その呼び名に歴史あり!コンバーチブルにカブリオレ……、オープンカーの名称と意味
「屋根が開いているクルマ」、もしくは「屋根が開くクルマ」のことを日本では一般的に「オープンカー」と呼びます。しかし、そのオープンカーの車種名に注目してみると「ロードスター」や「カブリオレ」、「スパイダー」など、その呼称はさまざまです。そこで今回は、オープンカーにさまざまな呼び方があるワケを、歴史を交えてご紹介していきます。
そもそも最初はみんなオープンカーだった!?
現代では特別なクルマとして存在しているオープンカー。しかし、自動車の黎明期であり1900年ごろのクルマは、そのほとんどがオープンカーでした。
- ガソリン自動車の第1号とされる「ベンツ パテント モトールヴァーゲン(1886年)」のレプリカ
19世紀末に誕生した世界で初めてのガソリンエンジン自動車は、馬車に原動機を“載せただけ”ともいえるような形で、「走る、曲がる、止まる」といった基本性能を向上させていくのに手いっぱい。乗員の快適性にまで配慮する余裕は、ありませんでした。1908年に登場した「フォード モデルT」によって自動車の普及は大きく進みますが、クローズドボディ(屋根付き)のクルマは高価で、しばらくはオープンカーが一般的だったのです。その状況を変えたのが、1921年にアメリカで登場した「エセックス・コーチ」。
- エセックス コーチ(1923年式)
このクルマは、“屋根付き”のセダンにも関わらず安価で、クローズドボディを普及させる起爆剤となりました。1919年の時点では全体のおよそ1割だったクローズドボディの割合は、10年後の1929年にはなんと9割に! 以降、しばらくの間、俗に言うオープンカーはあまりアメリカでは見受けられなくなります。
私たちがイメージする“趣味のクルマ”としてのオープンカーの登場は、第2次世界大戦後。欧州に派遣され、現地の小型オープンスポーツに魅了されたアメリカ兵が祖国へ持ち帰ったことが、趣味性のあるオープンカーという市場を作り上げていったのです。
由来はそれぞれ!オープンカーの種類
オープンカーの成り立ちをふりかえってみたところで、ここからは代表的なオープンカーの種類と名前、その由来を見ていきましょう。
フェートン
元来、馬車のボディスタイルとして幅広く使用されていた「フェートン」という名称は、オープンボディが主流だった20世紀前半に「折り畳み式の幌を備えた2列シート、4人乗り、4ドアボディ」の車を指す言葉として使われていました。しかし、1950年代以降は、ほとんど使われなくなります。
カブリオレ
折り畳み式の幌を持つオープンカーの名称で、幌を閉じると箱型セダンと同等の快適性を得られるように設計されています。「カブリオレ」という名前の由来は「馬1頭、2人乗り、2輪」の馬車に由来するもの。しかし、「箱型セダンと同等の快適性」という意味で、現代では4人乗りのオープンカーに使用されることが多く、主にドイツ車やフランス車に使われています。写真はBMW 4シリーズカブリオレ。
コンバーチブル
カブリオレと同様に、屋根を閉めて箱型セダンに“切り替え可能”なオープンカーの名称。「コンバーチブル」とは、「さまざまな形式に変換できる」という意味があります。4人乗りのオープンカーで、主にアメリカ車やイギリス車といった英語圏で生まれたモデルによく使われる名称です。写真は、シボレー・カマロコンバーチブル。
ロードスター
「ロードスター」と聞くと、日本ではマツダ・ロードスターを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、海外ではオープンカーの呼び名の一種として扱われています。そのため、マツダ・ロードスターは、海外では「MX-5」という名前で販売されています。ロードスターという呼び名は、基本的にスポーツタイプのオープンカーに使用され、もともとは2人乗りで側面のガラスがないオープンカーを指しました。写真はユーノス・ロードスター。
スピードスター
ロードスターよりも、レーシー(競技用車両に近い)モデルに使われることが多い名称。写真のポルシェ911スピードスターが有名です。
スパイダー
こちらもロードスターと同じく、2人乗りのスポーツタイプのオープンカーによく使用される名称です。名称の由来には諸説ありますが、屋根のないフォルムが蜘蛛(=スパイダー)を連想させるからだそう。写真のアバルト124スパイダーや、アルファロメオ・スパイダーなど、イタリア車によく用いられる名称です。
バルケッタ
バルケッタという言葉はイタリア語で「小舟、ボート」という意味があります。こちらも2人乗りのオープンカーの名称としてイタリア車を中心に使用されることが多いです。
タルガトップ
頭上のハードトップルーフのみが脱着可能な「セミ・オープン」モデルのこと。古くからこの機構は存在していましたが、明確な名称がありませんでした。しかし、タルガ・フローリオというレースで、ポルシェが1966年から1970年にかけて5年連覇を達成した同形状のモデルを「タルガ」と名付け商標登録。そのため、ポルシェ以外のメーカーはタルガトップの名称を使えなくなってしまいました。写真はポルシェ911タルガ。
しかし、ポルシェ以外にも頭上のハードトップルーフが脱着、あるいは開閉可能なオープンカーは数多くあります。トヨタ・スープラにかつてラインナップされていた「エアロトップ」(写真)や、初代ホンダNSXの「TYPE-T」などはその一例です。
Tバールーフ
「Tバールーフ」は、中央部を残し、左右部が脱着可能なオープンカーの一種。1970年代に安全基準が厳しくなったアメリカでは、従来のようなオープンカーを市販するにはコストが増え、採算が取れなくなってしまいました。そのコスト対策として採用されたのがTバールーフで、日本でも日産フェアレディZ(写真)やトヨタMR2などに採用されました。
オープンカーの名称でその車の性格がわかる
ひとくちに「オープンカー」と言っても、その種類や由来はさまざまであることがわかります。また、「カブリオレ」や「スパイダー」といったモデル名から、同じように屋根が開くクルマであっても「スポーティーに風を感じるクルマ」なのか「優雅に風を楽しむクルマ」なのかといった、「そのクルマの性格」がわかるものです。それぞれの由来や意味を知った上で、オープンカーをラインナップするモデルを見てみると、また違ったおもしろさが見えてくるかもしれません。
(取材・文:西川昇吾 編集:木谷宗義+ノオト 取材協力:トヨタ博物館 )
[ガズー編集部]
関連リンク
あわせて読みたい!
最新ニュース
-
-
高性能4シーターオープン、メルセデスAMG『CLE 53カブリオレ』発売、価格は1400万円
2024.11.22
-
-
-
【ラリージャパン 2024】開幕!! 全行程1000km、SSは300kmの長く熱い戦い
2024.11.22
-
-
-
「高いのはしゃーない」光岡の55周年記念車『M55』、800万円超の価格もファン納得の理由
2024.11.22
-
-
-
レクサスのレザーもリサイクルでグッズに、リョーサンがトヨタと共同開発
2024.11.22
-
-
-
50台限定の『ディフェンダー110』発売、アリゾナの自然を表現した「赤」採用 価格は1300万円
2024.11.22
-
-
-
「めっちゃカッコいい」新型レクサス『ES』のデザインにSNSで反響
2024.11.21
-
-
-
光岡、話題の55周年記念車『M55』を市販化、100台限定で808万5000円
2024.11.21
-
最新ニュース
-
-
高性能4シーターオープン、メルセデスAMG『CLE 53カブリオレ』発売、価格は1400万円
2024.11.22
-
-
-
【ラリージャパン 2024】開幕!! 全行程1000km、SSは300kmの長く熱い戦い
2024.11.22
-
-
-
「GT-R」の技術が注ぎ込まれたV6ツインターボ搭載、日産『パトロール』新型が中東デビュー
2024.11.22
-
-
-
「高いのはしゃーない」光岡の55周年記念車『M55』、800万円超の価格もファン納得の理由
2024.11.22
-
-
-
レクサスのレザーもリサイクルでグッズに、リョーサンがトヨタと共同開発
2024.11.22
-
-
-
50台限定の『ディフェンダー110』発売、アリゾナの自然を表現した「赤」採用 価格は1300万円
2024.11.22
-