしています。また各県警と連携して交通安全運動期間中にチラシを配布したり、反射材のシールを用意して街頭でキャンペーンを行ったりしています。
警察では信号機等の物理的な対策と、高齢者の事故を減らすための啓発活動に力を入れているところが多いようです。
統計をとると、夕方~薄暮の時間に事故が多く発生しています。そこで歩行者に反射材を配布したり、ドライバーに対して「ライトを早めに点灯しましょう」と呼びかけたりしています。
我々の取り組みも、なるべく各県警と連携して取り組むことで相乗効果を狙っています。事故を減らすためには、信号機などのハード面とともに、人を介したソフト面の対策も必要です。

高齢者の交通事故注意喚起チラシ(出典:一般社団法人 日本損害保険協会)
高齢者の交通事故注意喚起チラシ(出典:一般社団法人 日本損害保険協会)

――今後の予定は? 
蓄積されたデータをさらに精査していくと、事故の類型が見えてくるのではないかと思います。たとえば合流地点での事故や、4車線×2車線での事故など、道路の形状ごとに細かい分析をすることも可能でしょう。また、毎年上位になる交差点に対しては、「ハード面以外の人間工学的な見地から再検討する必要があるのでは?」といった、従来とは違うアプローチも考えています。

仮にドライバーが「この交差点は事故が多い」という情報を前もって知っていれば、より注意して運転したり、避けて通ったりといった対策をとることができます。

日本損害保険協会のホームページでは、都道府県ごとに事故多発交差点のワースト5を確認することができます。もしもの事故を防ぐためにも、普段よく運転する地域をチェックしておきましょう。
http://www.sonpo.or.jp/efforts/reduction/kousaten/kousatenmap28/

<取材協力>
一般社団法人 日本損害保険協会
http://www.sonpo.or.jp/

(取材・文・写真:村中貴士 編集:ミノシマタカコ+ノオト)