静岡県民だけが知る交通安全「横断バッグ」とは!?

静岡県では、小学校に入学すると、ランドセルのほかに「横断バッグ」という黄色いバッグを使う習慣があります。静岡以外の県ではほとんどないため、県外の人にこの話をすると、知らない人が多いことに驚くのだとか。実際にSNSなどを確認すると、横断バッグが静岡独自の文化だと知ってショックを受けた人も。この横断バッグ、一体どういったもので、いかにして静岡県民に浸透していったのでしょうか? 横断バッグを製造・販売している「横断バッグのミヤハラ.,」(株式会社宮原商店)の杉山さんに話を聞きました。

横断マークと目立つ黄色が特徴のバッグ

「横断中」の文字が入る「横断バッグ」は、正方形より少し縦長の手さげバッグだ
「横断中」の文字が入る「横断バッグ」は、正方形より少し縦長の手さげバッグだ

横断バッグは、「横断中」と書かれた横断標識と鮮やかで目立つ黄色が特徴です。このカラーリングには理由があり、「主な目的は通学時にクルマのドライバーに子どもの存在をアピールするため」とのこと。

一般的な手さげタイプ。裏には子どもに注意をうながす標語が
一般的な手さげタイプ。裏には子どもに注意をうながす標語が

バッグとしての機能もあなどれないもので、「ランドセルに入りきらない荷物(体操着など)を入れるバッグとして毎日、使っていただいていますね」と杉山さんは話します。

静岡県では、小学校に入学すると卒業するまでの6年間にわたってこのバッグを使うそうです。なお、素材はナイロンやレザーがあり、子どもが長く使うものなので耐久性も高く、撥水加工もされています。

1968年、「安全に通学して欲しい」という親心から生まれた

手さげタイプの内側。中の容量はかなりあり、結構な物が入りそう
手さげタイプの内側。中の容量はかなりあり、結構な物が入りそう

横断バッグが生まれたのは1968年。自動車の数が急速に増え、交通事故の増加が問題となった時代でした。交通公園の創設がこの時期に多いのも、その理由のひとつです。宮原商店の初代社長・宮原敏夫さんには当時、小学校に通う長男がおり、毎日大通りを行き来する息子を心配に思っていたそう。

当時は安全のため、目立つ黄色い小旗を持って横断歩道を渡る運動がありましたが、敏夫さんはこれでは不十分だと感じたようで「みんながいつも旗を持っていられるようにするには、どうしたらよいか?」と考えます。そこで、横断マークのついた黄色いバッグを開発。横断バッグの始まりとなりました。「息子を安全に登下校させたい」という親心から生まれたんですね。

現在では小学校や幼稚園・保育園のみならず大人向けのものも

交通安全意識の高まりとともに、横断バッグも県内で浸透していき、現在では小学校のみならず、幼稚園・保育園、塾などに通う子どもたちも使用しているそう。横断バッグは種類も豊富で、スタンダードな手さげタイプからショルダータイプ、ポシェットタイプまでさまざま。また、使用者の要望に応える形でどんどん新しい商品も出しているようで、現在は60種類以上もあるのだとか!

こちらはショルダータイプ。裏面にはもちろん標語が記されている
こちらはショルダータイプ。裏面にはもちろん標語が記されている

最近では、その収納能力の高さが注目され「男性・女性問わず大人の方にも、お仕事やプライベートで資料入れなどにお使いいただいています」と杉山さん。商品ライナップをみると、横断バッグのスマホケースやペットボトルホルダーなどもありました。安全のためにはもちろん、ファッションアイテムとして持ってみてもよさそうですね。

なお、横断バッグはミヤハラ.,の登録商品で、「横断バッグ」と名前のつく商品は同社だけしか製造していないそうです。製造はすべて国内で行っているため、海外製は類似品なのでご注意を。

(取材・文:斎藤雅道 写真:株式会社宮原商事 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road