上手につきあって快適路面。 凍結防止剤の正体に迫る

冬の雪道の安全を確保するため、適切な除雪作業とともに、路面にまかれるのが凍結防止剤です。路面に散布される様子は薬っぽくも見え、人や車体に悪い影響はないのか、筆者は不安になることがあります。そもそも、凍結防止剤とはどんなものなのでしょうか。札幌市建設局土木部雪対策室計画課 課長 茂木秀則さんに伺いました。

凍結防止剤の正体は塩!?

――札幌市で使用している凍結防止剤の成分はズバリ何なのでしょう?

「札幌市で使っているものの主基材としては塩化ナトリウムを使用しています。要するに、塩ですね。路面上の圧雪や氷板に凝固点降下作用を発生させ、氷点下でも凍結しないようにさせているんです」

――凝固点降下とは何ですか?

「水は0℃になると、分子の運動が止まってお互いがくっつくため凍ります。塩化ナトリウム=塩をまくことで、水の分子の間に異物が入り、くっつくのを邪魔するため、0℃になっても凍りにくくなるのです。これを凝固点降下といい、この作用を利用して、氷点下でも路面が凍結しないようにするわけです。
また塩化ナトリウム以外のものを利用することもあります。初冬やブラックアイスバーンの時は、凍結防止剤を塩化カルシウム水溶液で湿らせてから散布しています。こうすることで、散布した凍結防止剤が路面から飛散してしまうのを防ぎ、路面への付着性を高めます。塩化カルシウムは豆腐にも入っている凝固剤の一種です」

画像提供:札幌市建設局土木部雪対策室計画課
画像提供:札幌市建設局土木部雪対策室計画課

――散布するタイミングは決まっていますか?

「凍結防止剤散布作業の出動は、日常的なパトロールで路面状況を把握した上で、その後の気温変化による路面状況への影響も考えて判断し、決定しています。
主な散布時間としては、基本的に朝方(3時~6時)と夕方(15時~18時)に散布作業を行います。これは、交通量が多い通勤・帰宅ラッシュ、登下校時に効果が発揮できるようにするためです。

画像提供:札幌市建設局土木部雪対策室計画課
画像提供:札幌市建設局土木部雪対策室計画課

特に、夕方から夜間にかけては凍結防止剤を散布することにより、路面状況はかなり良くなります。
これら以外にも、気象状況によって突発的に発生するつるつる路面への対応として、緊急散布作業をすることもありますし、除雪作業と連携して凍結防止剤を散布することもあります」

気になるクルマへのダメージ

――塩ということは、クルマへのダメージがあるのではありませんか?

「凍結防止剤は散布量が多いので、クルマや橋梁などの道路建造物への影響は考えられます。そこで、札幌市で使用する凍結防止剤は、塩化ナトリウムに防さび剤を添加したものにしています。防さび剤を添加することによって、実は、水道水よりさびにくい材料となっているんですよ。ただ、そうはいっても車両の部品の継ぎ目などに、長いこと凍結防止剤が残留するとさびが発生する可能性も否定できません。できれば、冬の間も定期的な洗車をすることをおすすめします」

――雪解け後の路面の後始末はされるのですか?

「凍結防止剤散布による春先の作業はありません。ちなみに、砂箱にも配置している滑り止め材も凍結防止剤と併用しております。
これは雪がなくなると路面上に残留するので、春先に路面清掃は行っています」

滑り止め材(7号砕石)  画像提供:札幌市建設局土木部雪対策室計画課
滑り止め材(7号砕石)  画像提供:札幌市建設局土木部雪対策室計画課

塩に凝固剤……と食品にも使用されるものが基材として使われている凍結防止剤は、人には影響はないようです。ただし、やはり車体に長いこと付着したままでいると影響が出てくる場合も。こまめな洗車、点検で長い冬を乗り切りたいものです。

<取材協力>
札幌市建設局土木部雪対策室計画課

(取材・文:わたなべひろみ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]