第1回「自動運転EXPO」開催! 自動運転普及の鍵はセキュリティ対策にある?

自動車関連企業に向けた技術や製品、サービスの展示会「オートモーティブワールド2018」が、1月17日(水)~19日(金)、東京ビッグサイトで開催されました。

今回は、「カーエレクトロニクス技術展」「クルマの軽量化技術展」など、6つの展示会からなるオートモーティブワールドの中から、初めて開催された「自動運転EXPO」に注目。最新の自動運転事情を見てきました。

AIによる映像処理システム、自動運転の実験用モデルカー、周囲360度を撮影可能なカメラなど、自動運転に関する技術・製品が展示されている。
AIによる映像処理システム、自動運転の実験用モデルカー、周囲360度を撮影可能なカメラなど、自動運転に関する技術・製品が展示されている。

ご存知のように、現在は各自動車メーカーが自動運転技術に取り組み、ACC(アダプティブ・クルーズコントロール)や緊急自動ブレーキを始め、「運転支援システム」として一定条件下での操舵や加減速を、クルマの判断に委ねる機能を実現しています。

米テスラ社では、高速道路のみですが、同一レーンでの自動運転を米国内で一般向けに実用化。法整備が整えば、システムアップデートで一般道での自動運転も可能になるレベルまで、技術は進歩しています。そんな中で開催された「自動運転EXPO」では、私たちユーザーがあまり意識していなかった部分の技術に関する展示が注目されました。

突然クルマが動き出す! セキュリティシステムで安全運転を守れ

2015年に米クライスラーは、ハッキング対策として140万台のリコールを発表しました。近年、カーナビやスマートフォンと連動したサービスなど、何かしらの形でネットワークに接続されるクルマが増えています。それにともなって、このネットワークの仕組みを悪用して不正プログラムを流し込んだり強制的に何らかの操作をしたりといった“ハッキング”が問題に。

海外の大学や研究機関の公開実験では、クルマのコンピューターに進入(ハッキング)し、ワイパーや非常ブレーキシステムなどの遠隔操作に成功しています。「自動運転EXPO」では、そんな「セキュリティ」に関するサービスの紹介が目立ちました。

「BlackBerry QNX」は、スマートフォンでお馴染みのBlackBerry社の子会社。同社が提供する「QNX OS」は、世界6000万台のクルマに搭載されている自動車向けのOSで、その最新版プロトタイプを、ジャガーXJに搭載して展示していました。

資料の中で、製造段階からの強固なセキュリティ確保のため、信頼性のあるコンポーネントを採用すること、万一の際にネットワークから切り離れされた「セーフシステム」を導入することや、企業間の迅速な情報交換・共有などが必要だと訴えられています。

センターコンソールパネルのモニターとメータークラスターは、物理的にはひとつのコンピューターで動作しているが、事実上はBlackBerry QNXシステム内で構築された「2台のコンピューター」でそれぞれ動作している。そのため、センターコンソールパネルのシステムに不具合が発生しても、運転に必要な情報はメーターに表示される
センターコンソールパネルのモニターとメータークラスターは、物理的にはひとつのコンピューターで動作しているが、事実上はBlackBerry QNXシステム内で構築された「2台のコンピューター」でそれぞれ動作している。そのため、センターコンソールパネルのシステムに不具合が発生しても、運転に必要な情報はメーターに表示される

コンパクトでカワイイ無人運転車「Milee(マイリー)」

自動運転を構成するシステムはコンパクトになった。米NVIDIA(エヌビディア)社が提供するノートパソコンサイズのスーパーコンピューター「DRIVE PX2」をベースとして、センサーとカメラの組み合わせで自動運転・運転支援システムを実現する
自動運転を構成するシステムはコンパクトになった。米NVIDIA(エヌビディア)社が提供するノートパソコンサイズのスーパーコンピューター「DRIVE PX2」をベースとして、センサーとカメラの組み合わせで自動運転・運転支援システムを実現する

愛知県のアイサンテクノロジー株式会社は、電動ゴルフカートをベースにした自動運転車「Milee(マイリー)」を発表しました。この“マイリー”は、市街地を想定した短距離のライドシェアや物流での利用を目的に開発されたもの。「DRIVE PX2」と同社の自動運転ソフトウェア「Autoware」や高精度3次元地図と各種センサーで、自動運転システムが構成されています。

同社は、同郷の岡谷鋼機株式会社、名古屋大学発のベンチャー企業・株式会社ティアフォーとともに、次世代端末交通システム「ワンマイルモビリティ」を提案しています。高齢過疎地域や人々の往来の激しい市街地・住宅地での低速自動運転や、ライドシェアをコンセプトにしています。

複合機やカメラの画像処理技術を自動運転に応用した実験車

ベース車両はBMW i3。車体に装着されている四角い黒い物体がリコー製のステレオカメラだ
ベース車両はBMW i3。車体に装着されている四角い黒い物体がリコー製のステレオカメラだ

愛知県で自動車技術開発支援を行うAZAPA株式会社と株式会社リコーは、BMW i3をベースにした自動運転のプロトタイプを展示していました。この実験車は、前後左右に計4つのステレオカメラ、ボンネットに遠方用のステレオカメラ、さらにフロントバンパー左右に測距センサーを搭載しています。

i3のボンネットに装着されたステレオカメラの映像
i3のボンネットに装着されたステレオカメラの映像

「マシンビジョン技術」と名付けられたこのシステムは、ステレオカメラによる高精度な3D画像処理と、画像上の特徴点からの自車位置をリアルタイムに推定。白線や路肩を自己認識することで、法的・物理的に走行可能な箇所を割り出します。昨年10月から秋田県仙北市にて、実証実験を開始しているそうです。

第1回「自動運転EXPO」では、多くのブースで「セキュリティ」という単語、または同義の言葉を見かけました。自動運転は私たちにさまざまなメリットをもたらしてくれる技術ですが、一方でハッキングを始めとした新たなリスクが伴うことも、知っておかなくてはいけません。もちろん、企業は対策を講じます。ですが、使用するユーザーが「システムは絶対ではない」、「自動運転でも安全運転」を常に意識していかなければならないのです。

(取材・文・写真:クリハラジュン、編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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