自動ブレーキで事故は防げるか? 「タカタ財団 第9回助成研究報告会」レポート
6月5日、六本木の国際文化会館にて「公益財団法人タカタ財団 第9回助成研究報告会」が開催されました。タカタ財団は「交通事故犠牲者ゼロ」を目標として、交通安全および「人」に焦点を当てた調査、研究活動に対する助成を行っています。
今回は報告会の中から、自動運転関連の研究発表をピックアップして紹介します。
ACC搭載車と普通のクルマが混ざるとどうなる?
●自動運転システム制御車両が混在する交通流における運転者のストレス・精神的負担の計測/大阪大学大学院 工学研究科 准教授 飯田克弘氏
完全自動運転に向けて、ACCを搭載したクルマが増えてきました。ACCとはAdaptive Cruise Controlの略で、車間距離を一定に保ちつつ、定速走行(アクセル、ブレーキ操作)を自動で行ってくれる装置です。しかし「自動走行モード」を使用中であっても、ドライバーは周囲の状況を監視する必要があります。そこで、ACCと通常のクルマが混在する場合、ドライバーにどのような負担がかかるのか、ドライブシミュレータを用いた走行実験を行いました。
その結果、ACC車両の混雑比率が高い場合において、交通流の円滑性は向上し、ドライバーのストレスが軽減されることがわかりました。その一方、飯田准教授は「一般車両がACC車両に追従できず、事故リスクが増えるケース」「ドライバーが漫然運転に陥る可能性」などのマイナス面も指摘していました。
各メーカーは運転支援技術の開発を進めていますが、最新技術を搭載したクルマとそうでないクルマが混在して走った場合に、どのようなリスクが生じるのか……この点はもっと議論されるべきなのかもしれません。
自動から手動運転への切り替えたとき、脳の反応は?
●ウエアラブルNIRSを用いた自動・手動運転時のドライバーの脳活動データベースの構築と評価/日本大学 生産工学部 機械工学科 教授 綱島 均氏
自動運転から手動運転に切り替える際、ドライバーの状態によっては事故につながる可能性も指摘されています。そこで、ドライバーの脳活動をモニタリングし、運転に適した状態であるかどうか、シミュレータによる実験を行いました。
実験の結果、手動運転から自動運転に切り替わると、早い段階で脳の血流が低下することがわかりました。その後、自動運転から手動運転に戻した場合、脳の血流は低いままであまり回復しない傾向もみられました。
このことから、綱島教授は「自動から手動運転に切り替えても、脳活動が上昇しない傾向がある。自動運転中も脳活動レベル(覚醒度)を保持しておくような仕組みをつくる必要があるのではないか」と話していました。
自動ブレーキが発達したら事故はなくなる?
●ドライブレコーダによる実事故映像を用いた自転車・歩行者事故発生要因の解明/名古屋大学大学院 工学研究科 教授 水野幸治氏
ドライブレコーダの普及により、衝突事故の瞬間を捉えた映像を見る機会が増えました。そこでドライブレコーダのデータから、対自転車の出会い頭事故の映像を40件抽出。事故の要因を分類するとともに、自動ブレーキによって事故を回避する可能性を探りました。
クルマが何らかの物体と衝突する場合、それを回避するために操作できる余裕時間をTTC(Time-To-Collision)といいます。分析の結果、自動ブレーキのセンサー角度が360度、ブレーキの制動遅れが0秒という理想的な制御装置であったとしても、衝突を回避できないケースが2割(40件中8件)あることがわかりました。
- 衝突を回避することが難しいとされた事故の例。クルマの陰から自転車が飛び出すケース、赤信号なのに自転車が飛び出してくるケースなどが挙げられた
水野教授は、「自動ブレーキのセンサー角度を拡大することで、事故の発生を減らすことはできる。しかし、死角から自転車が現れたときのTTCが1.0秒未満の場合は、理想的な自動ブレーキであっても衝突を回避することは困難である」と結論づけていました。
完全自動運転に向けて、各自動車メーカーが運転支援システムの開発に力を入れています。その一方で、「ドライバーが油断をして、危険な運転をするようになる」といった問題点を指摘する声も挙がっているようです。
技術が発達しクルマの安全性が高まるのは喜ばしいことですが、むしろそれを使いこなす人間側の姿勢が問われているのではないか……そんなことを感じさせる報告会でした。
(取材・文・写真:村中貴士 編集:ミノシマタカコ+ノオト)
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[ガズー編集部]
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