次世代タクシー「JPN TAXI」の評判は? タクシー会社に聞いてみた

2017年10月にトヨタ自動車が満を持して発売を開始した新世代タクシー向け乗用車「JPN TAXI(ジャパンタクシー)」。2020年・東京オリンピックに向けて、導入された車両です。今までは、教習車としても馴染み深い「クラウン・コンフォート」がタクシーのスタンダードとして活躍しており、トヨタのタクシー向け乗用車としてはおよそ20年ぶりの新型車両。タクシー会社からの意見を反映した1台としても、注目されています。

発売から5ヶ月、実際に導入・運行しているタクシー会社は「JPN TAXI」について、どんな印象を持っているのでしょうか。普段はあまり聞けない事業者側の声を聞いてみました。

取材に協力していただいたのは、今年で創業90年を迎える都内最大手の「日本交通株式会社」。丸い行灯の「桜とNマーク」でお馴染みですね。対応してくださったのは広報担当の野村貴史さんです。

ドライバーからもお客様からも好評。マイナス面は「慣れ」にまつわる部分だけ

――日本交通株式会社(以下、日本交通)で運行しているJPN TAXIは何台ありますか?

日本交通では、全体で約4,500台のタクシーが運行しています。そのうちの約300台が「JPN TAXI」に切り替わっています。生産ペースにもよりますが、現在は月100台のペースで「JPN TAXI」を納車、自社工場でタクシー専用装備(タクシーメーター、ドライブレコーダーなど)を取り付けて、入れ替えています。2020年・東京オリンピックまでには、「日本交通の直営営業所」の車両はすべてJPN TAXIに切り替える予定です。

現在は「黒タク」という社内基準をクリアした優良乗務員のみがJPN TAXIに乗務しているが、今後は一般乗務員のタクシーもJPN TAXIに切り替えていくとのこと
現在は「黒タク」という社内基準をクリアした優良乗務員のみがJPN TAXIに乗務しているが、今後は一般乗務員のタクシーもJPN TAXIに切り替えていくとのこと

都内で他社を含めて約3万台のタクシーが運行していますが、東京都はそのうちの1万台をオリンピックまでにJPN TAXIに切り替える予定です。そのため、1万台については補助金が出ます。弊社も、その中で予定台数を確保できるように随時発注をしています。

――ちなみにタクシーは通常、何年ぐらい使うのでしょうか?

日本交通では「約6年」サイクルで車両入れ替えをしています。タクシーは1日に200~300km以上、年間で約10万kmもの距離を走行します。耐久性・安全性から総合的に判断し、5~6年を一つの目安としています。また、タクシーのエネルギーであるLPGガスを充填するタンクが、「高圧ガス保安法」に基づいて6年毎に検査しなければならないという面もあります。必ずしも検査のタイミングで車両代替するわけではなく、タンクを交換して使用する場合もあります。

――JPN TAXIで実際運行してみて、ドライバーやお客様からの反響は?

ドライバーからは、「ハイブリッドは加速がスムーズでいい」「視界が広くて運転しやすい」「LEDヘッドランプでライトが明るい」といった声が上がっています。お客様からは、「とにかく広くて快適」「着物でも乗り降りがしやすい」「車内に高さがあるので背が高くてもゆったり乗れる」「シートヒーターが装備されていて真冬でも快適」といった、好意的なご意見をいただいています。

車椅子のまま乗れる「高さ」が特徴。備え付けのモニターは、トヨタがつい最近出資を発表した「JpanTaxi株式会社」のもの。デジタルサイネージとして動画広告の配信やスマートフォンでのキャッシュレス精算も可能。
車椅子のまま乗れる「高さ」が特徴。備え付けのモニターは、トヨタがつい最近出資を発表した「JpanTaxi株式会社」のもの。デジタルサイネージとして動画広告の配信やスマートフォンでのキャッシュレス精算も可能。

――反対にネガティブな意見はありますか?

ネガティブな意見は、ほとんどが“慣れ”に起因するものです。ドライバーからは、「ハザードランプスイッチの位置が慣れない」とよく言われます。クラウン・コンフォートではウインカーレバーの側面にあったスイッチが、JPN TAXIではステアリングになっているんです。

ステアリングの右手側にハザードランプのスイッチがつく。エアコンのスイッチが、インパネ右手側がついていることにも注目
ステアリングの右手側にハザードランプのスイッチがつく。エアコンのスイッチが、インパネ右手側がついていることにも注目

また、今までは運転席にあるレバーでドアの開け閉めを行なっていたのが、電動スライドドアになって、開閉スピードがややゆっくりで違和感があるという声も聞かれますね。

お客様からはまだまだ「タクシー=セダン」のイメージが強いようで、タクシーだと思われないことも……。高級感のある外観から「手を上げにくい」というご意見もいただきましたが、料金に違いはありません。自分専用のプロドライバーとして気軽にご利用していただきたいですね。

タクシーに乗るときはJPN TAXIを狙ってみよう!

2020年に向けてどんどん増えていくJPN TAXI。タクシーに乗るときは、積極的に狙ってみたいですね。まだまだ寒い日々が続くのでJPN TAXIを見かけたら手を上げて、暖かいリアシートでゆったりと移動してみては?

(取材・文・写真:クリハラジュン 編集:木谷宗義+ノオト 取材協力:日本交通株式会社)

[ガズー編集部]