平和の使者がドイツと文京区の懸け橋に! アンぺルマン信号機とは
2018年4月13日、ベルリン市ミッテ区の代表団が東京都文京区を訪れました。彼らが携えてきたのは東西ドイツ統一の象徴であり平和の使者とも言われるアンぺルマン信号機。なぜ文京区に、この信号機が贈られたのでしょうか。文京区アカデミー推進部 観光・国際担当課長 鈴木大助さんに伺いました。
友好の証としての「アンぺルマン」
アンぺルマン信号機は、1961年に東ドイツで生まれました。この年は、ベルリンの壁が東西ドイツを隔てた年でもあります。それから20年以上経った1989年。ベルリンの壁が崩壊したあとは、旧東側のアンぺルマン信号機は西側の信号機と差し替えられ、そのままなくなってしまうかと思われました。しかし、その後に起きたアンぺルマン信号機復活運動により、2005年にベルリン市の公式信号機として採用されることに。ベルリン市内の信号機が、次々とアンぺルマンへと変わっていきました。今では、東西ドイツ統一のシンボルでありつつ、デザインのかわいらしさも人気となっています。
――どのようないきさつで、アンぺルマン信号機が贈られたのでしょうか
文京区は森鷗外の終焉の地として、2012年11月に森鷗外記念館をオープンさせています。ベルリン市ミッテ区にも古くから、鷗外記念館が存在し、鷗外を通じた交流がありました。また、文京区にゆかりのある、アンぺルマン日本大使の音楽家 高橋徹さんのご尽力もあり、アンぺルマン信号機3基を友好の証として贈呈したいとのお申し出がありました。
そして4月13日にミッテ区の副区長 エフライム・ゲーテさんをはじめとする代表団を迎え、アンぺルマン信号機の贈呈を受け、点灯式を行いました。
ドイツ国外の自治体にアンぺルマンが贈られるのは、初のことであり、今後も他の都市に贈ることはないとのことでしたので、非常に貴重なプレゼントをいただきました。
また、今回特別にアンペルマンレディをデザインしたパネルもいただきました。これが、とてもかわいいと好評なんです。
- 付け替え式のアンペルマンレディのパネル。以前はストップのタイプのみがあったそう
- パネルのケースもかわいい
――日本の道路で使用することはできるのですか?
残念ですが、道路交通法により、日本の公道で信号機として使うことはできないんです。でも、やはり道に置いてみたい。そこで、庁舎の敷地内の駐車場に通じる道への設置も検討したのですが、このアンぺルマンは機械構造的に青と赤がランダムに点灯するのです。そのため混乱をきたす恐れがあるということで、断念しました。
今のところは、区で行うイベントで公開するようにしています。先日は初お披露目ということで、文京スポーツセンターのリニューアル記念イベント「スポーツ×ドイツホストタウンフェスティバル2018」で、「アンぺルマンを探せ!」というスタンプラリーを開催しました。1,500人あまりの子どもたちが参加してくれましたよ。信号機と一緒に写真を撮る人も多く、大盛況でした。
この時、文京スポーツセンターの向かいにある教育の森自由広場には、ドイツに関するブースを設置。姉妹都市であるドイツ・カイザースラウテルン市の紹介をはじめ、日独協会やドイツ大使館、区内のドイツ料理店、ドイツ雑貨のお店などにも集まっていただきました。アンペルマングッズも販売もしたのですが、大好評でかなりの売れ行きだったようです。
- 現在、アンペルマングッズは文京区役所のある建物の1階にある文京区観光協会で購入が可能
――アンペルマン信号機以外にも、鷗外繋がりから新たな交流が生まれたと伺いました。
森鷗外の記念館は、ミッテ区と文京区以外にもう1ヶ所、鷗外生誕の地である島根県津和野町にもあります。かねてから、この3自治体での交流をしたいとの希望があり、アンぺルマン信号機が贈呈されたのを機に、文京区の鷗外記念館でこの3自治体による交流コンサートが開かれました。当日、会場では津和野町の特産品の販売も行われ、あたたかい交流が実現できました。今後もミッテ区、津和野町との交流は継続的に行っていく予定です。
子どもたちの心が世界に向かうきっかけに
――アンペルマンを通じてのベルリン市ミッテ区や姉妹都市カイザースラウテルン市との交流によって目指すものは何ですか?
アンペルマン信号機を「かわいい」と感じていただいたり、カイザースラウテルン市の魅力を知っていただいたりすることが、国際理解の一助になったらいいと思っています。まずは、知ることから始まって、ドイツに旅行してみたいとか、留学・ホームステイをしてみたいと思う方が増えてくれたらうれしいですね。たとえ足を運ぶことがなくても、他の国への理解を深めたり、興味を持ったりしていただくきっかけになってくれたらと思っています。そのために海外との関りは積極的に増やしていきたいです。
――子どもたちにとっても良いことですね。
未来を担う子どもたちにもどんどん、世界に目を向けていってほしいですね。
現在、継続的な取り組みとしては、先ほどもお話したアンペルマン日本大使の高橋さんより『アンペルマン 東ドイツ生まれの人気キャラクター』という本をご寄贈をいただきました。アンペルマン信号機の歴史を綴っており、区立小学校20校、区立中学校10校、図書館に順次、配置しています。
本やイベントでの交流体験を通して、広く世界を見ることのできる子どもたちが育つことを願っています。
- 書籍『アンペルマン 東ドイツ生まれの人気キャラクター』と鈴木さん。
一時は姿を消しかけたアンペルマン。平和の使者として、この日本でも自治体を結び、さまざまな人の心も結んでいるようです。アンペルマングッズは文京区観光協会で継続して販売しているとのこと。今後もイベントなどの機会にアンペルマンのキュートな姿を見ることができそうです。
(取材・写真・文:わたなべひろみ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)
[ガズー編集部]
取材協力
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