クルマ社会の影を支える NASVA交通事故被害者援護制度
現代社会において必要不可欠な存在であるクルマ。しかし、便利で重要な交通手段であるのはもちろんですが、一歩間違うとたくさんの人の命や生活を奪うものともなってしまいます。クルマの事故の被害者や家族を支える交通事故被害者援護制度について、独立行政法人 自動車事故対策機構NASVA(ナスバ)のマネージャー吉田清敏さん、合羽井享さんにお話を聞きました。
クルマ社会の光と影
――NASVAでは主にどういった活動をされているのですか?
クルマは物流の面でも日常生活の足という面でも、非常に利便性があり、いまや欠かせないものです。これはクルマ社会の光でしょう。しかし、反面、自動車事故という影が伴います。NASVAは、自動車事故対策の専門機関として、自動車事故を「防ぐ」、自動車事故から「守る」、そして、自動車事故被害者を「支える」の3つの業務を行っています。交通事故被害者援護制度はこの中の「支える」の部分にあたります。
- NASVA交通事故被害者援護制度のご案内リーフレット
自動車事故発生! でも、その瞬間だけでは終わらないことも
――交通事故被害者援護制度はどういう方が対象となりますか
国内で自動車事故にあわれた方が対象となります。これはクルマの運転者も道路を歩いていて被害にあった歩行者も含まれます。自動車事故が起こった場合、被害者には自動車損害賠償責任保険・共済(いわゆる自賠責)からの保険金が支払われます。あるいは任意の自動車保険から保険金が支払われることもあるでしょう。しかし、脳損傷による重度の意識障害、あるいは介護の必要な後遺障害が残り、普通の生活に戻ることができない場合もあるわけです。
わたしたちは、自賠責保険料の運用益の一部を活用し、こういった方たちとその家族への支援を行っているのです。
――具体的にはどのような支援をされているのでしょう
重度意識障害の方に対しては、NASVAで運営する療護センター、または病院への委託という形で用意した病床に入院していただき、社会復帰を目指しつつ、治療と看護を受けていただいています。北海道ですと、社会医療法人 医仁会 中村記念病院に12床ベッドがあります。こちらでは入院期間は概ね3年以内をメドとして、意識の回復に向けて高度先進医療機器を用いた検査結果をもとに、治療と細やかな看護を行います。
在宅で介護を必要とされる被害者の方には、自動車損害賠償保障法施行令別表に基づいた介護料を支給。訪問介護などの在宅介護サービスや車椅子、介護用ベッドといった介護用品の購入や修理につかっていただいています。こちらは、介護保険の適用年齢の65歳に達した場合はどちらを受け取るか選んでいただくことになります。また、看護師や介護福祉士による相談を受けることができる窓口の設置や必要な情報をお伝えする訪問支援などの活動も行っています。
いずれにしましても、それまで何の問題もなく生活していた人が自動車事故にあって、突然、一生動けなくなる、障害を負う。そして、家族がずっと介護をしていかなければならない……そんな事態になったときにわたしたちが支えていく取り組みということです。
遺された家族を支える
――そのほかの取り組みはありますか
自動車事故によって亡くなった方や重度の後遺障害の残った方のお子さんへの無利子での生活資金の貸付も行っています。こちらは0歳から中学校卒業までのお子さんが対象となります。「友の会」という活動も行っており、こちらでは会報の発行やお子さん同士、保護者の皆さん同士の交流の場を設けています。
このような制度が存在することを、筆者も今回のお話を聞いて初めて知りました。交通事故にあわれた方には、これらの支援について、病院やリハビリ施設などを通じてお知らせしているとのことです。
万が一はあってはならないことですが、どんな人にとっても“あるかもしれない”ものです。このような制度を必要とする方を増やすことのないよう、安全運転に徹することを心がけていきたいものです。
(取材・文:わたなべひろみ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)
[ガズー編集部]
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