人力の自動運転!? 三和交通のユニークな新サービス「黒子のタクシー」とは?

車内での会話は原則なし。ドライバーと乗客のやり取りは筆談のみで行われ、歌舞伎の舞台で見かけるような「黒子」が、乗車から降車までをもてなしてくれるサービス「黒子のタクシー」の光景が何やらユニークだ。

乗客は黒子の指定料金として310円を支払えば、利用できる
乗客は黒子の指定料金として310円を支払えば、利用できる

2018年2月20日(土)から開始されたこのサービスを企画したのは、大手タクシー会社の三和交通。ドライバーと会話を弾ませながら目的地まで向かうのもタクシーならではの光景だが、いったいなぜあえて“真逆”とも思えるサービスを考案したのだろうか? その背景を、同社の広報担当者・眞壁広貴さんに伺った。

黒子はお客さんから見えない=自動運転という発想!?

黒子といえば本来、日本の伝統芸能における影の立役者でもある。黒装束をまとい、舞台上では役者などを引き立てるためにあくせく働いているイメージもあるが、今回のサービスは意外にも「自動運転をきっかけに考案した」と眞壁さんは話す。

「昨今の流れを受けて『何とか弊社でも自動運転タクシーを実現できないか』と検討していたところ、弊社の代表取締役社長・吉川永一から『黒子はどうだろう?』というアイデアが出てきたんです。歌舞伎の世界で活躍する黒子は、見ているお客さんにとっては“いない”存在。黒子が運転すれば『運転者はいない設定になるよね?』という話から、実現に至りました。また、ドライバーとの会話を必要としていないお客さんの声もあったため、話さないタクシーを提供しようという狙いもあります」(眞壁さん)

通りがかりの人たちも思わず目を見張ってしまいそうな黒子に扮したドライバー
通りがかりの人たちも思わず目を見張ってしまいそうな黒子に扮したドライバー

「黒子のタクシー」のドライバーは、原則的に会話をしない。安全のため、乗車中は顔の布を上げて運転するが、筆談やジェスチャーによるコミュニケーションのみとなるため、さながら“自動運転”の車両に乗っているような感覚を味わえるというわけだ。

日本ならではの黒子で外国人旅行者にもアピール

ドライバーが黒装束というだけでも、見るからに珍しい「黒子のタクシー」。インスタ映えにもピッタリで、希望者すれば「ドライバーが記念撮影やSNSへのアップに応じてくれます」と眞壁さんは言う。しかし、2018年3月時点では利用者がゼロなのだそう。今後は「外国人旅行者向けにもアピールしていきたい」と話す。

「日本人にはおなじみの黒子ですが、日本独自の文化に関心のある海外の方々にも広く訴求できればと考えています。現時点では、空港から各地へ移動する定額制のタクシーサービスに黒子を導入しようと検討していますが、タクシーが単なる移動手段ではなく、日常とは一風変わった新しい体験ができるものとして捉えていただけたらうれしいです」(眞壁さん)

外国人旅行者にはGoogle翻訳などを利用して対応する
外国人旅行者にはGoogle翻訳などを利用して対応する

また、同社では「黒子のタクシー」のほかにも、さまざまなユニークなサービスを展開している。例えば、ドライバーが名所を巡りながらカメラの撮影テクを指南してくれる「カメラバカドライバーと行くツアー」もそのひとつ。はたから見ると“攻めている“ような企画がいくつもある。

春先には「お花見タクシー」やエイプリルフール企画、夏にはかれこれ4年目を迎える「心霊スポット巡礼ツアー」なども予定しているというが、タクシーの常識をどのように打ち破ってくれるのか。今後も、同社の展開からは目が離せそうにない。

(取材・文:カネコシュウヘイ 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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